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独り占め
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「いらっしゃいませー」
顔を伏せながら夜の街を歩いてきたので、店内の真っ白い照明が少し眩しい。
私はいま、自宅のマンションからいちばん近いコンビニへ買い出しに来ていた。
お仕事を終えたかっきーが私の部屋へ来てくれる予定時刻まで、あと30分ほどある。
晩ご飯は現場で食べてきたらしいから、飲み物でも調達してかっきーを迎えようと考えたのだった。
私がコンビニに入る時、まず雑誌コーナーの前を歩くのが癖になっている。
同じグループのメンバーが表紙になっている雑誌を見つけると嬉しいから。
ただ、今の時期は雑誌コーナーへ立ち寄るのが少し恥ずかしい。
だって、、
(あ、、ここのコンビニも置いてくれてるんだ……)
私が表紙をやらせてもらったファッション雑誌が並んでる時期だから。
私が、というわけではなくて、この雑誌がすごいのだ。
だいたいどこのコンビニにも置いてある。
自分の顔が店頭に並んでいるというのは、嬉しさもあるけどやっぱり恥ずかしい。
私は足早に飲み物コーナーへ向かうと、かっきーが好きそうなペットボトルを適当に選ぶ。
そのままレジの待機列に立つと、2人のお客さんが先に並んでいた。
(この時間でも結構お客さんいるんだなぁ、、やっぱり名古屋よりは都会って感じ)
東京で生活していることを実感しながら、ふと私の2つ前に並んでいるお客さんの手元が視界に入る。
どうやら、私が表紙の雑誌を買ってくれるらしい。
(ふふ、、2つ後ろに私が並んでるなんて、この人も思わないだろうなぁ…)
私と同じくらいの背の女性らしい。
深めに帽子を被っているので、年齢まではよく分からない。
と、そこまで考えた私は、待機列の先頭に並んでいるのが見慣れた背中であることに気付く。
(え、、あれって、、もしかして、、)
声をかけようにも、私たちの間には会社員風の男性が同じくレジ待ちをしているので無理だった。
やがてその女性が会計を終え、コンビニの自動ドアを通過した。
その頃にやっと私が会計を始めるタイミングだった。
急いでいる雰囲気を出していつもより早めに会計を終えると、私はコンビニを出て辺りを見回した。
幸い、私が探していたその人はコンビニの外壁に沿って立ちながらスマホをいじっているところだった。
さきほど背中から見た情報に加えて、前方から見たその姿。
確信を得た私は、ゆっくり近付く。
「かっきー?」
ビクッと体を反応させて警戒したようだったけど、声の主が私だと気付いてくれたらしい。
「え、、あっ、なんだ~、さくちゃんか」
「ふふっ、やっぱり。さっき私、後ろに並んでたんだよ?」
予定より早くかっきーに出会えた嬉しさに浸りたかったが、ここで立ち話を続けると通行人にバレてしまうかもしれない。
私はかっきーを連れて自宅のマンションへ向かった。
==============================
部屋に向かうまでの時間で、かっきーから話を聞いた。
私のマンションの最寄駅に、予定より早く着いてしまったこと。
私の部屋へ直行しようと思ったけど、部屋を片付けたり家事をしていたりの途中でお邪魔するのも悪いから時間をつぶそうとしてくれていたこと。
そして、たまたま寄ったコンビニで私が表紙の雑誌を見つけてくれたこと、、
「あれ、、?そういえばかっきー、その雑誌、前にも買ってくれたって言ってなかった?」
部屋に着いて荷物を置き、いつものようにリビングのソファに座って落ち着いたところで訊いてみた。
「え、、あ、、うん、、家にもある、かな、、?でもこれはまた、別の使い道というか…」
その先は訊いちゃいけないような気がしたけど、勢いで突き進む。
「かっきー、もしかしてなんだけど、、それ、何冊目?」
「ええと、、4冊目、かな?」
(や、やっぱり、、)
「かっきー!!1冊買ってもらえるだけで私は十分嬉しいから!だから、無理しないで!」
隣に座るかっきーの太ももあたりを揺すりながら訴える。
「ううん、全然!無理して買ってるとかじゃないから!!だって、1冊は保存用だし、あとは部屋に飾る用と、普通に読む用と、実家に置いておく用と、、ほんと、それだけだから!!」
「それ"だけ"って、、もー、かっきー、、十分買い過ぎだよ(笑)」
少し困ったように笑って見せると、かっきーの表情が曇る。
「うぅ、、こういうの、オタク全開しちゃっててキモいかな、、?」
不安そうに視線を泳がせるかっきー。
「そんな、きもちわるいとか、、そんなわけないじゃん、、かっきー、ありがとう。私、すっごく嬉しいよ?」
恥ずかしいし申し訳ないけど、この嬉しさは本心だった。
「よかったぁ……今日もね、ほんとは買うつもりなかったんだけど、私これからこの子と会えるんだって思ったら、なんかこう、夢見心地になっちゃって、、つい手に取っちゃってたの」
それで本当に買っちゃうあたりがかっきーらしいのかもしれない。
私も本屋でかっきーの写真集を見かけると、たしかに不思議な気持ちになる。
しかも私だって、全タイプの表紙を買い揃えてしまった身だ。
人のことはいえない、か。
「それにね、、」
「ん?なぁに?」
かっきーが、続ける言葉を慎重に選んでいる。
「表紙にさくちゃんがいるとね、他の人に渡したくないって思っちゃうの、、さくちゃんのこと、私が独り占めしたくなっちゃう」
「えー?なにそれ、、なんか、照れるじゃん、、」
そんなことストレートに言われたら、照れるに決まってる。
でもそれ以上に幸せだった。
大好きなかっきーに、私を独占してほしい。独占されたい。
「じゃあ、かっきー、、今夜も私のこと、独り占めしてね?」
「え、、う、うん!もちろん!独り占めする、、させて下さい!」
急にかしこまって敬語になっちゃうかっきー。
かっきーのほうから恥ずかしいことを言ってくれるのに、自分が言われるのは弱いらしい。
そんなところもかわいい。
もう少し照れるかっきーを見てみたくなった私。
もう少し大胆になってみようと思った。
「私、これからお風呂に入るけど、その間も、独り占めしてくれる?」
「えっ、と、、お風呂のさくちゃんを独り占め、って、、」
「今日は一緒に入ろ?」
私の提案に、かっきーの表情がぱぁっと明るくなる。
かと思ったら、何を想像したのかうつむいて顔を赤らめている。
オタクな顔も持ってて、素直で、イケメンなんて言われてて、褒められるのは慣れてなくて、ちょっとだけ妄想しがちで、みんなから愛されてるかっきー。
でも、、
(かっきーのことを独り占めして、かっきーに独り占めされていいのは私だけ、、だよね?)
~おしまい~
※さくちゃんがかっきーの写真集を全タイプ買った話は、『さくらと遥香』→『かっきー1st写真集編』→『全てを忘れて愛し合う』で読めます
顔を伏せながら夜の街を歩いてきたので、店内の真っ白い照明が少し眩しい。
私はいま、自宅のマンションからいちばん近いコンビニへ買い出しに来ていた。
お仕事を終えたかっきーが私の部屋へ来てくれる予定時刻まで、あと30分ほどある。
晩ご飯は現場で食べてきたらしいから、飲み物でも調達してかっきーを迎えようと考えたのだった。
私がコンビニに入る時、まず雑誌コーナーの前を歩くのが癖になっている。
同じグループのメンバーが表紙になっている雑誌を見つけると嬉しいから。
ただ、今の時期は雑誌コーナーへ立ち寄るのが少し恥ずかしい。
だって、、
(あ、、ここのコンビニも置いてくれてるんだ……)
私が表紙をやらせてもらったファッション雑誌が並んでる時期だから。
私が、というわけではなくて、この雑誌がすごいのだ。
だいたいどこのコンビニにも置いてある。
自分の顔が店頭に並んでいるというのは、嬉しさもあるけどやっぱり恥ずかしい。
私は足早に飲み物コーナーへ向かうと、かっきーが好きそうなペットボトルを適当に選ぶ。
そのままレジの待機列に立つと、2人のお客さんが先に並んでいた。
(この時間でも結構お客さんいるんだなぁ、、やっぱり名古屋よりは都会って感じ)
東京で生活していることを実感しながら、ふと私の2つ前に並んでいるお客さんの手元が視界に入る。
どうやら、私が表紙の雑誌を買ってくれるらしい。
(ふふ、、2つ後ろに私が並んでるなんて、この人も思わないだろうなぁ…)
私と同じくらいの背の女性らしい。
深めに帽子を被っているので、年齢まではよく分からない。
と、そこまで考えた私は、待機列の先頭に並んでいるのが見慣れた背中であることに気付く。
(え、、あれって、、もしかして、、)
声をかけようにも、私たちの間には会社員風の男性が同じくレジ待ちをしているので無理だった。
やがてその女性が会計を終え、コンビニの自動ドアを通過した。
その頃にやっと私が会計を始めるタイミングだった。
急いでいる雰囲気を出していつもより早めに会計を終えると、私はコンビニを出て辺りを見回した。
幸い、私が探していたその人はコンビニの外壁に沿って立ちながらスマホをいじっているところだった。
さきほど背中から見た情報に加えて、前方から見たその姿。
確信を得た私は、ゆっくり近付く。
「かっきー?」
ビクッと体を反応させて警戒したようだったけど、声の主が私だと気付いてくれたらしい。
「え、、あっ、なんだ~、さくちゃんか」
「ふふっ、やっぱり。さっき私、後ろに並んでたんだよ?」
予定より早くかっきーに出会えた嬉しさに浸りたかったが、ここで立ち話を続けると通行人にバレてしまうかもしれない。
私はかっきーを連れて自宅のマンションへ向かった。
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部屋に向かうまでの時間で、かっきーから話を聞いた。
私のマンションの最寄駅に、予定より早く着いてしまったこと。
私の部屋へ直行しようと思ったけど、部屋を片付けたり家事をしていたりの途中でお邪魔するのも悪いから時間をつぶそうとしてくれていたこと。
そして、たまたま寄ったコンビニで私が表紙の雑誌を見つけてくれたこと、、
「あれ、、?そういえばかっきー、その雑誌、前にも買ってくれたって言ってなかった?」
部屋に着いて荷物を置き、いつものようにリビングのソファに座って落ち着いたところで訊いてみた。
「え、、あ、、うん、、家にもある、かな、、?でもこれはまた、別の使い道というか…」
その先は訊いちゃいけないような気がしたけど、勢いで突き進む。
「かっきー、もしかしてなんだけど、、それ、何冊目?」
「ええと、、4冊目、かな?」
(や、やっぱり、、)
「かっきー!!1冊買ってもらえるだけで私は十分嬉しいから!だから、無理しないで!」
隣に座るかっきーの太ももあたりを揺すりながら訴える。
「ううん、全然!無理して買ってるとかじゃないから!!だって、1冊は保存用だし、あとは部屋に飾る用と、普通に読む用と、実家に置いておく用と、、ほんと、それだけだから!!」
「それ"だけ"って、、もー、かっきー、、十分買い過ぎだよ(笑)」
少し困ったように笑って見せると、かっきーの表情が曇る。
「うぅ、、こういうの、オタク全開しちゃっててキモいかな、、?」
不安そうに視線を泳がせるかっきー。
「そんな、きもちわるいとか、、そんなわけないじゃん、、かっきー、ありがとう。私、すっごく嬉しいよ?」
恥ずかしいし申し訳ないけど、この嬉しさは本心だった。
「よかったぁ……今日もね、ほんとは買うつもりなかったんだけど、私これからこの子と会えるんだって思ったら、なんかこう、夢見心地になっちゃって、、つい手に取っちゃってたの」
それで本当に買っちゃうあたりがかっきーらしいのかもしれない。
私も本屋でかっきーの写真集を見かけると、たしかに不思議な気持ちになる。
しかも私だって、全タイプの表紙を買い揃えてしまった身だ。
人のことはいえない、か。
「それにね、、」
「ん?なぁに?」
かっきーが、続ける言葉を慎重に選んでいる。
「表紙にさくちゃんがいるとね、他の人に渡したくないって思っちゃうの、、さくちゃんのこと、私が独り占めしたくなっちゃう」
「えー?なにそれ、、なんか、照れるじゃん、、」
そんなことストレートに言われたら、照れるに決まってる。
でもそれ以上に幸せだった。
大好きなかっきーに、私を独占してほしい。独占されたい。
「じゃあ、かっきー、、今夜も私のこと、独り占めしてね?」
「え、、う、うん!もちろん!独り占めする、、させて下さい!」
急にかしこまって敬語になっちゃうかっきー。
かっきーのほうから恥ずかしいことを言ってくれるのに、自分が言われるのは弱いらしい。
そんなところもかわいい。
もう少し照れるかっきーを見てみたくなった私。
もう少し大胆になってみようと思った。
「私、これからお風呂に入るけど、その間も、独り占めしてくれる?」
「えっ、と、、お風呂のさくちゃんを独り占め、って、、」
「今日は一緒に入ろ?」
私の提案に、かっきーの表情がぱぁっと明るくなる。
かと思ったら、何を想像したのかうつむいて顔を赤らめている。
オタクな顔も持ってて、素直で、イケメンなんて言われてて、褒められるのは慣れてなくて、ちょっとだけ妄想しがちで、みんなから愛されてるかっきー。
でも、、
(かっきーのことを独り占めして、かっきーに独り占めされていいのは私だけ、、だよね?)
~おしまい~
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