婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

13 レジスタンス

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「お嬢様。これからどうするおつもりですか?」

 ロビィに赤いドレスも調整してもらい、休憩も十分に終えた頃合いにサリィが問う。

「そうですわね。まずは……」

 リーズレットは可愛らしく頬に指を当ててうーんと悩む。

 アイアン・レディの別拠点で装備の回収もしたい。拠点を巡れば子供達がどうなったかもヒントを得られるかもしれない。

 理想の旦那様も見つけたい。せっかくプレゼントされた第二の人生では夢を叶えたい。

 王国が過去に見つけたというレリックも気になる。

 魔法銃の元となった技術のようだが、それがアイアン・レディの物であったら奪い返したい。あと、王国をぶっ潰す。

「どうしましょう?」

 やる事はたくさんだ。優先順位はどれも高い。どれを優先するか悩む。

『レディ、まずは移動用の車をご用意しましょうか?』

 どこに行くにしても足は必要。ここまで乗って来た魔導車は見事に木っ端みじんになってしまった。

 答えは先送りにしつつ、ロビィの提案に頷いた。

 武器庫の隣にあるやや狭い格納庫に移動した。ここは初期に作られた拠点なので、その頃はまだアイアン・レディに機動兵器が充実していなかった。

 戦車が2台格納できる程度のスペースしかない。当時はユリィに購入した帝国製の戦車を格納していただけだった事を思い出すと、懐かしさでリーズレットの胸がきゅっとなった。

『こちらです、レディ』

 格納庫にポツンと1台だけ置かれていたのはキャンピングカーのような車だった。

 ロビィに紹介されて車体後方にあったドアを開けると中には小さなバーとカウンター席があり、小さな魔導具が乗っかっていた。

 他にも調理器具や小さなコンロなども備わっているが、やはり注目したのはバーカウンターの傍にある小さな魔道具だ。

「これは弾の製造機ですの?」

『ウィ、レディ。移動しながら銃と銃弾の補給を可能にした魔導車です』

 乗り込んだロビィがカウンターの中に入って、ハァイと腕を挙げた。これで移動しながら銃弾を作れるならば、弾の補給は気にしなくてよくなる。

 よくなるが、リーズレットはそれとは別に気になる事があった。

「キャンピングカーのようですが、寝るスペースはどこにありますの?」

『運転席と助手席で寝るか、カウンター前のスペースに寝台がございます』

 ロビィはカウンターから出て、真正面にあった板状の出っ張りを引っ張った。すると車体側面に可動式の寝台が1つ。

 銃弾を製造できるのはありがたいが……。

 狭い。この一言に尽きる。

『しかし、パワーは最高です! 魔石1つで全ての機能が使えますヨ! 車体の側面にはロケットランチャーが2門、正面にはドアノッカーが装備してございます!』

「これを使いますわよ!」

 リーズレットは搭載装備を聞いて即決した。

 ロケットランチャーは淑女にとってお馴染みでご機嫌な武器である。

 ドアノッカーとは鋼鉄製の杭だ。ドアをコンコンとノックするように、車体で体当たりして壁をぶっ壊す物理兵器である。

 搭載装備がリーズレット好みの物である理由はフロウレンスが用意したからだろう。さすがレディ・マムを熟知した女性だ。

「ロビィ、物資を積みなさい! まずは外に出ますわよ!」

『ウィ、レディ』


-----


 出来る限りの物資を積んだリーズレット達は魔導車に乗り込んだ。

 運転席にはリーズレット。助手席にはサリィ。後ろにはミニバーのカウンターで整理整頓をするロビィ。

 リーズレットは格納庫の機能を使う為のリモコンを取り出してスイッチを押す。

 格納庫の天井が開いていき、車が駐車されていたスペースが上昇して地上へと向かう。完全に上昇し終えると、倉庫の中だった。

 もう一度リモコンを押すと倉庫のドアがあった場所がゆっくりと地面に沈んでいく。

 開いた先には輝かしい光があった。どうやらバンカーの外に輝く太陽の光が差し込んできているようだ。逆光で先が見えないほど眩しい。

 だが、リーズレットは思った。新しいスタートを踏み出すには丁度良いじゃないか。まるで太陽が自分達を祝福しているようじゃないか、と。

 眩しい陽の光を浴びて目を細めた彼女はキーを捻って魔導車のエンジンをスタートさせた。

「出発しますわよ!」

「はいですぅ!」

 輝かしい明日に向かって出発進行!

 リーズレットはアクセルを踏んで発進。ブゥン、とエンジンを吹かして光の中へと突っ込んでいく。

 倉庫兼車庫にもなっている場所から発進してバンカーの外に出る瞬間――逆光で照らされる道の先から1人、人間がバンカーの中に飛び込んで来た。

「ワッタ、ファック!? ホォォリィシット!!」

 運転席のリーズレットには迫る車体に対して口を開けて驚くやや幼い顔が見えた。驚きのあまり体が硬直して動けない様子。

 王国兵らしき人間じゃないように思えた。リーズレットは慌ててハンドルを切ってブレーキを踏んで衝突を回避。

 何とか立っていた人物をミンチにせず、車体も傷つけずに停車する事が出来た。

 リーズレットはハンドルに額を付けながらフゥと息を吐く。

 なんてことだ。新しいスタートはさっそくクソがついた。一言文句を言うか、相手が敵であればぶっ殺さなきゃ気が済まない。

 リーズレットはドアを開けて外に出る。

「貴方、死にたいんですの!?」

 リーズレットは鋭い目つきで相手を睨み、叫びながらアイアン・レディを抜くとまだ棒立ちしている人物へ銃口を向ける。

「え、あ、その……違います! 違います!」

 相手はまだ呆けていたようだが、さすがに銃を見て正気を取り戻したのだろう。慌てて両手を挙げて無害であると叫んだ。

「貴方に用があって来たんです! どうか銃を降ろして下さい!」

 相手の風貌は頭にはブラウンの帽子、首には迷彩柄のバンダナ、服は上下ベージュ色の軍用ズボンとジャケット。

 ジャケットの下は灰色のタンクトップのような物を着用していて、胸が膨らんでいる事から女性だというのが読み取れた。

 だが、リーズレットはしっかりと見ている。彼女の腰に収められた魔法銃を。

 武器を持っている見知らぬ相手に銃を降ろせと言われて素直に従う程、リーズレットは甘くない。例えそれが王国兵とは思えない、幼い顔をした少女だったとしても。

 演技しながら背中を狙う輩など腐る程見てきたからだ。撃たれて死んだアホウも同じ数くらい見た。

「まずは、その腰にぶら下げているファッキンガンを地面に置きなさい!」

「は、はい!」

 少女は急いで魔法銃を地面に置いた。

「次はこちらに銃を蹴ってお寄越しなさい!」

「はい!」

 リーズレットは少女が蹴った魔法銃を足で受け止め、横に蹴飛ばした。

「貴方、女性でしょう。王国兵ではございませんわね? 私に用があるとは何事ですの?」

 銃を奪ったとしてもまだ少女には奥の手が残されているかもしれない。銃を向けたままリーズレットは問う。

「わ、私はレジスタンスの一員なんです! 貴方の戦闘を見ていました!」

 少女はホープタウンからリーズレットの戦闘を見ていた事、後を追って来た事、到着した時にバンカー前で戦っていた姿も目撃した事を素直に明かす。

「貴方の戦闘はとてもすごかった。まるで踊っているみたいで、優雅で……。それに男にも負けない、気高く立ち向かっていく姿に目を奪われてしまって……!」

「なかなか良い賞賛ですことよ」

 心地よいですわ、とリーズレットは銃を降ろして胸を張った。

「お願いがあります! どうか、私達のレジスタンスに加わってくれませんか!?」

 少女は貴方がいれば百人力です! と言いながら縋る様な目でリーズレットを見た。

「レジスタンス? 何を目的にしていますの?」

「王族を倒すこと。そして、男尊女卑思想の撤廃です。このような無茶苦茶な法律を作る国を変えようと私達は王国軍と戦っています」

 なるほど、とリーズレットは頷いた。

 嘗てこの地が帝国だった頃と同じだ。あの時もレジスタンスが男尊女卑思想を潰そうと動いていた。

 男尊女卑という思想は危険だ。これが蔓延するとリーズレットの目指す素敵な結婚生活が叶わない。

 前回はフロウレンスの件もあったので革命に参加したが……。

「最終的には王都に攻め込むつもりでして?」

「はい!」

 リーズレットは少女にその場で待つよう言って、車の後部を開けながらロビィに問う。
   
「ロビィ。帝国内にあったアイアン・レディの拠点は覚えていまして?」

『ウィ。ですが、レディがお亡くなりになって以降は組織が縮小したため、いくつか閉鎖になりました。私がバンカーで眠っている以降も変化はあったはずです』

「つまり?」

『正確な数は把握しておりません』

 ロビィはそう言いながら肩を竦めた。

「王国が手に入れた魔法銃の原型がウチの所有物なのかは不明ですわね」

 世界に散らばる拠点を早く調べるべきだとは思う。だが、ここで王国が手に入れた遺跡の情報も掴んでおきたい。

 自分達の物であればすぐ取返したい。クソまみれの顔で今も触られているかもしれない、と思うと虫唾が走る。

 ――さっさと王都を潰そう。

 リーズレットの思考はそこに行きついた。

 彼女は少女の前に向かい、告げた。

「よろしい。レジスタンスのアジトに案内なさい」

「本当ですか!?」

「ただし、私はあくまでも自分の目的の為に戦いますわよ。貴方達の為ではありません」

「それでも構いません! 一度、うちのリーダーと話してみて下さい!」

 まずはファーストステップ。理由はどうあれ、少女は拒絶されなかった事にホッとして笑顔を浮かべる。

 こうしてリーズレット達は少女が運転する魔導車に先導されながらレジスタンスのアジトへと向かうのであった。
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