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しおりを挟む熱にまみれた肌を拭って。
まだ起き上がれそうにないお前を抱きしめながら、少しだけまどろむ。
「…本当は、怖かったの。優に会うの」
ちょっと掠れた声で、お前はそう話し出した。
「…なんで」
その先を、聞くのが怖い。でも、聞かなきゃいけない。
そう思って、敢えて訊ねた。
「私のこと、忘れてるんじゃないかって…それか、もう誰かいるんじゃないかって…」
お前は言葉を選びながら、恐る恐る話してくれて。
「あとね。もし会えたとしても、またあの時の繰り返しになるかもしれないって…」
わかっていた事だけど。
やっぱりあの時のことは、お前の心に深く影を落としていたんだ。
改めて、後悔だけが押し寄せるけど。
「それは…」
「でも、それでもいいって思ったの。
どんな形でも一目会えたら、もうそれで思い残すことないって。
…あの時と同じ感じになったとしても、それでもいいから」
嘘のない、澄んだ瞳が俺を写す。
お前に、そこまでの決意をさせて。
俺も何も言わないわけにはいかない。
「…信じんくてもいいけどよ」
向き合う。過去の自分と。
「ああでも言わんと、お前を引き止めそうで…怖かったんだ」
「…!」
弱さにまみれて一番愛してるやつを手放した、あの時の俺と。
「あん時の俺には、お前を守る力がなかった。だから、気持ちにすげえ嘘ついた」
今更な、話だけど。
「あんなこと言って…や、あんなこと言ったからか。
あれから今日までお前を忘れることなんてなかった。本気で好きになる女もいなかった。
まあ、正直さ…誰も抱かなかったわけじゃねえけど…誰も愛さねえって決めてたから」
独りよがりなことも、わかってるけど。
なのに。
「…私の、せい…」
そう言ってお前はまた謝ろうとするから。
「ちげぇよ。俺なりの償い。
1番大事なお前を盛大に傷つけた…それの償いとか戒めのつもりだった。
それに、お前以上に愛したいと思える女もいねえし」
お前は、なんにも悪くない。
むしろ、俺の弱さで、しなくてもいい遠回りをさせちまったんだから。
「優…」
だから。
「…夏弥」
「ん…?」
「許してくれるか?俺のこと。
って、言う資格なんかねえんだけど」
「…そんな、許すも何も…」
「俺に、守らせてくんねえか。夏弥のこと」
俺たちの、これからを約束させて欲しくて。
「…優…っ…」
俺の言葉を聞いたお前が、胸の中で泣きながら。
お願いしますと、優しい声で答えてくれた。
もう、迷わない。
色んな奴を敵に回しても。
誰が、何が、追いかけてきても。
俺は、お前を二度と離さねえ。
俺たちの決意を認めるかのように、夜空には小さな星がいくつも光り始めていた。
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