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幼少期
再会
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無事に御側付になることが決定して一週間。二年ぶりに白樺家を訪れることになった。
本来なら仕事はまだない。御側付は半ば護衛のようなものであり、外に一切出ない子供に対する護衛の仕事は皆無だ。
しかしどこまでも心配性で息子との距離を取りかねている嘉人様と雲雀様は僕を護衛というより友達になってほしいらしく、とりあえず会いに行くことになったのだが、
「………、」
どうしてくれよう。
白樺家に入って少し雲雀様と話をしたらすぐに離れへ案内されたのだが、蓮様の部屋の前まで来たら雲雀様は即行母屋へ戻ってしまった。
「子供同士で仲良く」
などと言っていたがどちらかと言えば貴女との年の方が近いです雲雀様、とも言えず、無情にも取り残されて早五分、いまだに襖を開けられないでいる。
そもそも二年前とはいえ蓮様への対応最悪だったじゃん!あの状態からの友達への昇格って無理だ。僕自身何事もなかったように友好的に会話できる気がしない。
そうは言っても開けなくては話にならない。
諦めて襖に手をかけた。
「失礼します。」
ひさしぶりに見た部屋は二年前とあまり変わっていなかった。閉じられた障子、遊ばれた形跡のないおもちゃ。変わった所と言えば置かれていた絵本の数位だろうか。
蓮様も部屋と同じようにあまり変わっていない。相変わらず美しく、色素が感じられない白さであの時も今も上体を起こしているだけなので身長までは分からないが、やはり小さく細い。
「…赤霧、涼か?」
「はい、お久しぶりです。名前を覚えていたのですね?」
前に会った時は、覚える気はないとか言ってた割にきちんと覚えてるんだな、という皮肉も込めて言った。もう良いや、どうせ蓮様も皮肉れた性格してるし、ちょっと腹立つ位のキャラで行こう。そっちの方がまだまともに会話できる気がする。下手にでるよりかは興味を持ってもらえるだろう。
含まれた皮肉に気付いたらしく、若干眉が跳ねたが気にもとめない風を装っている。
「兄の方はどうした、あれの方が適任じゃないか?」
「翡翠は御側付に相応しくないと判断されましたので。」
具体的にどう不相応なのかは言わないでおく。
「はっ、兄の方がそんなんじゃ妹の方も底が知れているな。」
「そんな人間に守られないといけない蓮様も大概不運ですね、ご愁傷様です。」
くっ、と悔しそうに此方を睨む、が五歳児が睨んでも可愛いだけだ。
「クビにしてやる…」
「まあ貴方が何を言おうと決定事項なのでどうしようもありませんが。」
今度は口元が引きつる。分かり易い子。まったくからかいがいがある。
「ふんっ、どうせ短い間だけだ!」
「下手したら付き合いは20年近く続きますよ?」
「はあ、20年も僕の命が持つわけ無いだろ?」
……何故勝ち誇った顔で言う。
「まだそんなこと言ってるんですか?人間案外簡単に死ぬもんじゃありませんよ?」
「それは僕の台詞だ。まだ僕が長生きするとでも言うのか?何も知らないくせに。」
「長生きするかは知りませんが、そう短い訳じゃないと思いますよ。」
「いや、短い!」
ことごとく全否定する蓮様。でもそれじゃあまるで、
「蓮様は早く死にたいんですか?」
「………。」
ぷいっとそっぽを向いて黙り込む。肯定と受け取って良いだろうか。
「理由を聞いても?」
「…馬鹿に話すことなんてない。」
「相手の事を大して知りもせず馬鹿と見なすのは早計ですよ。」
「うるさい!あっち行ってろ!」
細い腕を振り回し全力で僕を追い払おうとする。……せっかくだから少しからかおうか。
「はい、分かりました。」
「え?」
蓮様の側から立ち上がり部屋の隅に立つ。もう少し追い縋るものと思っていたらしい蓮様はキョトンとしていた。
「わ、分かってるなら良い。」
一応満足げに言うものの部屋の隅に立つ僕が気になって仕方がないらしくチラチラと此方に視線を投げかける。が、態わざと気がつかないふりをする。さあ、どうするか。
「…お前そこにいると気になるんだよ!視界に入らないところにいろ!」
「はあ、」
今度は蓮様の斜め後ろの部屋の角に立つ。視界に入っていない筈なのに、それでも此方をチラチラソワソワ。……これはあれだろうか。構って欲しいのか。
二人だけの空間に会話が無いまま約三分。蓮様もひたすらチラチラソワソワ。
「どうかしましたか?」
観察にも飽きてきたので声をかける。見ているのも可愛らしいがつまらない。
「……何かすることはないのか?」
「強いて言うなら今日の仕事は蓮様と友達になることですが?」
「父様がそう言ったのか?」
「いえ、とくに言われていませんが雲雀様から言外にそう言われました。」
「お前は仕事だから僕と友達になろうとするのか?」
「今の僕が貴方と友達になろうとしているように見えますか?」
「……仕事しろよ……。」
「それは友達になりたいと言ってるんですか?」
そう言うと蓮様の顔がカアア、と真っ赤に染まる。
「は?べ、別に俺はお前と友達になりたいとか言ってないしっ!」
勘違いすんなよバーカッ!と叫んで布団を頭まで被った。
デレた。これはいわゆるツンデレにおけるデレという奴だろうか。今までツンツンだったのに本当は友達が欲しかったのか。構ってほしかったのか。
などと思いつつ、蓮様から見えないのを良いことに無言で悶える。……よく考えたら僕も友達雲雀様しかいない。
心を静めて白い塊に目をやるともぞもぞと動きほんの少しだけ布団を上げてこちらを見る赤い目。またさっきみたいにチラチラソワソワ。……小動物のようだ。
目が合うとバッと布団をかぶり直した。
そっと布団に近寄りしゃがみ込む。
「友達になりたいんですか?」
「……なりたくない。」
「残念ですねー僕は友達になりたいのですが?」
ピクリと布団が動く。
「……お前さっき仕事する気ないって言ってただろ。」
……流石に覚えていたらしい。そこはかとなくアホの子感が出ているのでなめてかかったが流石に鳥頭でもなかったらしい。
「仕事、はする気ありませんが、それとこれとは話が別です。」
あくまでも仕事ではなく個人的に友達になりたいと強調する。するとチラリと布団から顔を出した。
「……知り合いにならなってやる。」
どうやら赤の他人から知り合いにランクアップしたらしい。
「ありがとうございます。ところでしりとりでもしませんか?」
「……いきなり話が飛んだな。」
「あれ?知りませんか?知り合いになったら、まずしりとりをするのが世間一般の常なのですが……。」
「!?」
無論嘘だ。そんな馬鹿馬鹿しい常識あってなるものか。
だがある程度相手と距離をとった上での遊びがこれしか思いつかなかったのだ。下手に近づくのはあまり良くないだろう。さてこの嘘八百、箱入りの坊ちゃんが気付くかどうか。
「そ、そうか、なら仕方ないな。相手してやる。」
何の疑いもなく引っかかっちゃったボンボン。
いそいそと嬉しそうに布団からでる自分の主人に今更嘘とも言えず。
「ほらっやるぞ!『りんご』からなっ!」
キラキラと目を輝かせて相手をせがむ蓮様には、既に浮き世離れた姿は見られない。どこにでもいる子供。いや遊ぶことに飢えた子供だった。
「『ごま』」
「『まくら』!」
「『らんぎり』」
「『リス』!」
「『スナメリ』」
「り、『りく』!」
「『くり』」
「~~!何で『り』ばっかこっちに回して来るんだよ!」
「蓮様、しりとりとは遊びといえども手を抜けば相手に大して無礼を働くということ。自らの語彙を活用してお相手申し上げる……それこそがしりとりというものであり、真理なのです。」
「……嘘だろ絶対。」
「ええ、嘘ですが。」
「真顔で嘘つくなっ『り』でかえすのはもう禁止だ!もう一回やるぞ!」
「はあ、」
「『りす』!」
「『すいれん』あ、負けちゃいました。」
「手を抜くにも程があるぞ!?」
結局全力でしりとりをする事になり、当然の如く大人気なく僕が全勝し、時間になり僕は帰ったのだが次の日蓮様が辞書を抱えて布団の上に座っていたのは悪くない傾向だと思う。
彼は気づいていただろうか、自身の一人称が僕から俺に途中で変わっていたことに。その分僕と彼との距離が縮まったのだと思いたい。
本来なら仕事はまだない。御側付は半ば護衛のようなものであり、外に一切出ない子供に対する護衛の仕事は皆無だ。
しかしどこまでも心配性で息子との距離を取りかねている嘉人様と雲雀様は僕を護衛というより友達になってほしいらしく、とりあえず会いに行くことになったのだが、
「………、」
どうしてくれよう。
白樺家に入って少し雲雀様と話をしたらすぐに離れへ案内されたのだが、蓮様の部屋の前まで来たら雲雀様は即行母屋へ戻ってしまった。
「子供同士で仲良く」
などと言っていたがどちらかと言えば貴女との年の方が近いです雲雀様、とも言えず、無情にも取り残されて早五分、いまだに襖を開けられないでいる。
そもそも二年前とはいえ蓮様への対応最悪だったじゃん!あの状態からの友達への昇格って無理だ。僕自身何事もなかったように友好的に会話できる気がしない。
そうは言っても開けなくては話にならない。
諦めて襖に手をかけた。
「失礼します。」
ひさしぶりに見た部屋は二年前とあまり変わっていなかった。閉じられた障子、遊ばれた形跡のないおもちゃ。変わった所と言えば置かれていた絵本の数位だろうか。
蓮様も部屋と同じようにあまり変わっていない。相変わらず美しく、色素が感じられない白さであの時も今も上体を起こしているだけなので身長までは分からないが、やはり小さく細い。
「…赤霧、涼か?」
「はい、お久しぶりです。名前を覚えていたのですね?」
前に会った時は、覚える気はないとか言ってた割にきちんと覚えてるんだな、という皮肉も込めて言った。もう良いや、どうせ蓮様も皮肉れた性格してるし、ちょっと腹立つ位のキャラで行こう。そっちの方がまだまともに会話できる気がする。下手にでるよりかは興味を持ってもらえるだろう。
含まれた皮肉に気付いたらしく、若干眉が跳ねたが気にもとめない風を装っている。
「兄の方はどうした、あれの方が適任じゃないか?」
「翡翠は御側付に相応しくないと判断されましたので。」
具体的にどう不相応なのかは言わないでおく。
「はっ、兄の方がそんなんじゃ妹の方も底が知れているな。」
「そんな人間に守られないといけない蓮様も大概不運ですね、ご愁傷様です。」
くっ、と悔しそうに此方を睨む、が五歳児が睨んでも可愛いだけだ。
「クビにしてやる…」
「まあ貴方が何を言おうと決定事項なのでどうしようもありませんが。」
今度は口元が引きつる。分かり易い子。まったくからかいがいがある。
「ふんっ、どうせ短い間だけだ!」
「下手したら付き合いは20年近く続きますよ?」
「はあ、20年も僕の命が持つわけ無いだろ?」
……何故勝ち誇った顔で言う。
「まだそんなこと言ってるんですか?人間案外簡単に死ぬもんじゃありませんよ?」
「それは僕の台詞だ。まだ僕が長生きするとでも言うのか?何も知らないくせに。」
「長生きするかは知りませんが、そう短い訳じゃないと思いますよ。」
「いや、短い!」
ことごとく全否定する蓮様。でもそれじゃあまるで、
「蓮様は早く死にたいんですか?」
「………。」
ぷいっとそっぽを向いて黙り込む。肯定と受け取って良いだろうか。
「理由を聞いても?」
「…馬鹿に話すことなんてない。」
「相手の事を大して知りもせず馬鹿と見なすのは早計ですよ。」
「うるさい!あっち行ってろ!」
細い腕を振り回し全力で僕を追い払おうとする。……せっかくだから少しからかおうか。
「はい、分かりました。」
「え?」
蓮様の側から立ち上がり部屋の隅に立つ。もう少し追い縋るものと思っていたらしい蓮様はキョトンとしていた。
「わ、分かってるなら良い。」
一応満足げに言うものの部屋の隅に立つ僕が気になって仕方がないらしくチラチラと此方に視線を投げかける。が、態わざと気がつかないふりをする。さあ、どうするか。
「…お前そこにいると気になるんだよ!視界に入らないところにいろ!」
「はあ、」
今度は蓮様の斜め後ろの部屋の角に立つ。視界に入っていない筈なのに、それでも此方をチラチラソワソワ。……これはあれだろうか。構って欲しいのか。
二人だけの空間に会話が無いまま約三分。蓮様もひたすらチラチラソワソワ。
「どうかしましたか?」
観察にも飽きてきたので声をかける。見ているのも可愛らしいがつまらない。
「……何かすることはないのか?」
「強いて言うなら今日の仕事は蓮様と友達になることですが?」
「父様がそう言ったのか?」
「いえ、とくに言われていませんが雲雀様から言外にそう言われました。」
「お前は仕事だから僕と友達になろうとするのか?」
「今の僕が貴方と友達になろうとしているように見えますか?」
「……仕事しろよ……。」
「それは友達になりたいと言ってるんですか?」
そう言うと蓮様の顔がカアア、と真っ赤に染まる。
「は?べ、別に俺はお前と友達になりたいとか言ってないしっ!」
勘違いすんなよバーカッ!と叫んで布団を頭まで被った。
デレた。これはいわゆるツンデレにおけるデレという奴だろうか。今までツンツンだったのに本当は友達が欲しかったのか。構ってほしかったのか。
などと思いつつ、蓮様から見えないのを良いことに無言で悶える。……よく考えたら僕も友達雲雀様しかいない。
心を静めて白い塊に目をやるともぞもぞと動きほんの少しだけ布団を上げてこちらを見る赤い目。またさっきみたいにチラチラソワソワ。……小動物のようだ。
目が合うとバッと布団をかぶり直した。
そっと布団に近寄りしゃがみ込む。
「友達になりたいんですか?」
「……なりたくない。」
「残念ですねー僕は友達になりたいのですが?」
ピクリと布団が動く。
「……お前さっき仕事する気ないって言ってただろ。」
……流石に覚えていたらしい。そこはかとなくアホの子感が出ているのでなめてかかったが流石に鳥頭でもなかったらしい。
「仕事、はする気ありませんが、それとこれとは話が別です。」
あくまでも仕事ではなく個人的に友達になりたいと強調する。するとチラリと布団から顔を出した。
「……知り合いにならなってやる。」
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「あれ?知りませんか?知り合いになったら、まずしりとりをするのが世間一般の常なのですが……。」
「!?」
無論嘘だ。そんな馬鹿馬鹿しい常識あってなるものか。
だがある程度相手と距離をとった上での遊びがこれしか思いつかなかったのだ。下手に近づくのはあまり良くないだろう。さてこの嘘八百、箱入りの坊ちゃんが気付くかどうか。
「そ、そうか、なら仕方ないな。相手してやる。」
何の疑いもなく引っかかっちゃったボンボン。
いそいそと嬉しそうに布団からでる自分の主人に今更嘘とも言えず。
「ほらっやるぞ!『りんご』からなっ!」
キラキラと目を輝かせて相手をせがむ蓮様には、既に浮き世離れた姿は見られない。どこにでもいる子供。いや遊ぶことに飢えた子供だった。
「『ごま』」
「『まくら』!」
「『らんぎり』」
「『リス』!」
「『スナメリ』」
「り、『りく』!」
「『くり』」
「~~!何で『り』ばっかこっちに回して来るんだよ!」
「蓮様、しりとりとは遊びといえども手を抜けば相手に大して無礼を働くということ。自らの語彙を活用してお相手申し上げる……それこそがしりとりというものであり、真理なのです。」
「……嘘だろ絶対。」
「ええ、嘘ですが。」
「真顔で嘘つくなっ『り』でかえすのはもう禁止だ!もう一回やるぞ!」
「はあ、」
「『りす』!」
「『すいれん』あ、負けちゃいました。」
「手を抜くにも程があるぞ!?」
結局全力でしりとりをする事になり、当然の如く大人気なく僕が全勝し、時間になり僕は帰ったのだが次の日蓮様が辞書を抱えて布団の上に座っていたのは悪くない傾向だと思う。
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