婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

12 侍女はいつも隣に

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 王国兵を殲滅したリーズレットは地下拠点の中に戻った。

 倉庫側から中に入り、階段を降って武器庫に入る扉付近まで近づくと向こう側から声が聞こえた。

「ロビィさんはどんな飲み物でも作れるのですかぁ?」

『ウィ、チーフ。材料があればデータ登録されている物は全て製作可能です。製作キットも私を創造した素晴らしき淑女の方々がご用意して下さりました』

「わぁ~」

 どうやらロビィとサリィが仲良く話し合っているようだ。

 初対面同士であるが、もう打ち解けているのはサリィの人柄か。それともロビィにプログラムされた社交性のおかげか。

 どちらにせよ、仲が良いのは良い事だとリーズレットは口角を上げて笑う。

「ただいま戻りましてよ」

「あ、お嬢様!」

 武器庫に戻るとカウンターに座ってロビィの淹れたお茶を楽しむサリィの姿があった。

 リーズレットもコートを脱いで、サリィの隣に座る。

 スッとロビィが出したのは前世でリーズレットが好んで飲んでいた紅茶。まだ茶葉があった事に喜びながら一口ゆっくりと味わう。

 紅茶を飲んで戦闘の余韻が抜け、落ち着いたところでリーズレットはサリィに全てを語る事にした。

「サリィ、私は……。私の人生はこれで2度目なんですのよ」

 自分には1度目の人生があった事。これは2度目の人生である事。過去に傭兵団を創り、信頼できる仲間がいた事。

 結婚したかったという夢も語った。

 信頼していた仲間はもういないだろう、という事も語った。

 今の人生は彼女達がくれたギフトである事も全て語った。

 リーズレットが語っている最中、自然と寂しさを滲ませてしまっていた。もう会えない仲間達の思い出を語るのは少々辛い。

「…………」

 聞いている途中のサリィは顔を時より伏せてじんわりと理解を深めながら、何かを考えているようだった。

 話が終わると、サリィは顔をあげてリーズレットの瞳をじっと見つめる。そして、彼女は言った。

「お嬢様。私がいます。お嬢様は寂しいかもしれません。でも、2度目の人生では私がずっと傍にいます。私もお嬢様の侍女として相応しくなれるよう、もっと強くなります!」

 真剣な顔で、リーズレットの手を取ってサリィはそう言った。

「私はもうお嬢様にご心配をお掛けしません。寂しい思いもさせません。私だけは何があってもずっと隣にいますから」

 長い付き合いである侍女は見抜いていたのだ。主が抱える寂しさに。

 だからこそ、彼女は言った。

「だから一緒に叶えましょう! お嬢様の夢見た結婚生活を! 探しましょう! お嬢様が愛した皆さんの軌跡を!」

 まるでヒマワリのように笑ったサリィはぎゅっとリーズレットの手を握る。

 彼女の笑顔は嘗て一緒にいた侍女の笑顔と重なった。

 前と一緒だ。今回はサリィがいる。サリィの持つ手の温もりが伝わって、リーズレットの胸の内がジワリと温かくなった。

「サリィ、私、嬉しいですわ……」

「お嬢様……!」

 見つめ合う2人の間にキラキラと白百合が舞った。

「そうですわね! あの子達がくれたギフトを大事にしなければなりませんわ。私は今度こそ結婚しますわよ!」

「はいですぅ!」

「理想の旦那様を探しながら、あの子達がどうなったかも探りますわよ!」

「はいですぅ! お嬢様ぁ!」

 アハハ、ウフフ、と笑い合う2人の背後にはピンク色の背景と満開の白百合がいくつも咲いた。

『レディ、新しきチーフがお召しになるピッタリな服を用意しました』

 ロビィが持ってきたのは新しいメイド服。

 しかも、それは――  

「ユリィのですわね」

『ウィ、レディ。サイズを調整しておきました』

 できるバーテンダーは体を一目見ただけでフルサイズを計る事ができるのだ。とんでもねえ異世界技術。便利であると同時にゴーレム故の正確な計測は残酷さも兼ね備える。

 それは置いておき、前世で侍女だったユリィが着ていた戦闘用でもあるメイド服を手渡されたサリィが袖を通した。

 しっかりと尻尾を外に出す部分まで調整されており、キュートな灰狼族の尻尾がふりふりと揺れる。

 メイド服のフォルムとしてはロングスカートの正統派。上下黒に白いエプロンのコントラスト。これぞ『THE・メイド』である。

「わぁ~」

 軽量でありながら銃弾すらも通さない防御力を持つメイド服を着たサリィはクルリと回った。ロングスカートがヒラヒラと舞う。

『こちらは耐衝撃性に優れておりますので、レディのお傍にいても十分に仕事をこなせるでしょう』

「ありがとうございます! ……この靴も硬いですぅ」

 サリィがロビィにお礼を言ったあと、コンコンと靴の先を叩いた。

 次に履いている靴も特別製。鉄板と魔導具が仕込まれた靴は対象を蹴った際にインパクトを増幅させる機能付き。

『お掃除セットは残念ながらここにはございませんでした』

「そう。別の拠点にあるのかしら?」

 メイドお掃除セットとはユリィが愛用していた道具一式だ。部屋の掃除から豚の血痕を落す専用の機材までが揃った万能セットである。

 勿論、忘れちゃいけないのがもお掃除できる点だろう。

 リーズレットはこれらを回収するのも忘れちゃいけないと心のメモに書き込んだ。

 今の世界にはオーバーテクノロジーすぎる。お掃除セットで世界がやばい。

「お嬢様、ありがとうございますぅ!」

「よくってよ。これで貴方も立派なチーフメイド(侍女長、メイド長)ですわね」

「私、がんばります! お嬢様みたいにいっぱいヤっちまいますぅ!」

 彼女は胸の前で握り拳を作りながらムフンと意気込んだ。

「まぁ。サリィったら」

 アハハ、ウフフ、と笑う2人の間にたくさんの白百合が咲いた。
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