優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

夏目萌

文字の大きさ
77 / 90
STORY8

4

しおりを挟む
 それから数日後、郁斗と詩歌は新居となるマンションへ移り住んだ。

 新居は以前郁斗が住んでいたマンションよりも更に高層階のマンションで、彼らの部屋は最上階。

 引越しを手伝った美澄や小竹は部屋から一望出来る景色や周りのどのマンションやビルよりも高層階に居る事に心底驚いていた。

「いやぁ、流石は郁斗さん。前のマンションも凄かったけど、新居はまたとんでもなく凄い!」
「憧れます、郁斗さんのような暮らしに」
「お前らだって、頑張ればこういう暮らしも夢じゃないよ」
「そうっすかね?  いやでも、やっぱり無理そう……」
「俺は目指します、郁斗さんみたいな男を」

 ソファーに座り、そんな話をしている郁斗たちの元へコーヒーを淹れた詩歌がカップを四つ、トレーに乗せてやって来た。

「どうぞ」
「ありがとう、詩歌ちゃん」
「ありがとうございます、詩歌さん」
「あざっす!」

 郁斗の隣に腰を降ろした詩歌。二人並んでいる所を見た美澄は、

「そう言えばお二人は、いつ頃籍入れるんすか?」

 突拍子もない質問を投げ掛ける。

「何だよ、いきなり……」
「え?  だってこんなすげー良いところに越してきて二人で住むって事は、もう将来を誓い合ったんですよね?」
「美澄、そういう事はいちいち聞くもんじゃねぇって」
「あ、すんません!」

 小竹にたしなめられた美澄は慌てて謝り、コーヒーを流し込むように飲んだ。

「熱っ!!」

 けれど、淹れたてのコーヒーは熱く、その熱さに思わず吹き出しそうになる。

「阿呆だ……」

 そんな美澄を冷めた目で見つめ、若干困り顔の郁斗と詩歌に視線を移す小竹。

「すみません、余計な事を聞いてしまって」
「小竹が謝る事じゃないだろ。まあ勿論、いずれは俺たち一緒になるよ。けど、まだ付き合ったばかりだし、詩歌ちゃんだって折角自由の身になれたんだ。『結婚』なんて言葉で縛り付けたくはないから、暫くはこのままを楽しむ予定だよ」
「郁斗さん……」
「そうなんですね」

 新居で共に暮らす事以外特別話し合ったりはしていなかった二人だけど、自分との将来を真剣に考えていてくれた事を知り、嬉しくなった詩歌の表情は自然と緩んでいた。

 新居で過ごす、初めての夜。

「今日は美澄が色々とごめんね。アイツ、悪い奴じゃないけど空気読めないんだよね」
「いえ、そんな事ないです。美澄さんも小竹さんも片付けとか手伝ってくれて助かりましたし」

 旧居よりも広くなった寝室のベッドに並んで座った二人は、今日あった出来事を振り返りながら眠くなるまで話をする。

「そう言えば、詩歌ちゃんはこれからどうするか決めた?  やりたい事が色々あるって言ってたよね?」
「そうですね……社会勉強の為に働きに出たいとも考えたんですけど、もし可能であれば、またPURE  PLACEで働く事は出来ますか?」
「PURE  PLACEで?  詩歌ちゃん、それ、本気で言ってる?」
「はい、本気ですけど……いけませんか?」

 郁斗のその言葉に、きょとんとした表情を浮かべた詩歌は聞き返す。

「そりゃそうでしょ?  だってPURE  PLACEはキャバクラだよ?  俺、自分の女をキャバクラで働かせる趣味は無いんだけど?」

 郁斗から出た『自分の女』というフレーズにドキッとした詩歌は少し頬を赤らめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

ヤクザの組長は随分と暇らしい

海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ 店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた 目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして―― 「リカちゃん。俺の女になって」 初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ! 汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

処理中です...