優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

夏目萌

文字の大きさ
75 / 90
STORY8

2

しおりを挟む
 触れるだけのキスで二人の唇は熱を帯び、徐々に息づかいが荒くなる。

「……っはあ、……ん……」

 何度も角度を変え、互いに求め合うキスへと変わっていく。

 初めこそぎこちなかった詩歌も、徐々に慣れてきたのか郁斗に応えようと彼のペースについていく。

 そして、互いの身体が疼き、キス以上に進みたいと思ってしまう。

 けれどここは病室で、郁斗はまだまだ安静が必要だ。

 それをお互いに感じ取ったのか激しいキスから軽いキスへと戻っていき、名残惜しげに互いの唇を離した。

「……はぁ……、っ」
「これ以上しちゃうと、止められなくなっちゃうね」

 郁斗と同じ気持ちだけど、それを言葉にするのは少し恥ずかしい詩歌はこくりと首を縦に振って頷いた。

「……詩歌ちゃん、ちょっと順序が逆になっちゃったけどさ……」
「……はい?」
「俺、詩歌ちゃんの事、好きなんだ」
「郁斗……さん」
「俺の、彼女になってくれるかな?」
「……私……」
「余計な事は何も考えなくていい。詩歌ちゃんの素直な気持ちを教えて欲しい。俺の彼女になって、傍に、居てくれるかな?」

 そんな郁斗の問い掛けに詩歌は、

「……私も、郁斗さんが……好きです。 離れたくない……ずっと、傍に置いてください……もう、離さないで……」

 再び涙を零しながら、郁斗の腕の中へ飛び込んだ。


 二人がお互いの想いを伝え合い、恋人同士になってから暫く、安静を強いられていた郁斗が無事に退院出来る事になった。

 そしてその頃にはあの救出劇からひと月半程が経っていた。

 退院してすぐ、市来組の事務所へ呼び出された郁斗と詩歌は恭輔と向かい合わせで座っていた。

「あれから黛の回復を待って、アイツのこれまでの行いから警察に引き渡された。その流れで奴に関わっていた連中も次々と捕まったが、花房や四条に関しては、注意勧告と罰金で済む事になった。奴らは黛や苑流の駒として使われていたようなものだからな。ただ、会社の方には色々と調べが入ったようで、今後の事はどうなるか分からねぇがな。」
「……そう、なんですね」

 恭輔から義父や婚約者の話を聞いた詩歌の表情はどこか浮かないものだった。

「それと詩歌、花房たちがお前と会って話がしたいと言っている。アイツらの身柄はまだ神咲会が預かっているからお前に話す意思があるなら、こちらの方で日時や場所を決めておくが……どうする?  勿論、会う気がないなら断っても構わない」
「…………」
「詩歌ちゃん、無理に会う必要はないよ。けど、思う事があるなら会ってきちんと話をつけた方が、後のためにはいいかもしれない」
「……そう、ですよね。あの、私、会います。会ってきちんと話をします」
「そうか、分かった。ではそれについては詳しい事が決まったら追って連絡をする」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」

 そもそも事の発端となったのは自分の家出だった事、いくら義理とは言えど、戸籍上家族の義父とはいつか話をしなくてはならない事もあって今回会う決意を固めた詩歌だったけれど、やはりどこか乗り気にはなれないでいた。

 そんな彼女の気持ちをよそに会う日取りが決まり、気乗りしないまま当日を迎えてしまう。

「詩歌ちゃん、大丈夫?」
「……はい。先延ばしにしたところで、いつかは話をしないといけませんから」

 指定された場所はとあるホテルの一室で、立会人もいる。

 部屋の前に来るまでは詩歌一人で義父や婚約者と会うつもりでいたのだけど、入る直前になって郁斗に、

「郁斗さん、一緒に話を聞いて貰えないでしょうか?  一人だと、やっぱり不安で……義父ちちたちと上手く話せるかどうか、分からなくて……」

 共に付いて来て欲しいと願い出た。

「分かった。それで詩歌ちゃんがきちんと話を出来るなら、一緒に行くよ」
「ありがとうございます」

 こうして詩歌は郁斗と共に、数ヶ月ぶりに義父や婚約者と顔を合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

ヤクザの組長は随分と暇らしい

海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ 店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた 目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして―― 「リカちゃん。俺の女になって」 初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ! 汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...