婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

28 調査隊強襲

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 リーズレットはトゲトゲ付きの魔導車20台以上に囲まれながら西に爆走していた。

 途中横切った町では「遂に傭兵達の抗争が始まったのか」と恐怖されるほどの大移動を見せつける。

 だが、彼女が目指すのは遺跡の発掘現場。いや、マギアクラフトが行っている盗掘現場と言うべきか。

「姉御ォ! 見えてきやしたぜ! あそこでさァ!」

 紅蓮の鷹に所属する男が身を乗り出しながら先を指差し、リーズレットに知らせると全車停止してその場で様子を窺い始めた。

 双眼鏡を覗き込んだ先には傭兵団が縄張り主張していた前時代の街と同じような場所があった。

 ただ、二か所と違う点は瓦礫の山が乱雑に放置されておらず、作業用の重機で敷地の片隅にしっかりと集められているところだろうか。

 整理整頓が出来ているお上品な拠点の中にトラックタイプの魔導車が数台、簡易テントがいくつかあって、確かに調査現場といった雰囲気が滲み出る。

「あれは……」

 覗き見ていると男が機材らしき物をトラックに積み込んでいるのが見えた。

 手に抱えていた物が見えたのは一瞬で、どんな物かは分からなかったが後からやって来た女性が抱える物を見てリーズレットの目付きが鋭く変化する。

「あれはガジェットですわね」

 女性が手に持ち、トラックに積んだ物の正体。それはアイアン・レディが開発した戦闘用ガジェットの1つである携帯式小型タレットだった。

 小さな女性物のハンドバッグの見た目をしているが、型起動すると三脚と銃口が出現して銃弾を自動で撃つ支援用ガジェットである。

 見た目がバッグな事から女性が堂々と持っていても違和感が無く、アイアン・レディの見習い淑女達が好んで携行していた物で生産された数も多い。

 それ故に見間違えるはずがなかった。

 今持ち出しているという事は2ヵ所にあったセーフハウスと違って荒らされていなかったのだろう。

「ドロボウですわ!」

 人の物を盗もうなど何と恥知らずな事か!

 リーズレットは自分の犯した所業を棚に上げながら叫び、ハンドルを握りながら外にいる男達へ顔を向けた。

「野郎共! 強襲しますわよ! 続きなさいッ!!」

「え!? マジっすか!?」

 アクセル全開で突撃していくリーズレット。戸惑う傭兵達。

 目指す先には勿論、魔法銃を持った護衛の傭兵団がいるのだがリーズレットには関係ない。

 トラックに積み込んでいるのはアイアン・レディの物であるとわかった以上、今回は火力マシマシな爆発系の武器は使えない。

「え!? あ、おい! 止まれええええ!!??」

 答えは簡単だ。2ヵ所を襲った時同様にまずはドア・ノッカーでご挨拶。

 マギアクラフトが入り口として設定していた場所に立つ傭兵をミンチに変えて、そのまま中まで突っ込んだ。

 護衛する傭兵達が使っていたのであろう魔導車にそのまま突っ込んで一台をスクラップに変えて停車。

 運転席から飛び出したリーズレットが両手にアイアン・レディを握って暴れ回る。

「サリィ、貴方は反対側をおやりなさい!」

「はいですぅ!」

 アサルトライフルを持ったサリィも応戦を開始。

「なんだってんだ!? っておい、あれは血濡れの刃と紅蓮の鷹じゃねえのか!?」

「俺らが受けたのはマギアクラフトの依頼だぞ!? あいつら正気かよ!?」

 雇われていた傭兵達は状況もわからぬまま殺されていき、困惑しているところに追加のトゲトゲ車に乗った別の傭兵団が見えたらさぁ大変。

 国とズブズブな大手企業の依頼だからと安心しきっているところに同業者が強襲してきたのだ。

 相手は血迷ったのか、と思うだろう。当然だ。これは国に喧嘩を売る行為と等しい。

「あいつら、私達を襲ってどうなるか知らないの!?」

「いや、知ってるはずだ!」

 マギアクラフトに所属する女性が護衛してくれている傭兵に叫び、これは傭兵業界のタブーであると返答を返すものの……。

「死にたくなかったら武器を捨てて伏せていろォー! じゃなきゃ、命の保証はしねェー!」

 血濡れの刃リーダーが魔法銃を空に撃って威嚇しているではないか。

「クソ! 奴等本気だ!」

 護衛する傭兵団の者達は、血濡れの刃と紅蓮の鷹は手を組んで本気でマギアクラフトを襲っているのだと認識した。悲しい勘違いの始まりである。 

「野郎共! マギアクラフトの連中は無傷で捕えなさい! 聞きたい事がございましてよォー!」

「「「 へい、姉御ッ!! 」」」

 ど真ん中で次々と銃殺死体を量産していく赤いドレスの女性を見た護衛傭兵――火グマ団のリーダーは思った。

 あの女が2大傭兵団を束ねるボスなのだと。

 火グマ団のリーダーは利口だった。2大傭兵団に加えて、華麗に死体を量産していく大ボスたるリーズレットを見て……敵わない存在であると理解したのだ。

 故に、彼は仲間達へ叫ぶ。

「全員、武器を捨てて投降する! 繰り返す! 全員、武器を捨てて投降しろ!!」

「な、何を言ってるの!?」

「い、依頼を放棄するのか!?」

 簡単に依頼を放棄した傭兵団に戸惑うマギアクラフトのメンバー達。火グマ団のリーダーは真剣な表情で頷いた。
 
「ああ。あれには敵わない。俺達は無駄死にする気はないからな」

 
-----


 護衛していた火グマ団が投降した事で被害は最小限で済んだ。

 特に火グマ団は2大傭兵団から説明を受けてリーズレットに従うとあっさり決定を下す。この判断の速さが今日まで傭兵団として生き残って来れた理由だろう。

 対し、最後まで反抗したのはマギアクラフトのメンバー達。

 彼等は8人の男女で構成されていて、全員が非戦闘員だ。

 しかし、リーズレットに命じられた傭兵団に拘束されている最中も身を捩らせながら罵声を挙げるなどの態度を見せる。

「お前達、私達にこんな事をしてどうなるか分かっているのか!?」

 特にリーダー格の中年男性はあくまでも強気な態度を崩さない。

 両手を縛られ、地面に両膝をついた状態で拘束されようとも自分達が上であると信じて疑わない。

 彼だけじゃなく、他の者達もリーズレットや傭兵を睨みつけて威嚇していた。

 彼等の態度はマギアクラフトが国をも動かす巨大な組織である事を示し、そこに所属しているからと安心しきっている故だろう。

「まぁ! どうなってしまうのかしら?」

 小馬鹿にするように、リーズレットは口元を手で隠しながらクスクスと笑って返す。

 その態度が気に食わなかったのか、中年男性は睨みながら言った。  

「ふん。我々に手を出せば連邦軍が動く。そうなればお前達は1人残さず殺されるだろう」

 事実、マギアクラフトのメンバーに何かあればベレイア連邦は行動を起こすだろう。国の支援者が報復を望めば、言われた通りに実行するのは確かだ。

 普通の人間ならば臆するだろう。

 しかし、普通の人間はそもそもマギアクラフトを強襲しようなんて思わない。

「こぉんな感じに殺されてしまうのかしらァ?」

「え――」

 リーズレットはメンバーの1人に銃を向け、頭部に銃弾を撃ち込んだ。

 弾けた頭部の中身が拘束されて並べられるマギアクラフトメンバーの体に飛び散って、一瞬の間が空いてから彼等の悲鳴が上がった。  

「お、おまえ、おま……!」

 部下を殺された中年男性は口をパクパクしながら目を見開いて、リーズレットを見た。

 彼の目には硝煙をフッと息で消しながらニコリと笑う赤い淑女。

 イカれている。

 中年男性は自分からきっかけを口にしたにも拘らず、目の前にいるこの女は狂人だと戦慄する。

「さぁ、私の質問に答えて下さいますわね?」

「わ、私、私達は決して……」

 ガタガタと体を震わせる中年男性はまだ素直に答えようとしない。所属組織への忠誠心。なんと美しいことか。

「まだ自分達が安全圏にいると勘違いしておりますの? お可哀想に」

 パン、ともう一度銃声が鳴った。

 後頭部を撃たれた部下の頭部が無くなって、死体は前屈みになって地面に転がった。ジワジワと流れ出る赤い血が中年男性の傍まで地面を侵食していき、赤く染め上げる。

 中年男性と生き残っているメンバーは嫌でも理解しただろう。

 彼女の前で組織の規模など関係無い。国を動かせようが関係無い。どこに所属していようが関係無いのだ。

「投降してよかった」

「だろ?」

 惨劇を見る火グマ団リーダーと血濡れの刃リーダーはお互い小声で呟きながら頷き合った。

「この装備品、回収したのはこれで全てでして?」

 リーズレットはマギアクラフトが回収していたアイアン・レディのガジェットを持ち上げて彼等に問う。

「……そうだ」

 中年男性が答えるまでに間があった。
 
「これで全てですの? 嘘をついたら……彼女がどうなるかお分かりでしょう?」

 リーズレットはメンバーの中にいた女性の頭部に銃口を押し当てて、もう一度問う。

「ヒ、ち、違います! 前に回収した物は首都の支店に送りました! 本当です! だから殺さないで! 殺さないで下さい!!」

 後頭部に当たった銃口の感触に恐怖を覚えた女性が、中年男性が真実を言う前に己の命欲しさに全てを吐き出した。

「まぁ。では、彼は嘘を仰っていましたのね?」

 リーズレットは女性の耳元に口を寄せて、小さく呟くと女性はブンブンと凄い勢いで首を縦に振る。

 中年男性の顔はどんどん青ざめていく。クスリと笑ったリーズレットを見て、自分の命が長くない事を覚悟した。

「ふふ。安心して下さいまし。殺しませんわよ。」

 ようやく銃をホルスターにしまったリーズレットに嫌な予感を胸に抱えた血濡れの刃リーダーが問う。

「姉御、まさか」

「ええ。首都の支部を強襲して全て取返しますわよ」

 やっぱり。淑女によって合併吸収された3つの傭兵団は地獄の底までお付き合いせねばならないらしい。

 マジかよ、やってらんねえ、次こそ死んだ、と肩を落とす男達だがリーズレットは飴を与える事を忘れてはいない。

「野郎共、この偉そうな男以外は好きにしてよろしくてよ」

 中年男性は後々使うが、他の奴等は好きにして良い。そう告げた中には女性も混じる。

「他にも私が欲しい物以外は全て野郎共に差し上げますわ」

 加えて、アイアン・レディの装備品以外は全てくれてやると言い出したのだ。

「マジかよ、姉御! やりィ!」

 マギアクラフトが持ち込んだ物資の中には食料と酒、新型の魔法銃や魔導具なども含まれていた。

 それらを全てくれてやると言い出したリーズレットに歓声が上がる。

「貴方達は何が欲しいのかしら? 金、名声、女……。それら全てを手に入れたくはなくて?」

 欲しい、欲しい、と男達は声を張り上げた。

 リーズレットに付き従う事はリスキーであるが、生き残れればリターンも大きい。

「死を恐れていては欲しい物は手に入りませんわよ! さぁ、英気を養いなさい! 次の戦いの為に!」

「うおおおお!」

「お、おい、ちょっと……!」

 冷静に後々を予想できるリーダー達の制止空しく、口当たりの良い美味しい飴に乗せられたほとんどの傭兵達は雄叫びを上げて宴を始めるのであった。
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