婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

17 ロイヤル・ファッキンボム

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 解放されたリーリャとレジスタンスの仲間達はリーズレットと軽い自己紹介を終えてから第二王子を連れて外に出た。

 そこに広がる光景に口をあんぐりと開けて、彼女達はナンシーにそっと呟く。

「ねえ、地上が地獄みたいだよ」

 砦ににょきにょき生えていた背の高い監視塔は全て破壊され、宿舎や指令室などの建造物もクソの山に変わっている。

 そこら中に王国兵の死体が転がり、瓦礫の中から飛び出た王国兵の腕らしき物などが見える状況を地獄と言わずとして何と表現すればいいのか。

「地下にいなかったら死んでたんじゃ……」

 地下牢にいた事を幸運だったとすら言うリーリャ達。

 一体どんな武器で攻撃したのか。とんでもない魔法でも使ったのか、と問われるナンシーは乾いた笑いしか出なかった。

「もうここには用はありませんわ。次に参りますわよ」

 一方、砦をクソの山に変えた本人は王都を目指しながら王国軍の拠点を潰す気満々。ナンシーから聞いた重要拠点を潰しつつ、王都を目指すプランである。

 王族に遺跡の事を聞けば良いと思っていたが、第二王子曰く王しか知らぬとの事。ならばさっさと王都を落とした方が良い。

「いや、待ってくれ。第二王子から情報を引き出して――」

「どんな情報ですの?」

「王都に向かう道の途中にある補給拠点や第三王子が率いる拠点の弱点など沢山聞く事があるだろう?」

 リーリャの提案は尤もだ。大きな相手を倒すには切り崩す為の情報が必要だ。

 特に相手が国となれば当然の事。

「そんな事を聞いて何の足しになりますの?」

 だが、この淑女に限っては違う。

 相手が国ですか? だったら更地にしてしまえば問題ありませんわよ。

 思想を変えたい? だったら全員殺せばよろしくてよ。

 こんな事を素で言いながら現実にするのがリーズレットである。

 王国相手にワンマンアーミーなんて通用するの? 数の力で押し潰されちゃうんじゃない?

 ノンノン。イージー。

 いくら巨大な組織であろうとも、それを形成しているのは『人』である。この世に様々な人種・種族が存在しようとも『人』である事には変わりない。

 様々な種類が存在する人、それ全てに共通する事は感情だ。

 故に――

「もっと簡単な方法がございましてよ」


-----


 リーズレットは救出したリーリャ達に砦の外に駐車されてあったトラックタイプの魔導車を使わせ、共に王都へ続く道を行く。

 半日魔導車を飛ばしたところで見えて来たのは王国東側の第二拠点。第二王子がいた砦と同じく前時代の帝国が使っていた砦を改修した場所である。

 王国東側に別の国が存在しないことから、この第二拠点は対外国向けとしては後方補給地といったところ。

 西側、北側に位置する外国が攻め込んで来た時にこの拠点に備蓄しておいた食料、武器等を王都を中継して前線へ運ぶ。対外国戦争ではそんな役割を持つ場所だ。

 だが、現在国内で勃発している対レジスタンス戦としては第二王子が詰めていた拠点よりも重要な場所だろう。

 王都に近く、情報のやり取りが容易な位置に存在している事から王命を受けた兵士がまず最初に訪れる場であり、レジスタンス勢力が活動する東側を制圧する為の中央基地と言うべきか。

 第二王子も前線から引き揚げた際はここを中継して王都に帰る。つまり、王国東側を舞台とした対レジスタンス戦において王都守護・前線へ兵士を送る……など、絶妙で丁度良い位置に存在するのだ。

 ここが落ちれば小規模な駐屯地や町を改修した小規模基地だけ。

 武器を手にしたレジスタンスがゲリラ戦などを仕掛ければ東側は王国側にとってカオス状態となり、収拾が付けられない事態に陥る。

 よって、リーリャ達はどうしてもこの第二砦を落としたい。だからこそ、第二王子から砦の構造や駐留している王国軍の数などを聞き出したかった。

 加えて、レジスタンスに第二王子が囚われていると知れば相手に焦りが生まれると期待していたのだが……。

「ここまで黙って着いてきたが、どうする気だ?」

 ナンシーに砦をあのような状況にしたのはこの人です、と言われて半信半疑ながらもリーズレットに言われた通りに着いて来た。

 リーリャとしては仲間であるナンシーの言葉を疑いたかった訳じゃないし、地下牢で見せた圧倒的な雰囲気を信じて……次も「もしかしたら?」という期待も抱いた末の選択だった。

「国を落とす上で大事な事は何か知っておりまして? それは恐怖ですわよ」

 相手を恐怖させ、行動と思考を鈍らせる。 

 前線で仲間が次々殺されていく地獄を見たら、兵士達は何を思うだろう?

 その兵士達が逃げて後方に辿り着いたら、彼等は仲間に何と伝えるだろう?

 恐怖を抱えて生還した兵士が語る地獄と死傷者報告の数が一致していたら信憑性はグンと上がる。

 その時、指揮官はどう思う?

 そんな場所に行けと言われ、地獄を創造した相手と戦えと言われた兵士はどんな感情を抱く?

 圧倒的な恐怖。未知なる相手に抱く恐怖。相手の情報がほとんどない状態で凄惨な結果だけを知っている。

 指揮官が恐怖し、部下に伝わらないよう箝口令を敷いたとしても……人は恐怖に逆らえない。

 なんたって自分と仲間がそこに向かうのだ。向かう先が地獄だと知る者は、大事な仲間に「お気楽なピクニックだよ」なんて言えるはずがない。

 真実を伝えた者は1人だけだったかもしれない。しかし、そこから噂のようにどんどんと広がっていく。

 圧倒的な恐怖は全ての者に伝播して抑えられない、とても厄介な感情である。

「と、いうわけでやりますわよ」

 レディ・マムによる恐怖の植え付け講座、始まるよー☆

 用意する物はと~っても簡単!

 まずは魔導車! これはどんなタイプでもOK! 動く物なら大丈夫だよ!

「貴様! 何をする! 何をする気だ!?」 

 次は敵対勢力に所属する人。なるべく偉い人ならいっぱい注目してくれるから嬉しいね!

 今回は捕まえた第二王子を使うよ。彼を車の運転席に縛り付けて、体中に魔石爆弾をセット☆

「あとは目の前にある砦に向かって走らせるだけですわよ」

 リーズレットは第二王子に爆弾を解除して欲しければ仲間に頼め、と言って魔導車のハンドルを固定しつつ真っ直ぐ砦に向かわせた。

「第二王子が砦に向かって行くがいいのか?」

「ええ」

 既に恐怖で支配された第二王子は必死にアクセルを踏んで一目散に砦に向かう。

 何故なら助かりたいから。体に取り付けられた魔石爆弾を友軍に解除してもらいたいから。

「私だァー! 助けてくれええええ!!」

 第二王子は僅かに残された『生』を掴み取る為に必死に叫ぶ。

 王国兵は第二王子の焦りと恐怖に満ちた叫びを聞いて無視はできない。下っ端は上官を呼び、上官は指揮官である第三王子を呼ぶ。

「兄上!?」

 第二王子の乗る魔導車を停車させ、中を見れば魔石爆弾が取り付けられている状況を見てどう思うだろうか。

 国の王子。王家の一族。自分の兄。

「レジスタンスにやられた!」

 兄は要約して一言で簡単に自分が置かれた状況を告げるだろう。

 王国兵も第三王子も無視はできない。助けなきゃ、と魔石爆弾を解除しようとするだろう。

「はい、ここでドーンですわよ」

 リーズレットはスイッチを押した。

 第二王子の体に取り付けられた魔石爆弾は発光して大爆発。

 ドカーンと。そりゃもうドカーンと第二王子の体はミンチに早変わり、周囲にいた者も距離が近かった者から被害を被る。

 砦の中から黒煙が上がり、王国兵の悲鳴や困惑する声が響く。

「おーっほっほっほ! なんと心地良い豚の悲鳴ですこと! これだからロイヤル・ファッキンボムは止められませんわァ!」

 相手の地位が偉ければ偉い程、効果を増すのがこの手法。

 リーズレットは高笑いしながら砦に向かって中指を立てた。

「あ、悪魔だ……!」

 リーリャ達はリーズレットの容赦無く、慈悲のカケラすらもない行動に口元を引き攣らせて恐怖する。

「ふう、面白かったですわね。ですが、まだまだ始まったばかりですわよ」

 そう。まだ続く。

 リーズレットによる恐怖の植え付け講座はまだ始まったばかり。

「さぁ、次はこれでしてよ」

 次に取り出したのはお馴染みの4連装ロケットランチャー。リーズレットが「よいしょ」と担ごうとした時、サリィが元気よく挙手。

「お嬢様! 私、それ使ってみたいです!」

「まぁ。よろしくてよ」

 クソ重いロケットランチャーを一度地面に降ろしてサリィと交代。彼女は肩に担いで得意気に胸を張った。

 サリィの細い体で4連装ロケットランチャー担ぐ。どこにそんな腕力があるのだろうか。これぞ正真正銘のチートである。

「私はこちらを使いますわよ」

 ロケットランチャーを渡したリーズレットが代わりに手に取ったのはガトリング式機関銃。ミニガンと呼ばれる兵器である。

 こちらも普通は持ち運べない。それを「よいしょ」と軽々と持つ淑女もまたチートである。

「サリィ、貴方は建物を狙いなさい」

「はいですぅ!」

 ガチャリと重火器を揃って砦に向ける2人。

「ふぁっきゅーですぅ!」

 ボボボボッと発射される4発のロケットランチャー。着弾と同時に崩れ落ちる建物。

 頭上から降り落ちる残骸に悲鳴を上げて逃げ出す王国兵。

「おーっほっほっほ! くたばりあそばせ豚共! 汚らしい悲鳴を聞かせて下さいましィ~!」

 砦の外へと逃げ出し、リーズレット達のいる方向へ飛び出してきた王国兵共にアイドリング状態だった銃身から吐き出される銃弾が襲い掛かる。

 身に着けていた防具は穴だらけ、ミンチになった豚肉が血飛沫と共に飛び散った。

『追加でございます。チーフ』

「わぁ、ありがとうございますぅ」

 サリィは両手で2つのロケットランチャーを持ち、脅威の殺戮兵器二刀流と化した。

 シュボボッと吐き出される弾が建造物を次々にクソへと変え、ロビィが補給したミニガンの銃弾が更に犠牲者を生む。

「もう嫌だ! 助けて!」

「死にたくないィー!」

 こうして2つ目の砦は陥落した。 

 阿鼻叫喚の地獄と化した砦が静まりかえるまで、1時間も掛からなかったと後にナンシーは怯えながら語る。

 リーリャ達は自分達のいた砦の地上部分を思い出し、無事で良かったと涙した。
 
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