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「すみません、今日はよろしくお願いします」
週末、鮫島さんの運転する車で隣の市にある大きな自然公園へ向かう事になった私たち。
凜の為と言え飛んでもなく迷惑を掛けていると思った私は申し訳なさを感じながらも彼の車に凜を乗せる。
「すごい! ひろい!! うわぁ~!」
私は車を持っていないから凜が車に乗るのはタクシーくらいなもので、彼の車が大きくて広めなRV車だった事から、凜のテンションは既に上がっていた。
「車、好きか?」
「うん!」
「そうか、それじゃあ凜はそこのチャイルドシートに座るんだぞ」
「うん!」
しかも、一人暮らしで子供もいないはずの彼の車に何故かチャイルドシートまで用意されている。
「鮫島さん、このチャイルドシートは……」
「ああ、知り合いに子供が居て、もう使わない物だから譲って貰ったんだ。凜を乗せるなら無いと困るだろうからな」
「そうだったんですか、何だかわざわざすみません」
「気にしなくていい、誘ったのはこっちだから」
何から何まで用意して貰って罪悪感しか無い私は車に乗る事すら躊躇ってしまう。
「遠慮しなくていいって、いいから早く乗って凜のチャイルドシートのベルト締めてやれよ」
「は、はい、それではお邪魔します」
こうして彼の車で出掛ける事になり、アパートから出発してから約一時間ちょっとで、目的地の自然公園に辿り着いた。
「ママー! おにーちゃん、はやくー!」
車から降り、虫かごと虫取り網を持った凜は早く行きたいのかその場から走り出そうとする。
「凜! 駄目だよ! 車来ると危ないから!」
荷物を取り出していた私がそう声を掛けた時、凜のすぐ側に立っていた鮫島さんは凜の身体を軽々抱き上げ、
「凜、こういう車が多い場所で走ると危険だから、勝手に行くのは無しな。約束出来る?」
駐車場は危険な場所である事、勝手に行かない事を言い聞かせてくれる。
「うん、わかった」
そしてそんな彼に問い掛けられた凜は素直に頷いていて、その光景が何だかとても微笑ましく思えてしまった。
荷物を車から降ろして手に持っていると、鍵を閉めた鮫島さんが片手で凜を抱き抱えたまま、私から大きいバッグを持っていく。
「持つよ」
「え!? いえそんなっ! ただでさえ凜を抱っこして貰っているのに荷物まで……!」
「これくらいどうって事ないし。それに、このカバン結構重いじゃん。男手ある時は素直に頼ればいいんだって」
「あ……りがとう、ございます」
年下なのにしっかりしていて気遣いも出来て、おまけにイケメンで。
彼はきっと、相当モテるに違いない。
人見知りのはずの凜はすっかり鮫島さんに懐き、公園内に着いてからもずっと彼の傍を付いて歩いていた。
暫く虫取りを楽しんだ凜がお腹が空いたと言うので、芝生のあるスペースへやって来た私たちはレジャーシートを広げてお弁当を食べる事にした。
「すげぇ、美味そう」
シートに座り作って来たお弁当を広げると、鮫島さんがポツリとそんな言葉を漏らしていた。
「大した物じゃなくて申し訳ないんですけど、どうぞ召し上がって下さい」
「いや、何つーかわざわざ悪いな。すげぇ美味そう。いただきます」
私が出来る事と言えばお弁当を作るくらいしか思い浮かばなくて、聞いてからにした方が良かったかなとか、余計な事だったらどうしようなんて思っていただけに、嬉しそうな表情を浮かべながらお弁当にお箸を伸ばしてくれた事が嬉しかった私の頬は自然と緩んでいた。
週末、鮫島さんの運転する車で隣の市にある大きな自然公園へ向かう事になった私たち。
凜の為と言え飛んでもなく迷惑を掛けていると思った私は申し訳なさを感じながらも彼の車に凜を乗せる。
「すごい! ひろい!! うわぁ~!」
私は車を持っていないから凜が車に乗るのはタクシーくらいなもので、彼の車が大きくて広めなRV車だった事から、凜のテンションは既に上がっていた。
「車、好きか?」
「うん!」
「そうか、それじゃあ凜はそこのチャイルドシートに座るんだぞ」
「うん!」
しかも、一人暮らしで子供もいないはずの彼の車に何故かチャイルドシートまで用意されている。
「鮫島さん、このチャイルドシートは……」
「ああ、知り合いに子供が居て、もう使わない物だから譲って貰ったんだ。凜を乗せるなら無いと困るだろうからな」
「そうだったんですか、何だかわざわざすみません」
「気にしなくていい、誘ったのはこっちだから」
何から何まで用意して貰って罪悪感しか無い私は車に乗る事すら躊躇ってしまう。
「遠慮しなくていいって、いいから早く乗って凜のチャイルドシートのベルト締めてやれよ」
「は、はい、それではお邪魔します」
こうして彼の車で出掛ける事になり、アパートから出発してから約一時間ちょっとで、目的地の自然公園に辿り着いた。
「ママー! おにーちゃん、はやくー!」
車から降り、虫かごと虫取り網を持った凜は早く行きたいのかその場から走り出そうとする。
「凜! 駄目だよ! 車来ると危ないから!」
荷物を取り出していた私がそう声を掛けた時、凜のすぐ側に立っていた鮫島さんは凜の身体を軽々抱き上げ、
「凜、こういう車が多い場所で走ると危険だから、勝手に行くのは無しな。約束出来る?」
駐車場は危険な場所である事、勝手に行かない事を言い聞かせてくれる。
「うん、わかった」
そしてそんな彼に問い掛けられた凜は素直に頷いていて、その光景が何だかとても微笑ましく思えてしまった。
荷物を車から降ろして手に持っていると、鍵を閉めた鮫島さんが片手で凜を抱き抱えたまま、私から大きいバッグを持っていく。
「持つよ」
「え!? いえそんなっ! ただでさえ凜を抱っこして貰っているのに荷物まで……!」
「これくらいどうって事ないし。それに、このカバン結構重いじゃん。男手ある時は素直に頼ればいいんだって」
「あ……りがとう、ございます」
年下なのにしっかりしていて気遣いも出来て、おまけにイケメンで。
彼はきっと、相当モテるに違いない。
人見知りのはずの凜はすっかり鮫島さんに懐き、公園内に着いてからもずっと彼の傍を付いて歩いていた。
暫く虫取りを楽しんだ凜がお腹が空いたと言うので、芝生のあるスペースへやって来た私たちはレジャーシートを広げてお弁当を食べる事にした。
「すげぇ、美味そう」
シートに座り作って来たお弁当を広げると、鮫島さんがポツリとそんな言葉を漏らしていた。
「大した物じゃなくて申し訳ないんですけど、どうぞ召し上がって下さい」
「いや、何つーかわざわざ悪いな。すげぇ美味そう。いただきます」
私が出来る事と言えばお弁当を作るくらいしか思い浮かばなくて、聞いてからにした方が良かったかなとか、余計な事だったらどうしようなんて思っていただけに、嬉しそうな表情を浮かべながらお弁当にお箸を伸ばしてくれた事が嬉しかった私の頬は自然と緩んでいた。
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