65 / 65
15
4
しおりを挟む
「――竜之介くん」
「ん? 何?」
「竜之介くん……大好き」
「ど、どうしたの? 急に」
「言いたくなったの」
並んで座っていた私は竜之介くんに『好き』と伝えながら彼に寄りかかる。
「あのね、私……これからも、この先も、ずっとずっと、竜之介くんと一緒に居たい」
「俺もだよ。っていうか、ずっと一緒だよ、離さないもん。亜子さんの事も、凜の事も」
「うん……嬉しい」
私が『一緒に居たい』と言うと、竜之介くんは当たり前かのように『ずっと一緒』と答えてくれる。
今までは、その言葉だけでも十分嬉しかった。
でも、竜之介くんの家柄の事を考えると、どんなに彼が『大丈夫』、『ずっと一緒』と言ってくれても、やっぱり不安は拭いきれなかった。
彼の将来や、ご両親の気持ちを考えたら、私と一緒になんてならない方がいいと、何度考えたか分からない。
それでも、やっぱり私には竜之介くんが必要で、彼との未来を生きていきたい。
だから――
「あのね、私、一度竜之介くんのご両親に会いたいの」
逃げずに立ち向かう。
ご両親に話して、何とか分かってもらいたい。
そう考えて、竜之介くんに今の私の思いを余す事なく伝えていく。
「竜之介くんは大丈夫って言うけど、やっぱりご両親の立場からすれば、納得なんて出来ないと思う。私もね、凜の母親だから、子を思う親の気持ちはよく分かるの。だけど、私も竜之介くんと居たいから、どうしても別れたく無い。全てを納得してもらう事は無理かもしれないけど、ほんの少しだけでも、私の本気の気持ちを……知ってもらいたいの……だから、ご両親に会わせて欲しい」
そんな私の思いを黙って聞いていた竜之介くんは無言で私を抱き締めてきた。
「竜之介くん?」
「亜子さん……俺、すげぇ嬉しい」
「え?」
「俺との未来を考えてくれてる事、凄い嬉しい。夢見てるみたいだ」
「竜之介くん……」
「ごめんね、家の事で不安な思いばかりさせて」
「ううん、大丈夫」
「俺さ、亜子さんに出逢うまでは親の決めた相手と結婚するのも仕方ないって思ってたから恋愛にも興味が持てなかった。けど、亜子さんを好きになって、人を好きになる大切さを知った。家の事も大切だって分かってるけど、俺だって一人の人間だから、感情だってある。好きな気持ちを無くす事なんて出来ない。それを伝えてはいるけど……親父は交際については自由にしていいって言ってるだけで、恐らく交際と結婚は別だって考えてる。はっきりとは言わないけど、納得してないんだって分かってる。けど、どうにかして分かってもらうつもりなんだけど……亜子さんに会ったら、酷い事を言うかもしれない……」
「大丈夫、何を言われても、私は平気だよ。覚悟を決めた上で、会いたいって思ってるから」
本当は、酷い事を言われたら怖いし、何を言っても認めて貰えないかもしれないと思うと、会うのを躊躇う。
だけど、それじゃあ何も変わらないし、話せばいつかは分かってもらえるかもしれない。
竜之介くんだって私との未来を望んでくれているって知れたから、何もしないで諦めるなんて、絶対に出来ない。
「ご両親は私になんて会いたくないかもしれないけど、私が竜之介くんを好きな気持ちは分かってもらいたい。だから、どうにか時間を取ってもらえるように話してみてくれるかな?」
「うん、分かった。話してみるよ。俺ももっと話をする。最終的にいつも感情的になっちゃうからさ……分かってもらえるよう、きちんと話してみる。必ず、認めてもらえるようにするから……絶対、俺から離れないでくれる?」
いつになく不安そうな表情を浮かべる竜之介くん。
しっかりしているし、頼りになるけど、私より六つも年下の彼は、まだまだ年相応の男の子。
不安だってあるに決まってる。
こうして弱さを見せてくれることは、やっぱり嬉しい。
私が彼を支えてあげなきゃって思えるから。
不安そうな竜之介くんを今度は私から抱き締めて、
「離れないよ。絶対に、離れたりしないから大丈夫」
少しでも彼の不安を取り除けるように『大丈夫』と言い続けていた。
「ん? 何?」
「竜之介くん……大好き」
「ど、どうしたの? 急に」
「言いたくなったの」
並んで座っていた私は竜之介くんに『好き』と伝えながら彼に寄りかかる。
「あのね、私……これからも、この先も、ずっとずっと、竜之介くんと一緒に居たい」
「俺もだよ。っていうか、ずっと一緒だよ、離さないもん。亜子さんの事も、凜の事も」
「うん……嬉しい」
私が『一緒に居たい』と言うと、竜之介くんは当たり前かのように『ずっと一緒』と答えてくれる。
今までは、その言葉だけでも十分嬉しかった。
でも、竜之介くんの家柄の事を考えると、どんなに彼が『大丈夫』、『ずっと一緒』と言ってくれても、やっぱり不安は拭いきれなかった。
彼の将来や、ご両親の気持ちを考えたら、私と一緒になんてならない方がいいと、何度考えたか分からない。
それでも、やっぱり私には竜之介くんが必要で、彼との未来を生きていきたい。
だから――
「あのね、私、一度竜之介くんのご両親に会いたいの」
逃げずに立ち向かう。
ご両親に話して、何とか分かってもらいたい。
そう考えて、竜之介くんに今の私の思いを余す事なく伝えていく。
「竜之介くんは大丈夫って言うけど、やっぱりご両親の立場からすれば、納得なんて出来ないと思う。私もね、凜の母親だから、子を思う親の気持ちはよく分かるの。だけど、私も竜之介くんと居たいから、どうしても別れたく無い。全てを納得してもらう事は無理かもしれないけど、ほんの少しだけでも、私の本気の気持ちを……知ってもらいたいの……だから、ご両親に会わせて欲しい」
そんな私の思いを黙って聞いていた竜之介くんは無言で私を抱き締めてきた。
「竜之介くん?」
「亜子さん……俺、すげぇ嬉しい」
「え?」
「俺との未来を考えてくれてる事、凄い嬉しい。夢見てるみたいだ」
「竜之介くん……」
「ごめんね、家の事で不安な思いばかりさせて」
「ううん、大丈夫」
「俺さ、亜子さんに出逢うまでは親の決めた相手と結婚するのも仕方ないって思ってたから恋愛にも興味が持てなかった。けど、亜子さんを好きになって、人を好きになる大切さを知った。家の事も大切だって分かってるけど、俺だって一人の人間だから、感情だってある。好きな気持ちを無くす事なんて出来ない。それを伝えてはいるけど……親父は交際については自由にしていいって言ってるだけで、恐らく交際と結婚は別だって考えてる。はっきりとは言わないけど、納得してないんだって分かってる。けど、どうにかして分かってもらうつもりなんだけど……亜子さんに会ったら、酷い事を言うかもしれない……」
「大丈夫、何を言われても、私は平気だよ。覚悟を決めた上で、会いたいって思ってるから」
本当は、酷い事を言われたら怖いし、何を言っても認めて貰えないかもしれないと思うと、会うのを躊躇う。
だけど、それじゃあ何も変わらないし、話せばいつかは分かってもらえるかもしれない。
竜之介くんだって私との未来を望んでくれているって知れたから、何もしないで諦めるなんて、絶対に出来ない。
「ご両親は私になんて会いたくないかもしれないけど、私が竜之介くんを好きな気持ちは分かってもらいたい。だから、どうにか時間を取ってもらえるように話してみてくれるかな?」
「うん、分かった。話してみるよ。俺ももっと話をする。最終的にいつも感情的になっちゃうからさ……分かってもらえるよう、きちんと話してみる。必ず、認めてもらえるようにするから……絶対、俺から離れないでくれる?」
いつになく不安そうな表情を浮かべる竜之介くん。
しっかりしているし、頼りになるけど、私より六つも年下の彼は、まだまだ年相応の男の子。
不安だってあるに決まってる。
こうして弱さを見せてくれることは、やっぱり嬉しい。
私が彼を支えてあげなきゃって思えるから。
不安そうな竜之介くんを今度は私から抱き締めて、
「離れないよ。絶対に、離れたりしないから大丈夫」
少しでも彼の不安を取り除けるように『大丈夫』と言い続けていた。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】
日下奈緒
恋愛
雨の日の交差点。
車に轢かれそうになったスーツ姿の男性を、とっさに庇った大学生のひより。
そのまま病院へ運ばれ、しばらくの入院生活に。
目を覚ました彼女のもとに毎日現れたのは、助けたあの男性――そして、大手企業の御曹司・一ノ瀬玲央だった。
「俺にできることがあるなら、なんでもする」
花や差し入れを持って通い詰める彼に、戸惑いながらも心が惹かれていくひより。
けれど、退院の日に告げられたのは、彼のひとことだった。
「君、大学生だったんだ。……困ったな」
15歳という年の差、立場の違い、過去の恋。
簡単に踏み出せない距離があるのに、気づけばお互いを想う気持ちは止められなくなっていた――
「それでも俺は、君が欲しい」
助けたはずの御曹司から、溺れるほどに甘やかされる毎日が始まる。
これは、15歳差から始まる、不器用でまっすぐな恋の物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる