婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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前日譚

前日譚 2 : 二度目の婚約破棄 ~聖なる豚狩り編~ 下

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 砦を堕として以降、帝国軍は聖王国領土内の侵攻を順調に進めた。

 一方でリーズレットが出陣した戦場には聖女の目撃情報があったにも拘らず、全て空振りに終わる。

 殺したい相手を殺せない。何と歯痒いのか。リーズレットのイライラが限界に達しそうな時、彼女は帝国軍の上層部に呼ばれた。

「すまない、リーズレット君。帝国軍人の将として謝罪させて頂くよ」

 そう言ったのは帝国陸軍大佐、マチフであった。カイセル髭を生やし軍服を着た中年が少しだけ頭を下げる。

「聖女を狙う君に空振りばかりさせてしまった。諜報部の情報に行き違いが発生していてな」

「そうですの」

 お前との会話に興味などない、そう言いたげなほどダルそうに椅子へ座るリーズレット。

「だが、聖女の脅威はこちらも確認している。銃弾を通さぬ魔法の壁は脅威だ。先日、王都直近の街に侵攻した部隊が1つ聖女にやられた」

 大佐の言う街の場所はリーズレットが出陣した場所から然程遠くない。なぜ、そちらの情報を寄越さなかったのかと睨みつける。

「無茶を言うな。こちらでも掴んでいない情報だった」

 睨みつけた意図が伝わったのか、大佐は首を振った。

「だが、次は王都。君の働きには期待している」

「そうですの。で、私をここに呼んだワケは? それだけではないのでしょう?」

「ああ。正式に軍へ入らんかね? 陸軍は君を歓迎する。入隊すれば即、将校待遇を約束しよう」

 ああ、やっぱりか。リーズレットは心の中でそう零した。

「お断りですわ。私、理想の旦那様を探している最中でしてよ」

「結婚相手を? 帝国男児ではダメなのかね?」

 いや、あり得ないでしょとリーズレットは即答したかった。

 帝国は女性の地位がとにかく低い。戦場で戦果を挙げるリーズレットは別物扱いだが、帝国はとにかく男尊女卑の思想が強い。

 そんな国で育った男など願い下げ。幸せな家庭など作れるはずもなく、絶対にどこかでトラブルが発生する。

 そうなった際はリーズレットが夫の額に向かって引き金を引くのは容易く想像できよう。

 帝国とは敵対したくない。だが、中にもいたくない。それが帝国側の傭兵を続けて得た答えだった。

「とにかく、お断りですわね」

 そう言い残してリーズレットは席を立つ。

 彼女が簡易宿から出て行った事を確認すると……。

「チッ。気狂いのメスブタめが」

 大佐はそう呟いて、グラスの中にあったワインを飲み干した。


-----


「よう、お嬢さん! 今日は――」

「あ"ぁ!?」

「……機嫌悪そうだな」

 武器屋の店主がリーズレットに声を掛けるも、返って来た言葉には怒りが満ちていた。

 視線だけで人をぶっ殺せそうな目つきに、店主はビクリと肩を震わせる。

「聖女の件か?」

「……そうですわ」

 やっぱりか、と店主は内心頷いた。

「その件で良いモンを持ってきた」

 お嬢様のご機嫌を治す為にも手早く本題へ。箱を開けて中身を見せる。

 箱の中には黒色の銃弾。それも、とっても大きな。

「これは?」

 破壊力の高そうな銃弾に食い付くリーズレット。大きいが、戦車用じゃない。銃で撃つのだろう、と察する。

「これは帝国で開発された聖魔法用の特殊弾だ。ほら、聖女が使う光の壁? だっけか? それを貫く弾さ」

 銃弾を弾く聖女の奇跡。その脅威は帝国内で常に認識されており、対抗戦術や対抗兵器の研究が進められていたという。

 帝国にある研究所がギリギリになって王都強襲戦に間に合わせたのがこの特殊な銃弾、アンチマジックバレット。

「光の壁を突き破る貫通力を持った特殊弾らしい。仕組みは知らん」

 アンチマジックバレットが10発。それとセットで運用する試作品の対物ライフルをリーズレットに渡した。

「効果ありますの?」

「さぁ?」

 試験はしていないのだろう。出来るはずもないが。しかし、無いよりはマシじゃねえかと店主は言った。

「それで? あちらの方は進展がありまして?」

「ああ。もう少しだ。最終確認と駒の手配中でな。王都を堕として帰って来た頃には動けるようにしておく」

「楽しみにしておりますわよ」

 店主との会話から2日後、帝国軍による聖王国王都攻略作戦が始まった。

 王都防衛となる聖王国は後が無い。

 全兵力を展開し、国家総動員制を発令して帝国を待ち構えていた。

 展開を終えた帝国軍の布陣にはリーズレットの姿が。彼女は重戦車の上でお茶をしながら、共に行く女性傭兵達と王都を見ていた。

「マム。最後にお言葉を」

 侵攻開始前に整列する女性傭兵の1人が勇気を貰おうとリーズレットに言葉を乞う。

「そうですわね……」

 カチャリ、と音を鳴らしてソーサーにカップを置いたリーズレット。

 どうしたら彼女達は奮闘してくれるだろうか、20歳になった彼女は少し悩む。だが、すぐにピコンと豆電球が頭上に浮かんだ。

 相手は神を崇拝する国だ。その国を蹂躙する自分達を悪魔と呼ぶ。ならば、自分達がしている事は1つしかない。

「地獄を創りなさい。貴方達、淑女の手で地獄を創造なさい」

 そう言って、淑女らしく華が咲き誇るような笑顔を浮かべた。

「「「 イエス! マム! 」」」

 女性傭兵達の心に炎が宿ったところで、戦線は動き出す。帝国の戦車隊が前進を始めた。

「私達も参りますわよ!」

 リーズレットは戦車に乗り込み、女性傭兵達は戦車を盾にして続く。

 すぐに両軍の激突は始まった。

 聖王国は魔法を。帝国は戦車砲を。

 戦車のアハトアハトが王都の壁を削り取る。やはり帝国有利かと思われたこの状況、序盤から変化が起きた。

 聖王国は帝国の戦車に対して有効的な手段を持たないと思いきや、まずは土魔法の即席壁で戦車の足を止めた。そして、歩兵達が決死の突撃をし始めたのだ。

「聖王国に栄光あれええええ!!」

 そう叫びながら銃弾と砲弾が降り注ぐ戦場を駆ける聖王国兵。手には瓶のようなモノが握られていた。

 戦車に接近し、運よく機関銃の掃射に当たらなかった聖王国兵は戦車に飛びついた。そして、戦車の上で爆発する。

 握られていた瓶の中身は魔法で作られた高火力の爆弾だった。魔法で装甲を貫けない。しかし、何度も爆発を食らえば戦車の装甲といえど無事では済まない。
 
 まさに捨て身の戦法。愛国心の塊となった聖王国兵達は己の命と引き換えに戦車を戦闘不能にさせた。

 一台、また一台と減っていく戦車隊。だが、愛国者達を的確に打ち破って前進を続ける戦車がいた。

「ファッキュゥゥゥゥ!! ベイビィィィ!!」

 重戦車故に足は遅い。だが、前から来る聖王国兵を的確に機関銃で射抜くリーズレット。

 その間にユリィは運転を代わってもらい、砲手席に座ってアハトアハトで分厚い門を攻撃し続ける。

 後に続く女性傭兵達も迫り来る聖王国兵を撃って戦車を援護。誰一人として死を恐れていない。

 他の戦車隊と軍人も彼女らに続く。地獄を創りに向かう、淑女達の後を。

「ユリィ! 豚小屋のドアを早く壊しなさい!」

「はい、お嬢様! ファイヤァー、ですぅ!」

 ユリィによる何度目かの砲撃。遂に王都の門が壊れた。 

「王都の中に突っ込みますわよ!」

「はいですぅ!」

 ユリィは運転席にいた女性傭兵と席を変え、キャタピラで聖王国兵の死体を踏み潰しながら前進を開始。

「門が落ちた! 突っ込めええええッ!!」

「彼女達を援護しろ! ゴーゴーゴー!」
 
 王都の中に突っ込んだリーズレット達は戦線を下げつつあった聖王国兵と応戦しながら、王都の中でデタラメに砲と機関銃を撃ちまくった。

 とにかく壊す。美しかった街並みも、聖王国の象徴となっている神の像も。

 壊して、壊して、壊しまくる。

「ヒャッハァァァ!! ファッキン、ピィィィッグ!!」

 聖王国民を豚と罵り、機関銃を撃ちまくりながら前進。完全に帝国軍が王都内に侵入を果たし、王都の半分が帝国の手に墜ちた。

「ユリィ、戦車で援護なさい!」

「はいですぅ!」

 リーズレットは軽機関銃を手に持ち、王都中央より奥にあった広場で応戦。敵兵を狩りまくった。

 キルレコードを更新しまくっていると、奥から1人の女が現れる。白い服を着たシスター。戦闘服を身に纏った聖女であった。

「ようやく再会できましたわね。ビィィッチ?」

 淑女らしく華のように笑うリーズレット。

「神の名のもとに、貴方を殺します」

 神の名と正義を掲げる聖女。

 死体が転がる広場の中央で、淑女と聖女が相対する。どちらも両軍の士気を支える柱。この勝負、死んだ方の軍勢が不利になるのは確実。

 無粋な横槍は無用。帝国と聖王国、両国の主役がぶつかり合うのを両軍は固唾を呑んで見守り始めた。

「ファックですわよォォォ!」

 最初に足を動かしたのはリーズレットだった。

 軽機関銃から高速で吐き出された弾が聖女へ迫る。だが、聖女は魔法の壁で全てを防ぐ。

「相変わらず、下品な人ですね!」

 防ぎ、片手には炎の弾。殺しに来る銃弾を防ぎながらも炎の弾をリーズレットに向けて放った。

「チッ! 厄介ですわね!」

 リーズレットも軽快なステップで炎の弾を躱す。

 躱して撃つ。相手も防いで撃つ。これの繰り返しとなって状況は拮抗する。

 何度かの撃ち合いが終わるとリーズレットはもう一度舌打ちした。やはり通常弾は効かない。互角に見えるが状況は彼女が圧倒的に不利だ。

 戦車の影に隠れて炎の弾をやり過ごす。こちらの攻撃は防がれ、向こうの攻撃は躱すしか手段がない。

「10発しかありませんわ……」

 戦車の横に置いておいた対物ライフルに目をやった。

 対抗手段として用意しているアンチマジックバレットは10発。しかも有効なのかは不明。

「…………」

 リーズレットは対物ライフルを手に取る。

 リスキーだ。果たしてこの武器を信用していいのか。

「いいえ、私はあのビッチを絶対殺すと決めましたわ」 

 リーズレットは銃にキスをした。

「パァァティィィタァァイムッ!!」

 軽機関銃を捨てて、クッソ重い対物ライフルを構えながら戦車の影から飛び出すリーズレット。

 細い体をドレスで隠した彼女のどこにそんなパワーが秘められているのだろうか。初見の帝国軍人が見たら「ファッキンクリーチャーッ!」「オーマイガーッ!」と叫ぶに違いない。

 ドガン、と銃声を聞くだけで肩が外れそうなほどの轟音。1発目は外れる。だが、構わない。試射も兼ねた一撃だ。

 しかし、反動が大きすぎる。基地で銃の試射として通常弾を撃った時よりも。

 リーズレットの才能をもってしても、反動制御が出来ない。どこぞの淑女のようなじゃじゃ馬銃……と言いたいところだが、当然だ。

 特殊な構造を持ったアンチマジックバレットに加えて、この試作銃自体が立射を想定していない作りになっていた。

 通常ならばバイポットを立てて使うか、伏せ撃ちするのがベター。遠く離れた場所から狙撃する事を念頭・想定して作られた試作銃であった。

 手に持って動きながら撃っている時点で命中率に期待しちゃいけない。

 だが、そんなことはリーズレットにとってクソ食らえ。研究者や製作者の意図などクソ拭き紙以下、戦場で使う者が使いたいように使う。それが淑女の考え。

 リーズレットは前に走る。聖なる盾を展開しながら炎の弾を吐き出すビッチの攻撃を躱しながら。

 限られた弾数の中で無駄撃ちはできない。今すぐ撃ちたい気持ちをグッと抑えて確実性を取る。20歳になって大人になった証拠である。

 対峙する距離は50メートル。1撃目を躱すが、ドレスの裾に掠って焼き焦げた。2撃目も躱す。だが、アイデンティティであるドリル巻髪の先に炎が掠ってチリッと音を発した。

 それでも足を止めない。炎の弾が淑女の肌をちょっぴり焦がそうとも。

 ただ、ひたすらに前進。当たる距離まで前進。残り10メートルで腰だめで構える。

『当たらなければ、接射すれば良いじゃない』

 神と聖女を敬愛してやまない聖なる豚共の死体でクソ山を築き上げたマリー・アントワネットがそこにいた。

 そして、遂に見つけた。銃口と壁の距離はゼロへ。構えた対物ライフルの銃口がコツンと魔法の壁に当たって少しだけ押し返される。

 淑女は笑った。華のように。

「キィス、マァイ、アァァスッ!!」

 ドガン。ゼロ距離で発射された黒い銃弾の先端が魔法の壁に食い込む。透明だった壁に亀裂が入って可視化した。

 銃弾は回転しながらガリガリと表面を削るように魔法の壁から離れない。

 防げると思ったのか、聖女は銃弾が当たった瞬間に目を見開いて一瞬固まる。だが、それが命取りだった。

 魔法の壁を突き破った銃弾は聖女の右肩へ命中。とんでもない破壊力を持つ銃弾は一撃で聖女の肩を破壊して、腕を木っ端みじんに吹き飛ばす。

 しかも、聖なるメスブタの腕を木っ端みじんにしただけでは物足りず、黒い銃弾は弾道の軌跡を作りながら進む先にある建物を止まるまで破壊していった。

「あああああッ!!」

 壊れた肩から大量の血が噴き出す。聖女は地面に転がりながら、手で抑えて泣き叫んだ。

「ヒューッ! その鳴き声でいつも神様を誘ってますのォ?」

 泣き叫ぶ聖女を見下ろしながら、リーズレットは銃口を聖女の胸に向けた。

「あ、ガ……じごくへ……おちろッ! 悪魔めッ!」

「おーっほっほっほ! 悪魔、上等ですわねェ! 神様に股を開きながら他の男のおフェラ豚になっているクソビッチよりもマシでしてよォ?」

 ドガン。

 聖女は淑女の放った銃弾で胸を貫かれて死んだ。

「ファッキュー、ビィィッチ!」

 リーズレットは中指を立てながら聖女の死体に唾を吐きかける。

 一部始終を見ていた聖王国兵からは『聖女様が……』と失意の声が漏れた。

「ハッ。聖王国男子はどいつもフニャチン揃いですわね」

 対物ライフルを肩に担ぎながらリーズレットは戦車に戻る。

 その後は帝国軍が王都を制圧。王族は処刑される事となり、その場にいたリーズレットは数か月ぶりに王子と対面した。

「リーズレット……」

 縄で縛られ、膝をついて並べられた王族達の中で「助けてくれ」と懇願するような表情で王子は彼女を見上げた。

「うーん? こんな顔でしたかしら? 豚面になってますわね? 神のケツにキスしているような豚の顔ですわ」

 パン、と容赦なく額に銃弾をぶち込む。

「私には相応しくありませんことよ?」

 そう言って、リーズレットはハンドガンの硝煙を息で拭き消した。


-----


 終戦から3日後。帝国帝都の西にある帝国貴族街にある屋敷の中で食事を楽しむ2人の男性がいた。

「いやはや。あの女はこちらの思惑通りに動いてくれましたね」

「はっはっは。全くだ。凶暴な女であるが、使いこなせば良い武器になる」

 分厚いステーキに齧り付くのは帝国陸軍大佐のマチフと軍部を優遇する議員であった。

「これで聖王国の持つ金鉱は我等の物。いやぁ、老後の蓄えには困らなさそうだ」

「ふふ。確かに。引退したら別荘でも買って、釣りを楽しみながら暮らすのもいい」

 2人はワインの入ったグラスを掲げて輝かしい未来に乾杯する。

「しかし、あの女はどうするのです? 軍に引き込めなかったのでしょう? 用済みにするには惜しい気がしますが」

「ああ、問題ない。常に監視を置いている。別の国に行かれても、今回のように情報を流して追放させれば良い。敵国にいてくれれば万々歳だな」

 リーズレットが帝国と繋がっている。そう情報を流したのは陸軍大佐のマチフであった。

 彼は聖王国に情報を流してリーズレットに復讐の炎を灯らせた。

 結果は最高だった。殺しの才能を持つ女が最前線で暴れ、軍の士気を高める。今回のように敵国を堕としてくれれば最高点。

 戦死しても兵士達の感情を煽れる。勇敢な女兵士が死んだ、と。

「ふふ。次はどの国を堕とそうか」

 マチフがそう言いながら、視線を皿の上にあるステーキへ向けた時。パキッと窓ガラスが割れる音、パチンと風船が弾けるような音がした。

 それと同時に、マチフの顔に何かが飛び散って付着した。

「なんだ!?」

 不快感を顕わにしながら手で顔を拭う。そして、目を開けると―― 一緒に食事をしていた議員の頭がミートパイの中身のようになって散乱していた。

「な、ヒ、なん……!」

 言葉にならない恐怖を感じて、顔を拭った己の手を見る。そこには真っ赤な血で染まっているじゃないか。

 次の瞬間には庭に続くガラスのドアが蹴り破られて、見覚えのある人物が姿を現す。

「ご機嫌麗しゅう、大佐ァ?」

 サプレッサー付きのサブマシンガンを構えながら入って来たのはリーズレット。彼女はニコリと笑いながらマチフに銃口を向けた。

「き、貴様ッ!」

「まさか、貴方が聖なる豚と繋がっていたとは思いませんでしたわよ?」

「くッ! あぎッ!?」

 マチフは銃を抜こうとするが、腕を動かした瞬間に肩を撃ち抜かれて椅子から転がり落ちる。

「私の事を随分とお調べになったみたいですわね? 過去をほじくり返して、婚約破棄された事を知って、利用したのでしょう?」

「な、なぜ、その事を……。どこの誰から……」

「んふふ」

 マチフの問いにリーズレットはニンマリと笑うだけで答えない。彼女はマチフの顔を見たまま銃口を彼の足に向けて一撃。

「ぎゃああああッ!」

「まぁまぁまぁまぁ! 聖なる豚に劣らない、良い声で鳴きますわね!」

 リーズレットは履いているハイヒールで撃ち抜いた足をグリグリと踏んだ。

「貴様……! 私にこんな事をしてどうなるか……! 帝国を敵に回す気か!?」

 マチフはそう吠えるが、リーズレットはニンマリと笑って首を振る。

「そうはなりませんわ。この行動は皇帝から許可を得ましたのよ? 城にアハトアハトを向けながらお話したらすぐに頷いてくれましたわ」

 アテが外れたマチフは今度こそ絶望で顔を歪めた。

 まさか自分が国に切り捨てられたとは思ってもいなかった。それも、1人の女傭兵と天秤にかけられた結果の末に。

「私が嫌いな事も調べたのではなくて? 私、人生を無茶苦茶にされるのも嫌いですけど、利用されるのはもっと嫌いでしてよ?」

 パスッ、パスッ、と股間に向かって銃弾を2発追加で撃ち込んだ。

 もう虫の息となったマチフに、リーズレットは中指を立てながら額に銃口を押し付ける。

「次は豚よりも上等な生物になれるよう、祈っておきますわね?」

 パスッ。

 額にケツの穴を開けられたマチフは死んだ。これにてリーズレットの2度目となる復讐劇は幕を閉じる。

 ぶち破ったガラスドアから庭に出ると、戦場から共に帰還した女性傭兵達がリーズレットを待って整列していた。

 女性傭兵達に出迎えられたリーズレットの傍に、別口の用件で現れた軍人の男が近づいて口を開く。

「マム。帝城にて皇帝陛下、ならびにアドラ国王様がお待ちです!」

「はぁ?」

「夜会の誘いと、改めて謝罪をしたいと申しておりました!」

 やや緊張気味である軍人の男が直立不動でそう言うと、リーズレットは可愛らしく頬に指を当てながら「んー」と悩む。

 きっと自分を帝国に引き込もうとしているのだろう。同盟である王国の主であるアドラもそうなれば安泰だ。

 もしくは戦果を挙げた立役者である自分を政治利用しようとしているか。どちらにせよ、夜会の誘いと謝罪で釣っておきながら腹の中には別の考えがあるに違いない。

 悩んだ末に、彼女は――

「クソ食らえと言っておいて下さいまし」

 中指を立てながら咲き誇る華のような笑顔を浮かべて告げる。そして戦争が終わっても尚、リーズレットに付き従う女性傭兵達の元へと歩み寄った。

「マム、次はどちらに?」

「そうですわね。まずは休暇を取りましょう? 国を堕とした後のリフレッシュは格別でしてよ?」

 南に行ってビーチで寛ぐのも良いですわね。 

 そう言いながらリーズレットは侍女のユリィ、新たに仲間へ加わった女性傭兵達を引き連れて帝都を去って行く。

 これは世界最強の傭兵団――『鉄の淑女』アイアン・レディが誕生した一週間前の出来事であった。
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