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かっきー1st写真集 編
初めての感情
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私とかっきーが付き合い始めて約1ヶ月が経った頃、大ニュースが公開された。
かっきー1st写真集の発売。
撮影に行っていたことは前から聞いていたけど、世間に対して情報が解禁されると急に現実味が増してくる。
私たち4期生の中で写真集を出すのは、かっきーが初めて。
私のファンの皆さんは、ブログのコメントやミート&グリートで
「いつかさくちゃんの写真集が発表されるのも楽しみ」
とか
「次こそは絶対さくちゃんだね」
とか、そういうコメントをくれる。
もちろんありがたいけど、私は自分の写真集なんかよりかっきーの写真集が発売されることがとにかく嬉しかった。
(やっぱりかっきーはすごい…!この写真集でもっともっと、世の中の人がかっきーの魅力に気付いてくれたらいいな!)
実際そんなことを考えていたし、情報が解禁された時には本人にも伝えた。
「かっきー、写真集、本当におめでとう!やっぱりかっきーはすごいよ!」
「そんなことないよ~。でも、ありがとう。さくちゃんには、発売日より前に見てもらうようマネージャーさんにお願いしておいたからね。Twitterで公開される用だからカメラは入っちゃうけど、楽しみにしてて」
「うん!」
私は、かっきーの「恋人」…と言わせてもらっていい立場ではあったけど。
それとは別にかっきーファンの一人として、写真集公式Twitterも毎日チェックしていた。
発売日に向けて毎日公開されるカウントダウン動画に出てくるかっきーがとにかくかわいくて、私の日々の楽しみだった。
でも。
写真集の中身が少しずつ公開されていくと、私は複雑な気持ちになっていった。
理由の一つはきっと、まだ誰もが見たことのなかったかっきー水着姿やランジェリー姿も公開されていったから。
かっきーはあえて何も言わなかったのかもしれないけど、これまで先輩たちが発売してきた写真集の内容からすれば、当然"そういう写真"も収録されているはずだ。
普段のグラビアでは肌の露出が少ない私たちだけど、写真集になると話は別。
大人っぽいというか、セクシーというか…
同じグループのメンバーとして、どういう目で見たらいいか分からず、恥ずかしさから直視するのをためらってしまう写真も少なくない。
Twitterでかっきーの先行カットを見た時は、余計にそう感じた。
それだけじゃない。
先輩たちの写真集を見た時とはまた別の、うまく言葉にできない感情が自分の中でもやもやしているのを感じた。
その感情がなんなのか分からない。
でも、誰にも知られたくないような、醜くて恥ずかしいもののような気がして。
私は、その感情に蓋をしてしまい込んでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10周年のライブが終わった頃。
写真集の発売日も迫って来て、かっきーの一人仕事が増えてきた。
写真集の宣伝のために、いろんなメディアに出演するからだ。
かっきーはますます忙しくなって、私たちがプライベートで会える頻度も減ってしまっていた。
遥香「さくちゃん、ごめんね…明日も朝から収録で…」
さくら「全然!気にしないで!私も、かっきーにはゆっくり休んでほしいから。今日はお互いの家で休も?写真集のお仕事が落ち着いたら、またいっぱい会おうね」
遥香「うん、ありがとう。さくちゃん、大好きだよ」
さくら「私も、だーいすき」
それでも、グループ全体の仕事ではかっきーと一緒の現場になることもある。
とはいえ他のメンバーも一緒なので、2人きりの時間を過ごせるわけじゃない。
同じ空間にいるのに、かっきーに私だけを見てもらうことが出来ない。
それが、なんだか余計に寂しかった。
ちょうどその日は、いつものスタジオで冠番組の収録日。
みんなのスケジュールがなかなか合わなかったのか、久しぶりの収録で今日は3本撮りの予定だった。
今は1本目と2本目のあいだの休憩時間。
4期生メンバーでひとつの楽屋を割り当てられ、みんな各々の時間を過ごしていた。
楽屋での私は、一人でぼーっとしているタイプだ。
仲が良さそうなメンバー同士のやり取りを見て、心を和ませていることが多い。
少し離れた席では、かっきーを中心に何人かの4期生が談笑していた。誰からも好かれるかっきーには、自然と人が集まってくる。よくある光景だ。
断片的に聞こえてくる内容からすると、かっきーの写真集が話題になってるみたい。
聖来「発売日まで、もうすぐやなぁ」
遥香「うん」
真佑「そういえば今日、メトロの駅でかっきーのポスター見たよ!すっごい大きいやつ。あとあと、車内にもかっきーの広告あって、もうなんていうか、かっきー尽くしだったよ!」
遥香「あはは…ちょっと恥ずかしいけどね。自分の広告が出てる車両なんてちょっと乗りづらいし…」
聖来「でもほんとすごいことやんな~。うちら4期生から写真集出すメンバーが出るって」
真佑「だよね~。私、あんなにポスター貼ってもらったことないもん。でもなんか、かっきーが遠い存在になっちゃったみたいでちょっと寂しいよ~…」
(遠い存在…)
まゆたんの一言が耳に入ってきて、胸がズキッと痛んだ。
(なんだろう…この感じ……かっきーが、遠い存在になっちゃう…?)
胸の奥で生じた痛みが、じわ~っと全身に広がっていく。
やがて目のあたりに届くと、それは痛みから熱さに似たものに変わり、なんだか視界がぼやけてきた。
(え……?これ…涙……?…あ、ヤバいかも…)
幸い、私の異変に気付いているメンバーはいないようだった。
私は席から立ちあがると、目を手で軽く覆いながら楽屋を出た。
どこでもいい。
とにかく、人目のなさそうなところへと走った。
~続く~
かっきー1st写真集の発売。
撮影に行っていたことは前から聞いていたけど、世間に対して情報が解禁されると急に現実味が増してくる。
私たち4期生の中で写真集を出すのは、かっきーが初めて。
私のファンの皆さんは、ブログのコメントやミート&グリートで
「いつかさくちゃんの写真集が発表されるのも楽しみ」
とか
「次こそは絶対さくちゃんだね」
とか、そういうコメントをくれる。
もちろんありがたいけど、私は自分の写真集なんかよりかっきーの写真集が発売されることがとにかく嬉しかった。
(やっぱりかっきーはすごい…!この写真集でもっともっと、世の中の人がかっきーの魅力に気付いてくれたらいいな!)
実際そんなことを考えていたし、情報が解禁された時には本人にも伝えた。
「かっきー、写真集、本当におめでとう!やっぱりかっきーはすごいよ!」
「そんなことないよ~。でも、ありがとう。さくちゃんには、発売日より前に見てもらうようマネージャーさんにお願いしておいたからね。Twitterで公開される用だからカメラは入っちゃうけど、楽しみにしてて」
「うん!」
私は、かっきーの「恋人」…と言わせてもらっていい立場ではあったけど。
それとは別にかっきーファンの一人として、写真集公式Twitterも毎日チェックしていた。
発売日に向けて毎日公開されるカウントダウン動画に出てくるかっきーがとにかくかわいくて、私の日々の楽しみだった。
でも。
写真集の中身が少しずつ公開されていくと、私は複雑な気持ちになっていった。
理由の一つはきっと、まだ誰もが見たことのなかったかっきー水着姿やランジェリー姿も公開されていったから。
かっきーはあえて何も言わなかったのかもしれないけど、これまで先輩たちが発売してきた写真集の内容からすれば、当然"そういう写真"も収録されているはずだ。
普段のグラビアでは肌の露出が少ない私たちだけど、写真集になると話は別。
大人っぽいというか、セクシーというか…
同じグループのメンバーとして、どういう目で見たらいいか分からず、恥ずかしさから直視するのをためらってしまう写真も少なくない。
Twitterでかっきーの先行カットを見た時は、余計にそう感じた。
それだけじゃない。
先輩たちの写真集を見た時とはまた別の、うまく言葉にできない感情が自分の中でもやもやしているのを感じた。
その感情がなんなのか分からない。
でも、誰にも知られたくないような、醜くて恥ずかしいもののような気がして。
私は、その感情に蓋をしてしまい込んでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10周年のライブが終わった頃。
写真集の発売日も迫って来て、かっきーの一人仕事が増えてきた。
写真集の宣伝のために、いろんなメディアに出演するからだ。
かっきーはますます忙しくなって、私たちがプライベートで会える頻度も減ってしまっていた。
遥香「さくちゃん、ごめんね…明日も朝から収録で…」
さくら「全然!気にしないで!私も、かっきーにはゆっくり休んでほしいから。今日はお互いの家で休も?写真集のお仕事が落ち着いたら、またいっぱい会おうね」
遥香「うん、ありがとう。さくちゃん、大好きだよ」
さくら「私も、だーいすき」
それでも、グループ全体の仕事ではかっきーと一緒の現場になることもある。
とはいえ他のメンバーも一緒なので、2人きりの時間を過ごせるわけじゃない。
同じ空間にいるのに、かっきーに私だけを見てもらうことが出来ない。
それが、なんだか余計に寂しかった。
ちょうどその日は、いつものスタジオで冠番組の収録日。
みんなのスケジュールがなかなか合わなかったのか、久しぶりの収録で今日は3本撮りの予定だった。
今は1本目と2本目のあいだの休憩時間。
4期生メンバーでひとつの楽屋を割り当てられ、みんな各々の時間を過ごしていた。
楽屋での私は、一人でぼーっとしているタイプだ。
仲が良さそうなメンバー同士のやり取りを見て、心を和ませていることが多い。
少し離れた席では、かっきーを中心に何人かの4期生が談笑していた。誰からも好かれるかっきーには、自然と人が集まってくる。よくある光景だ。
断片的に聞こえてくる内容からすると、かっきーの写真集が話題になってるみたい。
聖来「発売日まで、もうすぐやなぁ」
遥香「うん」
真佑「そういえば今日、メトロの駅でかっきーのポスター見たよ!すっごい大きいやつ。あとあと、車内にもかっきーの広告あって、もうなんていうか、かっきー尽くしだったよ!」
遥香「あはは…ちょっと恥ずかしいけどね。自分の広告が出てる車両なんてちょっと乗りづらいし…」
聖来「でもほんとすごいことやんな~。うちら4期生から写真集出すメンバーが出るって」
真佑「だよね~。私、あんなにポスター貼ってもらったことないもん。でもなんか、かっきーが遠い存在になっちゃったみたいでちょっと寂しいよ~…」
(遠い存在…)
まゆたんの一言が耳に入ってきて、胸がズキッと痛んだ。
(なんだろう…この感じ……かっきーが、遠い存在になっちゃう…?)
胸の奥で生じた痛みが、じわ~っと全身に広がっていく。
やがて目のあたりに届くと、それは痛みから熱さに似たものに変わり、なんだか視界がぼやけてきた。
(え……?これ…涙……?…あ、ヤバいかも…)
幸い、私の異変に気付いているメンバーはいないようだった。
私は席から立ちあがると、目を手で軽く覆いながら楽屋を出た。
どこでもいい。
とにかく、人目のなさそうなところへと走った。
~続く~
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