婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

40 淑女によるレクチャー 2

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「殺せ、殺せ、殺せですわよォー!」

 さぁ、さぁ。始まった。

 伝説の淑女が教える敵国ぶっ殺しレクチャーのステップ3。

 ファッキンボムによる残酷無慈悲な仲間の死を見た相手は、自分達が戦っている相手はどれだけ恐ろしいのかと理解した事だろう。

 これまでリーズレットが堕とした国を振り返れば、戦争において戦う兵士達の精神状態というのは非常に重要だ。

 現在の連邦兵のように恐怖に縛られた者達は思うように体を動かせなくなる。

「うわあああッ!」

「死にたくないィー!」

 掴まったら体を爆発四散して死んだ彼等のようになってしまうのではないか。もっと酷い目に遭うんじゃないか。  

 恐怖に縛られた思考が勝手に『自分が想像する最も残酷な死に方』を連想してしまう。

 死にたくない。

 そう願うだろう。

 だが、ネガティブな思考に囚われた、心が弱い者から死んでいくのが世の摂理。

「あ……」

 戦場で足が竦んだ者は一瞬で人生が終わる。彼を見ていたリリィガーデン軍兵が銃口を向けているにも拘らず、足を動かせずに頭部を破壊されて死んだ。

 対し、恐怖に縛られた相手を攻める方はどうだろうか。

「撃て!」

「グレネード投擲!」

 リリィガーデン軍の誰もが今日の戦いを『戦いやすい』と感じているだろう。

 こちらは恐怖に縛られていない。つまり、冷静に周りを見渡せる。

 相手は陣形もクソもなく、混乱状態に陥った有象無象。リリィガーデン軍はセオリー通りに銃座付きの魔導車や基地に配備された防衛兵器を先に壊せば良い。

 しかも、相手はそれを守ろうともしないのだから簡単だ。

 撃ち合いになったとしても、相手は死にたくないと焦るが故に狙いが雑だ。そんな状態で撃てば無茶苦茶に弾を消費するだけ。

 遮蔽物に隠れ、相手の弾切れを待ってから撃てば良い。

 相手の無茶苦茶な掃射で顔を出せなければ、リーズレットから渡されたハンドバッグ型のタレットを設置して反撃の起点にする。

 タレットの発砲を食らい、掃射が止めばこちらの番。

「撃て! 撃て!」

「うおおおおッ!」
 
 一気に半身を露出させ、向かい側にいた敵へと掃射開始。思考の鈍った相手には面白いほど弾が当たった。

「凄いな……」

「ああ、こんな数の差があるのに」

 リリィガーデン軍の兵士達は再び遮蔽物に体を隠し、リロードの合間にそう頷き合った。

 リーズレットによる恐怖支配の効果は抜群だ。だが、それ以上にリリィガーデン軍兵の心を支えてネガティブな思考を排除するのは――

「おーっほっほっほ! そんなトロい動きでは、私は射止められませんわよォ!」

 最も敵と近い位置で暴れ回る『赤』の存在。 

 戦場という身を晒せば不利になる場所で、自分はここだと、自分を殺してみせろと『赤』で主張する淑女。

 誰もが目に付き易い赤を狙う。だが、銃弾は一撃も当たらない。

 赤の動きはまるでダンスだ。

 敵が放つ銃弾を音楽隊が鳴らす楽器の音色のように錯覚させ、自軍の誰もが彼女の美しいダンスに鼓舞される。

 悲惨な運命が待つ戦場を舞踏会に変える、血のように赤いドレスを着た淑女。

 そうだ。戦場でワルツを踊る本物の淑女がいれば負けるはずがない。

 彼女の戦いを見て、そう感じていたのはブラックチームのブライアンも同じであった。

「……素晴らしい」

 ライフルのスコープを覗き込み、敵兵を撃ちながら呟いた。

 ファッキンボムにドン引きしていた彼であったが、あんなことをした理由に納得する。

 いつも以上に当たる弾。トリガーを引く度に死んでいく敵兵。

「彼女は……。いや、あの方は本物だ」

 この状況を作り出した彼女は――建国の母達が『還って来る』と思い続けた伝説の淑女に違いない、と。

 ブライアンはスコープから顔を外し、戦場で踊るリーズレットを見つめた。

 両手に持ったハンドガンで敵兵を次々に殺し、目立つ赤を着て敵を引き付ける。

 それは友軍へ弾が飛ばないように位置取りしつつ、注目を集めているからだろう。実際、リリィガーデン軍の兵士へ銃口を向ける敵兵は少ない。

「頭を下げなさい!」

 味方が巻き込まれそうなら即座に的確な指示を出し、狙った相手を代わりに殺す事で友軍兵士を救う。

「さぁ、撃ちなさい! 貴方が敵を殺す事で誰かが救われますわよ!」

 けれど、決して独りよがりではない。

 すれ違い様に味方を鼓舞しながら、戦況をコントロールする手腕と頭脳。

「あれが本物のレディ・マム……!」

 敵にとっては青以上に恐怖の象徴。

 味方にとっては希望と勇気の象徴。

「フッフー! ファァァックッ!!」

 アイアン・レディのマガジンをリリースしながら宙を飛び、相手の顔面に蹴りを入れながら即座にリロード。

 着地同時に近くにいた敵兵を撃ち抜いては再び駆け出す。

「サリィ、撃ちなさい!」

「はいですぅ!」

 赤き淑女あるところに侍女あり。 

 伝説を描く物語通り、侍女とのコンビネーションも健在。

 瞬く間に数の有利を誇っていた敵兵の数が減っていく。

「私も、ああなりたい。私も……淑女になりたい」

 彼女の戦闘を見ていたコスモスは目を輝かせながら呟いた。

 嘗て、彼女の祖先であるグロリアが初めてリーズレットの戦闘を見た時と同じように。


-----


「状況報告なさい」

 連邦兵殲滅、基地の制圧を完了したリーズレットはリリィガーデン軍兵士に問う。

「ハッ! 敵軍の殲滅は完了! 自軍は怪我人が数名いるものの、死者はゼロでありますッ!」 

 周囲警戒しながらも報告をする軍人達。

 随行したリリィガーデン軍は完全にリーズレットの指揮下に入っていた。

 それも当然だろう。何十倍もあった兵数を覆し、死者ゼロという偉業を起こしてみせたのだから。

「レディ・マム。砦でのご無礼を謝罪させて頂きたく。申し訳ありませんでした」

 報告をした兵士は砦でリーズレットに反論した者であった。彼は状況報告を終えた後、リーズレットに謝罪を述べる。

 彼が謝罪を口にしたのはリーズレットの手腕を体験し、本物であると認めたからだろう。

 否、もう既に彼の目にはリーズレットへの崇拝する色さえあった。

 そんな彼に対し、リーズレットは――
 
「誇りなさい。貴方が勇気を出して前へ出た事で成せたのです」

「ハッ! 光栄でありますッ!!」

 許され、褒められた兵士は目が潤んでいた。もしも次に不利的状況に直面したとしても、彼は死へ向かう事を恐れないだろう。

「貴方達もです。誇りなさい、今日という日を」

「「「 イエス、マム!! 」」」

 リーズレットは1人の兵士を……いや、東部戦線に派兵された者達を死を恐れぬ兵士へと変えた。

 もはや洗脳である。

「マム。この後は如何致しましょう?」

 並び立つブライアンとコスモスがリーズレットに問う。

「そうですわね。まずは比較的綺麗な敵の死体を集めなさい」

「敵の死体ですか?」

 コスモスが首を傾げると、リーズレットは頷いた。

「ええ。綺麗な死体を基地に飾り付けますわよ。その上で、基地全体に罠を仕掛けます」

 リーズレットによるステップ4。

 最後は相手を地獄へ誘う素敵な飾り付けである。

 敢えて落とした基地をそのままに、殺した敵兵の死体を基地の中に見せつけるよう飾り付ける。

 そして、入り口に地雷を設置。内部にも爆薬仕込みの罠を設置。

「友軍の死体が無残な状態で残されていたらどう思いまして? 死体を回収して祖国の土地に埋葬したいと考えるでしょう?」

 前線基地と連絡が取れず、様子を見に来た連邦軍が仲間の死体を見たらどうするだろう?

 フラフラと寄って来るに違いない。魔導車でやって来たとしたら、入り口の地雷を踏んでドカン。

 偵察部隊や調査部隊の消息が絶つ、もしくは被害に遭ったと後方へ連絡を入れたら更に数を増して寄って来るだろう。

 次は基地の中を調査するはずだ。そこで罠が起動してドカン。

 堕とした基地と連邦兵の死体をエサにした2段構えのブービートラップ。

「用意が出来たら当初の予定通りに丘に陣地構築を行います。その後、数名を抜擢して毎日交代で基地を見張りなさい」

 当初の予定だった丘の上に小規模な陣地を構築。そこから毎日、基地を見張る。

「敵がトラップに掛かったら奇襲して殺す準備をしておくように。相手が学習するまで罠を再設置して繰り返しなさい」

 フラフラ寄って来た敵が罠に掛かってダメージを負ったら奇襲する。

 殲滅が理想的であるが、逃げた敵兵は深追いしない。

 こちらも撤退したと見せかけて、再びやって来た敵を内部まで歩を進ませてから喰らい付くといった寸法だ。

 これならば複数の戦線を維持せねばならないリリィガーデン軍も多少は時間稼ぎができるだろう。

「ハッ。承知しました!」

 ブライアンに指示された軍曹がさっそく仲間達に作業を割り振り始めた。

「マム。ここは軍に任せて下さい。貴女は一度、首都へ向かうべきです」

 ブライアンはリーズレットに首都へ行って女王と会うべきだと勧める。  
 
「そうですね。女王陛下と会って遺産を引き継ぐべきです」

 2人ともリーズレットが偽物とは思っていない。だが、リリィガーデン王国の政府と軍が不敬を働かない為にも立場は明確にするべきだと考えていた。

 遺産へ続く扉は伝説の淑女にしか開けられない。そう言い伝えられている。

 リーズレットが扉を開けば、本物と証明されて誰も彼女を疑わないだろう。

 きっと女王も、建国の母達も、それを望んでいるはずだと告げる。

「わかりました。そうしましょう」

 2人の勧めに頷くリーズレット。

「道案内は我々が」

 ブルーチームが壊滅したコスモスは首都に戻って軍から指示を受ける必要がある。

 ブラックチームも半壊しているし、人員補充をせねばならない。

 別の戦線に派兵される可能性もあるので、2人にとってはタイミングが良い。

「では、参りましょう。私が先導致します」

 リーズレット達はキャンピングカーにコスモスを乗せ、ブラックチームが乗る鹵獲した魔導車を先頭にして首都を目指すのであった。 
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