婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

文字の大きさ
14 / 134
本編

7 憧れ

しおりを挟む

 傭兵団を全滅させたリーズレットは魔導車の整備を町民に行ってもらい、食料と水を積んで町から出発することにした。

「リーズレットさん、もう行っちゃうんですか?」

 ココが寂しそうに言うと、リーズレットは傭兵から奪ったホルスターを胴に装着。

 2丁の魔導銃とマガジンを収納して魔導車のドアを開けた。

「ええ。私、行くところがございましてよ」

 リーズレットは旅の途中。いくらに戻った彼女らに乞われようとも、ここで留まるわけにはいかない。

「どちらまで行くのですか?」

「南にある遺跡ですわ」

 ココの問いに答えると、町で一番歳を取った老人が言った。

「遺跡……。悪魔の遺跡ですか?」

「悪魔の遺跡?」

 なんだそれ、とリーズレットが問うと老人は頷きを返した。

「なんでも前時代に国を荒らした悪魔の住処であるとか、もしくは墓ではないかと……。色々な噂が囁かれている場所ですぞ」

「まぁ。恐ろしい噂ですわね。誰か囁き始めた噂かは知りませんが、見つけ次第必ず殺しますわよ」

「え?」

 リーズレットは笑顔で言った。老人は幻聴だろうと思った。

「王国軍も随分前から遺跡を調査しているとか」

「調査?」

「ええ。前時代の遺跡からは悪魔が使用していた強力な武器が手に入ると言われております。その力は世界を変える、と」

 世界を変える。確かにそうかもしれないとリーズレットは内心頷いた。

 南にある遺跡はアイアン・レディが拠点として使っていたバンカーの可能性が高い。

 保護した転生者達が異世界知識を駆使して開発した、独自技術を有するアイアン・レディの装備は当時の兵器でも頭2つは抜けていた。

 一度崩壊し、技術力が失われた世界で手に入ったとしたら大変な事になる。

 銃器ならばまだマシだ。

 だが、機動戦車などの機甲兵器は現代技術にそぐわない、完全なるオーバースペック。劣化でもコピーできれば現代において最強の兵器となるだろう。

 現代の秀でた技術と融和させればもっと強くなる可能性もある。

 それらをもしも強奪されたとしたら。

「許しませんわよ」

「ヒィ!?」

 老人が腰を抜かすほど、リーズレットは殺意を滲ませながら奥歯をガリッと噛み締めた。

 王国が調査している場所が本当にアイアン・レディの拠点だとしたら。

 中身は彼女の物だ。いや、彼女達――アイアン・レディの所有物だ。

 立派に育った淑女や淑女見習い達が、リーズレットが愛すべき子供達が創り上げた作品だ。

 それをどこぞのファッキンマザーファッカー共に奪われるなど……考えただけでも腹が煮えくり返りそうになった。

「王国は他にも遺跡の中身を手に入れたと思いまして?」

 ローズレットの記憶の中に王国が遺跡に対して行った軍事行動の知識や記憶は無い。恐らく、ローズレットのような女性には知らされない部類の話なのだろう。

「え、ええ……。数十年前に一ヵ所を調査して中身を得たと国を挙げて騒ぎになった事が……」

 こちらの情報も頭の中にはない。ローズレットが生まれる前の話か。

 さすがに国中が話題一色になれば、男尊女卑思想に染まる王都の中でも気付くはず。

「そうですの」

 もしも、王国が既にアイアン・レディの拠点から作品を盗っていたとしたら。

 ――滅ぼすに値する。

「貴重な情報、ありがとうございますわ。遺跡までの最短ルートが分かる地図などはございまして?」

「あ、用意しますよ!」

 そう言って、ココは雑貨店の中に入って行った。

(これは急いだ方が良さそうですわね)

 のんびりしている暇は無さそうだ。

 幸いにも魔導車を動かす魔石は確保できたので、この先は寄り道せずに遺跡まで向かおうとリーズレットは心に決めた。

「持ってきました!」

 ココが地図を持って走って来た。親切にも町の場所から遺跡のある場所に印を付けて、使用する街道も色を塗ってくれたようだ。

「助かりますわ」

「いえ、これくらいしか……」

 笑顔で地図を受け取ったリーズレットにココは苦笑いを浮かべた。

 まだ恩を返せていない、と感じるココはリーズレットに告げる。

「私、強くなります。リーズレットさんみたいに、強く」

 もう成されるがままの弱い女性はいなかった。強い意思を心に秘める淑女見習いが誕生したのだ。

「そう。頑張りなさい」

 リーズレットはココと握手を交わして魔導車に乗り込んだ。

「サリィ、行きますわよ」

「はい!」

 エンジンをスタートさせて、町民に手を振られながら前進。逆さ吊りにされた豚共が並ぶ町の入り口を潜って去って行った。

「強い女性だった」

 去って行く魔導車を見送りながら老人は小さく呟いた。

「うん。あの人は……世界を変えるのかも。ううん、きっと世界を変える人だよ」

 ココはリーズレットから受け取った銃を胸に抱きながら決意する。

 きっと彼女は、いつか世界を変える。世界を変える為に戦うだろう。

 その時は、自分も共に戦おうと。

 この時代で初めて、淑女への憧れが芽吹くのであった。

 
-----


 リーズレットが去って行く光景を見ていたのは町民だけではなかった。

 ホープタウンの近くにあるハゲ山の上から、頭にはブラウンの帽子、鼻から下は迷彩柄のバンダナで顔を隠しつつ、双眼鏡で一部始終を見ていた者がいた。

「あの人は……」
 
 観察者が双眼鏡で追うのはリーズレットの乗る魔導車だ。

 女性でありながら男の傭兵に立ち向かい、いとも簡単に殺す様を1日前に見た。

 目撃したのは完全に偶然だった。ホープタウンで補給をしようとしたが、傭兵団が町へ向かうのを見つけて隠れたのが始まり。

 町が蹂躙されるんじゃないかと、このハゲ山に登ってカモフラージュ用のマントを全身に被せながら観察を開始して――事態を目撃した。

 観察者は双眼鏡の先で繰り広げられる光景を見て目を奪われた。

 ドレスのスカートを風にたなびかせ、綺麗なプラチナブロンドの髪が流れるように舞う。

 的確なショット。理想的な距離感。踏み込みとステップの力強さ。

 返り血すらも浴びず、もはや芸術と言ってよいほどの手際。

 観察者は赤いドレスの女性に心奪われた。だからこそ、向かう先を知りたがる。

「南に走って行く……」

 観察者の声質は女性のモノだった。地図を広げ、南に何があるかを確認する。

「遺跡?」

 南に町はない。果てまで行けば海があるが、海まで行ってからの目的が浮かばない。

 それならば途中にある遺跡を目指していると考えるのが妥当だろう。

 観察者は通信機を取り出して仲間に連絡を入れた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

処理中です...