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今度は2人で
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「さくちゃん、ただいま」
久しぶりに聞くかっきーの声は、やっぱり落ち着く。
真夏の全国ツアーが終わってから、私たちは約1週間の長い休みをもらっていた。
私は家族と北海道へ、かっきーはまゆたんと奈於ちゃんとの仲良しトリオで神奈川旅行に行っていたから、二人きりで会うのはかなり久しぶりな感じがする。
「おかえり、かっきー」
かっきーを抱きしめると、日焼け止めと、ほんのり潮の香りがしたような気がした。
八景島シーパラダイスと鎌倉。充実した旅だったみたい。その旅の空気が、かっきーの体から伝わってくるようで、会えなかった寂しさがじんわりと溶けていく。
ソファに並んで座り、私たちはそれぞれのお土産を広げた。
「かっきー、これ、北海道のお土産だよ」
私が差し出したのは、白いふわふわの妖精・シマエナガの小さなぬいぐるみとキーホルダー。かっきーの目が、嬉しそうに輝く。
「わあ!シマエナガ!かわいい!!」
かっきーはすぐにぬいぐるみの方を抱きしめ、頬擦りした。
「本物のシマエナガには会えなかったけどね。冬じゃないと見られないんだって」
函館から小樽、札幌と車で回った家族旅行の話を、私はゆっくりと話した。両親と兄との穏やかな時間は楽しかったけれど、ふとした瞬間に、今ごろかっきーはどうしてるかなって考えていたことを思い出す。
今度は、かっきーの番。
かっきーは、鎌倉の商店街で買ったという、小さな花柄の巾着袋を私に手渡してくれた。
「さくちゃんには、こういう和風なものが似合うかなと思って。一瞬だけ2人と別々で行動した時に選んだんだ」
「ありがとう。えへへ、すごくかわいいね」
中には、小さな桜の模様が入った、可愛らしいお守りが入っていた。
「シーパラダイスも楽しかったし、鎌倉のお寺もすごくよかった。けどね…」
かっきーは、私の隣に体を寄せながら、少し拗ねたように言った。
「やっぱり、さくちゃんに会えないのは寂しかったかな」
その言葉に、私は嬉しくなって、かっきーの頭を優しく撫でた。
「うん……私も」
旅行中は、あんまり連絡も取らなかった。お互いに、いまは純粋に旅行を楽しんでほしいと思って遠慮してしまうんだと思う。それが余計に寂しさを募らせていたのかも。
「次の旅行は、二人でどこかに行きたいね。さくちゃんがジンギスカン食べたって聞いたら、私も食べたくなっちゃったよ~」
「うん。次は絶対、二人でお泊りに行こうね」
私は、かっきーの頬にそっとキスをした。旅行の楽しい思い出をたくさん聞いたけれど、やっぱり、この空間、この温もり、かっきーの匂いが、私にとって一番の安らぎだ。
会えなかった空白の時間が、再会してからわずか数分で満たされていく。
久しぶりに強く抱きしめると、かっきーは私の耳元で囁いた。
「さくちゃん、今夜はずっと離さないから」
「うん、私もそのつもり…」
私は、愛しい恋人の匂いを深く吸い込みながら、その願いを心の中で繰り返した。この再会こそが、私にとって何よりのお土産だった。
~おしまい~
久しぶりに聞くかっきーの声は、やっぱり落ち着く。
真夏の全国ツアーが終わってから、私たちは約1週間の長い休みをもらっていた。
私は家族と北海道へ、かっきーはまゆたんと奈於ちゃんとの仲良しトリオで神奈川旅行に行っていたから、二人きりで会うのはかなり久しぶりな感じがする。
「おかえり、かっきー」
かっきーを抱きしめると、日焼け止めと、ほんのり潮の香りがしたような気がした。
八景島シーパラダイスと鎌倉。充実した旅だったみたい。その旅の空気が、かっきーの体から伝わってくるようで、会えなかった寂しさがじんわりと溶けていく。
ソファに並んで座り、私たちはそれぞれのお土産を広げた。
「かっきー、これ、北海道のお土産だよ」
私が差し出したのは、白いふわふわの妖精・シマエナガの小さなぬいぐるみとキーホルダー。かっきーの目が、嬉しそうに輝く。
「わあ!シマエナガ!かわいい!!」
かっきーはすぐにぬいぐるみの方を抱きしめ、頬擦りした。
「本物のシマエナガには会えなかったけどね。冬じゃないと見られないんだって」
函館から小樽、札幌と車で回った家族旅行の話を、私はゆっくりと話した。両親と兄との穏やかな時間は楽しかったけれど、ふとした瞬間に、今ごろかっきーはどうしてるかなって考えていたことを思い出す。
今度は、かっきーの番。
かっきーは、鎌倉の商店街で買ったという、小さな花柄の巾着袋を私に手渡してくれた。
「さくちゃんには、こういう和風なものが似合うかなと思って。一瞬だけ2人と別々で行動した時に選んだんだ」
「ありがとう。えへへ、すごくかわいいね」
中には、小さな桜の模様が入った、可愛らしいお守りが入っていた。
「シーパラダイスも楽しかったし、鎌倉のお寺もすごくよかった。けどね…」
かっきーは、私の隣に体を寄せながら、少し拗ねたように言った。
「やっぱり、さくちゃんに会えないのは寂しかったかな」
その言葉に、私は嬉しくなって、かっきーの頭を優しく撫でた。
「うん……私も」
旅行中は、あんまり連絡も取らなかった。お互いに、いまは純粋に旅行を楽しんでほしいと思って遠慮してしまうんだと思う。それが余計に寂しさを募らせていたのかも。
「次の旅行は、二人でどこかに行きたいね。さくちゃんがジンギスカン食べたって聞いたら、私も食べたくなっちゃったよ~」
「うん。次は絶対、二人でお泊りに行こうね」
私は、かっきーの頬にそっとキスをした。旅行の楽しい思い出をたくさん聞いたけれど、やっぱり、この空間、この温もり、かっきーの匂いが、私にとって一番の安らぎだ。
会えなかった空白の時間が、再会してからわずか数分で満たされていく。
久しぶりに強く抱きしめると、かっきーは私の耳元で囁いた。
「さくちゃん、今夜はずっと離さないから」
「うん、私もそのつもり…」
私は、愛しい恋人の匂いを深く吸い込みながら、その願いを心の中で繰り返した。この再会こそが、私にとって何よりのお土産だった。
~おしまい~
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