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061 盗賊さん、先輩冒険者に教えを乞う。
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プルにはウエストポーチに入ってもらい、南門を目指す。途中、ウィードウルフと遭遇したけれど[パラライズパウダー](襲撃者撃退時に判明した効果から勝手に名付けた)で麻痺させ、無視して先を急いだ。素材として狩ってもよかったが、栽培実験に使う魔獣の血液には、血中魔素濃度が比較的低い草食魔獣の方が適しているので、今のところ使い所がなかったというのも大きく、狩る必要性が感じられなかった。
何事もなく南門にたどり着いて身分証を提示する。確認してくれた衛兵は、ボクが城門外へと出るときにチェックしてくれた人物と同じだったらしく、手ぶらのボクを見て「もう少し粘ればフレイルラビットの1羽くらいは狩れたんじゃないか?」などと言っていた。
どうやら狩りに出て、なにも狩れずに戻って来たと思われてしまったらしい。[アイテムキューブ]のことを明かすわけにもいかないので、苦笑しながら適当に言い訳することにした。
「いやぁ、グラスボアを狙ってたんですけど、ウィードウルフが寄って来てそれどころじゃなくなっちゃったんですよ」
「ひとりでそんな大物狩る気だったのか。あいつら草食ってるときは、うすっとろいが下手な攻撃して仕留めきれないと、目の色変えてしつこく追って来るからな。本気で走られると人間の足で逃げ切れる速度じゃない上に、あの巨体だから追い回されたらひとたまりもないぞ」
「あはは、肝に銘じておきます」
困ったときにグレンがたまにやる仕草を真似て、後ろ頭を掻きながらそう言ってから、ボクは南門を後にした。
しばらく歩いていると12の鐘が鳴る。どうやら時間的に丁度よかったようだ。そのまま寄り道することなく、錬金術ギルドまで帰ろうと思ったけれど、中心街に差し掛かったとき、冒険者ギルドがごった返しているのが目に入った。昼時だというのに混んでいて違和感を覚えたボクは、冒険者ギルドに少し立ち寄ることにした。ギルド内はざわざわとしており、なにかあったらしいのは間違いないようだった。
ボクは近くにいた適当な人物に声をかけ、なにがあったのかを訊ねた。
「こんな時間にひと集まってますけど、なにがあったか知ってます?」
「あ、知らねぇのか。昨日の晩にスライムダンジョンで新しい階層が発見されたんだとよ。しかも異常な量のスライムでダンジョンが溢れ返ってて集団暴走を起こしかけてたらしいぜ」
「大丈夫だったんですか、それ」
なにも知らないふりをして訊ねる。
「なんでも昨日破格の報酬で緊急依頼が出されたらしくってな。ほとんど狩り尽くされたらしいぜ。オレもその場に居りゃ、稼がせてもらえたかも知れねぇのによ。失敗したぜ」
「それって新人でも参加出来ましたかね」
「そりゃ難しいだろうな。条件がランク3以上だったって話だったからな」
未だにランクのことを知らなかったボクは、この際に聞くことにした。
「そのランクっていうのはどうやって上げるんです」
「お前、知らねぇのか」
「いやぁ、恥ずかしながらつい最近冒険者になったばかりでして」
苦笑しながら自分の冒険者証を取り出して、先輩冒険者に見せる。
「星なしかぁ、んじゃ仕方ねぇかもな」
「星なし?」
「冒険者証の下のとこに星型の印があんだろ。ランクが上がると、その星に色が付けられんだよ」
示された箇所に目を向けるとボクの冒険者証下部に、星印の窪みが7つ並んでいた。
「ほれ、これがオレの冒険者証な」
そう言って差し出された先輩冒険者の冒険者証下部に並んだ星は、左から順に色が入っており、赤・橙・黄・緑となっていた。
「これはランク4ってことですか」
「そういうことだな。ギルドの依頼受けねぇでダンジョンに潜ってばっかだとランクは上がんねぇから注意な。まぁ、ダンジョン産のアイテムを買い取りに出しまくってランクを上げるって手もなくはねぇが、アイテムドロップ率を考えると厳しいな」
「そのランクって上がるといいことあるんですか」
「あぁ、ダンジョン探索申請するときに深層まで潜る許可が出やすいだとか。あとは高額の外部依頼を優先的に受けられるようになるな」
「そうなんですね。それでなんですけど、アイテムの買い取りってどこでやってるんですかね」
「そんなことも知れねぇで冒険者になったのか。もしかして憧れだけでなった口か?」
「はぁ、そんなところですね」
どことなく後輩っぽさを感じさせる衛兵のミンティオがやっていたように、へらりとした曖昧な表情で肯定すると先輩冒険者は、あきれたように頭をふった。
「まぁ、そいつを否定はしねぇがよ。少しは下調べくらいした方がいいぜ。いつか痛い目に遭いたくなきゃな」
「はい、今後はそうします」
「返事だけは一丁前だな。が、悪いことじゃねぇ。んで、アイテムの買い取り窓口の場所だったな。それならギルド裏手にある煉瓦造りの倉庫みてぇな建物がそうだ。今の時間なら空いてんじゃねぇかな。15の鐘以降は混み出すからよ、その辺考えて行くといいぜ」
「わかりました。説明、ありがとうございます」
「おうよ。なんか困ったことあったら、また聞いてくれや」
「そのときはよろしくお願いします……先輩」
一応先刻見せてもらった冒険者証で名前はわかっていたが、名乗られてはいないので彼の名を呼ばすに、ボクは先輩と呼ぶことでお茶を濁した。するとその様子から察したらしい先輩冒険者は、名乗ってくれた。
「ん、あぁ、オレはビル・バンドッグってんだ。よろしくな」
差し出された皮の分厚くなった厳つい手を、ボクは握り返しながらなのを名乗った。
「ボクはヒイロです。ビル先輩」
何事もなく南門にたどり着いて身分証を提示する。確認してくれた衛兵は、ボクが城門外へと出るときにチェックしてくれた人物と同じだったらしく、手ぶらのボクを見て「もう少し粘ればフレイルラビットの1羽くらいは狩れたんじゃないか?」などと言っていた。
どうやら狩りに出て、なにも狩れずに戻って来たと思われてしまったらしい。[アイテムキューブ]のことを明かすわけにもいかないので、苦笑しながら適当に言い訳することにした。
「いやぁ、グラスボアを狙ってたんですけど、ウィードウルフが寄って来てそれどころじゃなくなっちゃったんですよ」
「ひとりでそんな大物狩る気だったのか。あいつら草食ってるときは、うすっとろいが下手な攻撃して仕留めきれないと、目の色変えてしつこく追って来るからな。本気で走られると人間の足で逃げ切れる速度じゃない上に、あの巨体だから追い回されたらひとたまりもないぞ」
「あはは、肝に銘じておきます」
困ったときにグレンがたまにやる仕草を真似て、後ろ頭を掻きながらそう言ってから、ボクは南門を後にした。
しばらく歩いていると12の鐘が鳴る。どうやら時間的に丁度よかったようだ。そのまま寄り道することなく、錬金術ギルドまで帰ろうと思ったけれど、中心街に差し掛かったとき、冒険者ギルドがごった返しているのが目に入った。昼時だというのに混んでいて違和感を覚えたボクは、冒険者ギルドに少し立ち寄ることにした。ギルド内はざわざわとしており、なにかあったらしいのは間違いないようだった。
ボクは近くにいた適当な人物に声をかけ、なにがあったのかを訊ねた。
「こんな時間にひと集まってますけど、なにがあったか知ってます?」
「あ、知らねぇのか。昨日の晩にスライムダンジョンで新しい階層が発見されたんだとよ。しかも異常な量のスライムでダンジョンが溢れ返ってて集団暴走を起こしかけてたらしいぜ」
「大丈夫だったんですか、それ」
なにも知らないふりをして訊ねる。
「なんでも昨日破格の報酬で緊急依頼が出されたらしくってな。ほとんど狩り尽くされたらしいぜ。オレもその場に居りゃ、稼がせてもらえたかも知れねぇのによ。失敗したぜ」
「それって新人でも参加出来ましたかね」
「そりゃ難しいだろうな。条件がランク3以上だったって話だったからな」
未だにランクのことを知らなかったボクは、この際に聞くことにした。
「そのランクっていうのはどうやって上げるんです」
「お前、知らねぇのか」
「いやぁ、恥ずかしながらつい最近冒険者になったばかりでして」
苦笑しながら自分の冒険者証を取り出して、先輩冒険者に見せる。
「星なしかぁ、んじゃ仕方ねぇかもな」
「星なし?」
「冒険者証の下のとこに星型の印があんだろ。ランクが上がると、その星に色が付けられんだよ」
示された箇所に目を向けるとボクの冒険者証下部に、星印の窪みが7つ並んでいた。
「ほれ、これがオレの冒険者証な」
そう言って差し出された先輩冒険者の冒険者証下部に並んだ星は、左から順に色が入っており、赤・橙・黄・緑となっていた。
「これはランク4ってことですか」
「そういうことだな。ギルドの依頼受けねぇでダンジョンに潜ってばっかだとランクは上がんねぇから注意な。まぁ、ダンジョン産のアイテムを買い取りに出しまくってランクを上げるって手もなくはねぇが、アイテムドロップ率を考えると厳しいな」
「そのランクって上がるといいことあるんですか」
「あぁ、ダンジョン探索申請するときに深層まで潜る許可が出やすいだとか。あとは高額の外部依頼を優先的に受けられるようになるな」
「そうなんですね。それでなんですけど、アイテムの買い取りってどこでやってるんですかね」
「そんなことも知れねぇで冒険者になったのか。もしかして憧れだけでなった口か?」
「はぁ、そんなところですね」
どことなく後輩っぽさを感じさせる衛兵のミンティオがやっていたように、へらりとした曖昧な表情で肯定すると先輩冒険者は、あきれたように頭をふった。
「まぁ、そいつを否定はしねぇがよ。少しは下調べくらいした方がいいぜ。いつか痛い目に遭いたくなきゃな」
「はい、今後はそうします」
「返事だけは一丁前だな。が、悪いことじゃねぇ。んで、アイテムの買い取り窓口の場所だったな。それならギルド裏手にある煉瓦造りの倉庫みてぇな建物がそうだ。今の時間なら空いてんじゃねぇかな。15の鐘以降は混み出すからよ、その辺考えて行くといいぜ」
「わかりました。説明、ありがとうございます」
「おうよ。なんか困ったことあったら、また聞いてくれや」
「そのときはよろしくお願いします……先輩」
一応先刻見せてもらった冒険者証で名前はわかっていたが、名乗られてはいないので彼の名を呼ばすに、ボクは先輩と呼ぶことでお茶を濁した。するとその様子から察したらしい先輩冒険者は、名乗ってくれた。
「ん、あぁ、オレはビル・バンドッグってんだ。よろしくな」
差し出された皮の分厚くなった厳つい手を、ボクは握り返しながらなのを名乗った。
「ボクはヒイロです。ビル先輩」
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