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武者くんと騎士くん①

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なんだコレ すっげっ!

レオンにいざなわれて、踏み込んだバスルームは、いつもとは、まったくの別世界だった。
中は、湯気が立ち込め、蒸し暑い。
蛇口からは、湯がゆっくりと流れ、風呂の中に注がれながら、バスルームの中を湯気で満たし続けている。

何よりも違うのは照明で、いつもとは違い、妙に艶めかしい青白い灯りが、中を照らしている。

「なんかいつもと違うもんが敷いてあっけど、玩具のプールみてぇじゃなくて、結構しっかりしてんのな?」
「ウレタンだからね」
「へぇ~」

「狼偉 僕を見てごらん」

俺は、肩越しにレオンを振り返る。

「うぉっ」

いつもより、薄暗いハズなのに、レオンのシルエットは、クッキリとした白さを放ちながら、しなやかで、バネを纏った筋肉質な身体を浮かび上がらせていた。

君もだよ?とうながされ、視線を落とすと、俺の身体もレオンと同じように、妙にクッキリと白い光で包まれている。
ガキの頃、爺さんと一緒に行った水族館で、ライトアップされた水の中を、すげぇ鮮やかな色を放ちながら、ゆらゆらと泳いでいたクラゲを思い出す。

「ブラックライトを用意してみたんだ。雰囲気が出るかと思って。どうかな?」
「なんか知らんけど、いいんじゃね?。お前も良くやるわ。マジで感心するわ。
 でも…確かに、雰囲気が出てるっていうか、エロいぜ?
 なんか俺の中がどんどんどんどんエロくなってくって感じ。
 こんな格好だからかもしんねぇけど」

「うん さっき色々工夫してるって言ったでしょ?
 生地の糸にも蛍光剤を使ってるんだ。
 やっぱり予想通りだよ。
 君の身体が、こんなにも素敵に浮かび上がって、エロティックで…めちゃくちゃ興奮してる」

見慣れたハズのバスルームの中が、非日常という感じで、他にもイロイロと凄いことになってるのを、一瞥しながら、俺が言うと、レオンは、ニッコリと嗤う。

「本当に、今までにないくらい、凝ってみたよ。
 だって…。
 君が、僕とこんな風に愛しあうのは、もう懲りたから嫌だって言ったら、
 こういう準備するのは、これが最後かもしれないし?」

「…へぇ。いうじゃねぇの?
 まぁいいや。さっさと始めようぜ?
 せっかくお前が準備してくれた特設リングなんだからよ。
 さっきも言ったけど、全部お前にのっかってやる。
 使いたいもん、好きなだけ使え。
 やりてぇこと全部やれ。
 いちいち、していい?とか、確認すんな。
 お前が、こんな風にせっせと準備する気が今日で失せちまうかもしんねぇんだし?」

「じゃぁ 始めよう…狼偉」

レオンとそんな会話をやり合っている間にも、湯気が身体に纏わりつき、じっとりと身体に染み込んでくるが、すぐに汗となって滴りはじめる。

湯気の中で、レオンと再び抱き合いながら、舌を絡め合い、身体の中心を焦らしあうかのように擦り付け合う。

湿り気を帯びた布越しのせいか、さっきと全然、感触が違う。
ザラッとした舌で舐めあってるみてぇ…。
全身がさらにじっとりと汗ばむ。
レオンも同じだ。

水分補給する?とでもいうかのように、レオンがシャワーを手渡してくる。
俺は、飲ませてやろうか?と目で問いかけると、レオンは、軽く首を振って自分で飲むという意思表示をした。

いいじゃねぇの?

口に含んだ水をゴクリと飲み干しながら、シャワーをレオンに手渡す。
レオンも水を口に含み、喉を鳴らすように呑み込んだ。
それから、風呂を半分ほど覆った蓋の上に置いてある風呂桶を手繰り寄せると、手ですくって俺に見せる。

あ~ここにローションが入ってるってワケね。
こんなにいらねーんじゃね?ってくらい入ってんだから、ケチってもしょーがねぇし!
たっぷりと両手すくって、レオンの逞しい胸板にぶっかける。

えっろっ!
もう数え切れねぇくらい思ってるんだけどさ。
脱いだらすげーって言うけど、着ててもすげぇエロイって、どーゆーことなんだろな。
レオンの身体が、いつもと違う感じでローションに塗れていくのを見て、俺の相棒が、唾をのみこむかのように、ガツッっと硬さを増していく。
そんな俺に、レオンもローションを塗してくる。
二度、三度とローションを塗し合い、キスをする。
そして、再び、しっかりと抱き合いながら、身体の中心を、じっくりと擦り合わせる。

蒸し暑さのせいで、いつもより息があがってくるのが早い。

このままいつまでも味わっていたいという思いと、もっともっと…という欲が俺の中で交じり合う。

こいつ、これからどうするつもりなんだろ?
やっぱ腰を下ろしてって、じっくりって感じになるんだろうけど。
そんなことを思っている俺を、レオンはゆっくりと壁際に押し付けてきた。
壁に押し付けられるのが、なんか俺のプライド的に許せなかったので、壁から一歩押し返す。
レオンがにやりと笑う。
それから、俺のシューズとレオンのシューズのつま先が、まるで間合いを測るかのように、ぴったりと合わさった。
間合いを確認するかのように、乳首をつまみあう。

こいつすげぇよな。
こんなにぴったりと…まっすぐに俺の前に立っているのに、身体の芯が揺らぐ様子が微塵もない。

そして、コイツとの僅かな隙間を、俺の相棒が早く埋めろと俺をせっつくかのように、ぐぐっぐぐっと跳ねて催促してきやがる。
隙間を埋めるかのように腰を僅かに突き出すと、レオンも同じように突き出してきた。
互いにぐっぐっと、ここは自分の縄張りだと主張しあいながら、視線を絡め、嗤いあう。

レオンが俺を誘うように、足を広げ、少し、腰を落とす。

へ~ 準備運動には、丁度いいんじゃねぇの?

レオンと同じ幅で足を開き、シューズの先をレオンに合わせながら、腰を落とした。
しっかりと踏ん張れそうな絶妙な加減だ。

軽く舌を絡め合いながら、腰をお互いに突き出し、隙間を埋めて、ココは俺のものだと縄張りを主張しあう。
互いにピンっと立った乳首をしっかりと摘まみ合いながら、欲を垂れ流しながら、反り返える互いの相棒を包み込んで、もっこりと膨れ上がった布ごしでのぐりぐりとした力比べ。

やっぱ身体の芯が、すげぇ強ぇ。
単純な力勝負じゃ、正直、勝てる気がしねぇよ。
悔しいけどな。
でも、俺だって、足腰鍛えてるってプライドみてぇなもんはある。

レオンと歩調を合わせるかのように、俺の腰と欲は、ゆっくりと突き出されて、レオンと触れあうたびに、力比べを行う。

欲に塗れた視線を絡ませあい、ねっとりと粘りつくような、ひと時が絡みつき合うように流れていく。

レオンが、さらに舌を深く絡めることを俺に要求し、それに応えた俺は、引き込まれるようにレオンの中に舌を進め…俺の舌は、締め技をくらったかのように、ガッツリとレオンに絡めとられた。

息がちょっと辛ぇケド…すんげぇ気持ちいい。
レオンの汗の臭いが俺の鼻孔をくすぐり、俺の脳みそが犯されるように、ふわりと撫で上げられた。

フっとレオンの圧が下がる。

へへっ♪ コイツ、感じやがった?
俺は、レオンの目を見つめ、にったりと嗤う。
レオンも嗤う。
そして雰囲気がいきなり変わりやがった。

チカッ

まず感じたのは、目から火花がでたような感覚だった。
遅れて、俺の相棒を通して、頭のテッペンまでガツンとくるような快楽の衝撃と共に、ガッチガチにいきり勃っているロイが、俺と同じように怒張しているレオンの膨らみにドつかれる。

ぁぐぅっ!

一瞬頭が白くなり、そして、俺の中に沸き起こったのは、脳を酔わせるような快楽と突き刺さるような身体の悦び、そして、俺の中のめちゃくちゃ身勝手な憤りがぐっちゃぐちゃに混ざりまくったものだった。

上等じゃねぇかっ!

俺たちは、だらだらとぬめるものを吐き出しながらも、腰を突き出し、硬さと弾力を合わせ持つ欲の棒を打ち付け合う。

互いに繰り出すように腰を打ち付け合う…が、悔しいことに、やはり、この攻防の主導権はレオンが握っていた。

レオンの体躯からだの中にがっつり埋まっている凶悪なバネの猛攻に、俺は、ついていくのがやっとだった。

粘りの効いた肉がぶつかり合う音がバスルームに響く中で、その衝撃が飛沫しぶきを飛ばし、快感と共に俺を侵していく。

ずぅっん!
っぅぅぐぅぅっ!

ずぅっんん!
ぅぅぅぅっぐっぅ!

低く漏れでる声にもならないものが、僅かな吐息と共に吐き出される。

息が辛ぇっていうか…できねぇ。
レオはがっちりと俺の舌を絡めとって俺を離さない。
据わったような…それでいて淫靡な嗤いを湛えたような目で、俺の目をしっかり見つめながら、レオンは、俺をドつきまくり、俺を圧倒しようと、その勢いは増していく。

こいつ…。
俺から、縄張り全部奪って、壁にはりつける気だ。
欲とエロで溢れるリングの中を、俺の首を鷲掴んで引きずり回し、コーナーポストに俺をはりつけようとしてやがる。

ふっざけんじゃねぇ!

だけど…すげぇ苦しい。
口からの呼吸は、がっつり舌を絡めとられ、僅かな呼吸しか許されない。
湯気が充満したバスルームは、鼻孔からの呼吸を蝕むように圧迫する。
何より、こんな状態でも感じちまうレオンの汗の臭いが俺を蝕み追い詰める。

コイツ…どこで呼吸してやがんだよ!

何度目か…いや何十度目か?
わかんねぇくらいに腰を突き出し、レオンにドつかれ、シングレットに先走りの染みをド派手に広げあいながらも、縄張りを奪われるものか!と意地とプライドだけで腰を突き出す俺とその相棒に、レオンが一撃、一撃と重さを増しながら襲い掛かる。

俺は必死に食らいつきながら、次の一撃に備えようと、衝撃に備えて腹にぐっと力を籠めた。

突き出された相棒にレオンが襲い掛かり、触れた瞬間に衝撃が来る…と思った瞬間、レオンの動きがピタリと止まる。

そして、俺の舌が、ゆっくりと解放される。

ふうっふうっふぅっっ
空気が全然たんねぇ
汗が…すげぇことになってる。
結われた髪もぐちゃぐちゃだ。
前髪が一筋、右目にかかる。うっとうしい!
空気が……全然たんねぇ!

それでも…目の前でじっと俺の様子を観察するコイツの視線を逸らすかのように、大きく顎をあげて息をするのは嫌だった。

俺はレオンを睨みつける。

そんな俺にレオンが、そっけない語調で声を掛ける。

「インターバルは30秒。水を飲むなら今のうちだよ?」

レオンは、さっさと自分でシャワーから水を口に含み、ごくりと飲み干しながら、ぶっきらぼうに俺に手渡す。

コイツ……息が俺とは段違いに上がってねぇ。
汗は、がっつりかいてる癖に、こんなもん、なんでもねぇって顔してやがる。
30秒?
インターバル?
いや、まずは水分補給しとかねぇとやべぇ。
水を二口、ごくりと飲み干す。
息を落ち着けねぇと…。
今の俺に、出来るかどうかわかんねぇし、ホントなら座ってやるもんだけど。

ふぅぅぅぅぅぅ…ゆっくり7~8秒ほど息を吸い、色んなもんに邪魔されながらも、丹田に意識を向ける。
それから残りの時間を使って、三拍子で吐き出す。
は~ は~ は~
いつもにくらべりゃ、雑だし、短すぎるし、立って行うものでもねぇ。
それでも、何もしねぇより息がマシになる。
足腰も…まだいける。

レオが俺の前に立つ。
目が据わっていやがる。
こんなになってるレオン、俺、今まで見たことねぇ。

レオンが、まだやれるか?と、俺を試すかのように視線で問いかけ、俺は頷く。

レオンが再び俺の唇を塞ぎ、今度は俺の中に入ってこようとする。
俺はレオンの舌を、受け入れて、俺の中で絡めとる。
マジかよ…こっちの方が呼吸が…半端なく辛ぇ。
こいつ、この状態でやってやがったのかよ。

再びレオンの猛攻が始まる。
そして、さらに勢いを増していく。
俺の中にあるレオンの舌が、俺を挑発するかのように、俺の舌に纏わりつく。
そして、強烈な一撃で、俺の縄張りが僅かに奪われた。
くそっ!と思った瞬間、レオンはピタリと止まる。

「インターバル 30秒」

そして、それがもう一度繰り返される。

今度は舌を相互に相手の陣地へ乗り込ませるが、こっちでも主導権はレオンに奪われる。
俺の口内は、レオンの舌に蹂躙され、腰を突き出すので精一杯な俺は、碌な反撃ができなかった。
3度目の猛攻を受け、俺の縄張りは、徐々にレオンに削り取られるように奪われた始める。
腰の突き出しが僅かに浅くなる分、俺の相棒はレオンに突き上げれ、粘った飛沫しぶきを無様に散らす。

また、縄張りが奪われた。
さらに、奪われる。
これからも、奪われる。

俺の脳裏に、コーナーに磔られた俺の姿が浮かんだ。

俺は吠えた、ありったけの力を籠めて、腰を突き出した。
そして、縄張りを、奪い返す。
だが、また次の一撃で奪い返されちまう。
悔しい!
だが、次の一撃を喰らう前にレオンの動きが止まる。
舌を開放された俺は、ついに顎をあげて、ハァハァと呼吸する。

「インターバル30秒で3分 3回。楽しんでくれたかな?」

ハッハッハッと息を弾ませ、レオンは俺に尋ねる。

ハァハァハァハァ…息が完全にあがった俺は、すぐに答えることが出来ない。

でも、どうしてもレオンに伝えたいことがあって、レオンを抱き締めながら、レオンの耳に唇を寄せた。

「ハァハァッ 情けねぇ…とこ…見せちまった…な。
 俺、もっともっと…ハァハァっ…自分で自分のこと壊さね~と、
 お前のことぶっ壊せねぇって、やっとわかった気がする。」

レオンの表情が、フッと和らぎ、俺のことを抱き締め返してきた。

「僕も、もっともっと自分を壊すよ。
 そうしないと、狼偉、君の欲に勝てないって、今ので思い知った。」

息を整えながら、二人で抱き締め合う。

お互い凄い汗だね。
ちょっと水浴びない?

レオの提案に、俺たちは、二人で一緒に頭から水を被る。

冷たい水の感覚で、俺の身体は、少し息を吹き返す。

「今度は、こっちで…じっくりと壊し合おう」

レオンに促されて、俺たちはマットの上に腰を降ろし、向かい合った。
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