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本編
60 王都突入
しおりを挟むラディア王国王都直前、最終防衛地を堕として東西軍の挟撃も撃破したリリィガーデン王国軍は準備を整えると王都へ前進。
既に目視できる距離まで近づいて、王都を囲む城壁の上に配備されたマギアクラフト製魔導兵器の様子を観察している段階だった。
「どうですか?」
「ハッ。クソですわね」
マチルダの問いにリーズレットは鼻で笑ってみせた。
城壁に並ぶ魔導兵器、情報部によれば要塞に配備されていた物よりも更に最新式なんじゃないかという話だ。
やや長めの砲身が空を向き、対空兵器としても使えるようで。
恐らくナイト・ホーク対策だろう。
だが、それがどうしたのか。リーズレットはバリケードと大量の兵士で守られる王都の門へと指差した。
「奴等は門を突破させないようにしているのでしょう? 我々を止められるとでも思って?」
対空兵器を配備したからどうだというのか。リーズレットはニコリと笑う。
「対処できないほどの威力を見せつけてやればよろしくてよ。事前に通達した通りに動きなさい」
「「 ハッ! 」」
マチルダ隊と控えていた別の隊の指揮官にそう伝えると、準備を急がせた。
通達から30分後、遂にリリィガーデン王国軍は動き出す。
城壁の上にある魔導兵器の射程外に位置していたリリィガーデン王国軍は魔導車に乗って前進。
ラディア人共は最新鋭の魔導兵器を操作するコンソールの前で「射程内に入ったら蹴散らしてやろう」とでも思っているだろう。
最新鋭、最新型とは何とも聞こえがよろしい。現代において一番の技術を投入した素晴らしい物であれば誰もが心強く思うはずだ。
しかし、そんな兵器も使い方次第。使う者の技量、そして相手する者の技量と技術。それらを加味して誇らなければ滑稽極まりない。
では、ラディア人共はどちら側だろうか。
正解は『滑稽』である。何故なら、ラディア王国の空には2機のナイト・ホークが飛んでいるのだから。
「ロビィ、サリィ。おやりなさい」
『ウィ、レディ』
「はいですぅ」
魔導車に乗って指示を出すリーズレットの頭上を飛び越え、ロビィとサリィが操縦するナイト・ホークが王都へと前進。
結局のところ、ラディア人はナイト・ホークに対してこれまで有効的な戦略を取れていなかった。
ただ1機だけでさえ。ならば2機になればどうなってしまうのだろうか。
想像するに容易い。
上空を自由に飛び回る空の支配者がロケットランチャーで総攻撃を仕掛ければ、魔導兵器とそれを操る兵士共は爆発四散。
地上で門を守る兵士達は空から降る機銃掃射を喰らってミンチ肉に早変わり。
何とか対空攻撃を繰り出すも離脱とフレアによって躱される。
「おーっほっほっほ! 豚は何をしようが豚に代わりありませんわァ! 大人しく死を受け入れて下さいましィー!」
縦横無尽に空を飛び回るナイト・ホークを墜せぬのであれば、続く地上部隊の対処など到底不可能。
銃座付きの魔導車が先行して、地上にいる兵士達を根こそぎ殺す。
「ファッキューベイベー!!」
リーズレットと共にロケットランチャーを担いだ男達が門に向かって一斉にトリガーを引いた。
堅牢な鋼鉄製の門が吹き飛んで穴を開けると、そこを目掛けてリーズレット達は更に前進。
逃げ惑うラディア人を射殺して、轢き殺して、死体を踏み潰して。
今まで落とした街と要塞の惨状を知ってか、伝播していた恐怖と合わさった王都門前にいるラディア軍は地獄でもがく亡者のよう。文字通り地獄となった王都門前に展開されたラディア軍は呆気なく壊滅した。
「突入!」
先頭を走るリーズレットが門に作った穴から王都内部へ侵入。
侵入と同時に彼女は筒のような物体を連続で3つ空に投げた。投げた筒が空中で空を飛ぶドローンに変形。
マルチコプタータイプのドローンに変形したソレは、下部にあるカメラを起動。同時にリトル・レディとの通信を開始。
すると、リーズレットの両目に装着された『レディ・コンタクトレンズ』が『ドローン』『リトル・レディ』との通信リンクを繋げる。
「リトル・レディ、空中から王都を監視。同時に内部制圧部隊を支援なさい!」
『イエス、レディ』
ナイト・ホークと同じように空高く飛び上がった3機のドローンは空中で静止すると王都内部にいる人間をスキャンする。
熱源感知を駆使したスキャンデータはリトル・レディに伝達されると、彼女の優秀なプロセッサが補助処理を加えて敵味方を判別する明確な情報へと昇華させる。
それらの情報がコンタクトレンズ越しにAR表示され、リーズレットには王都にいる人間全てが丸見えとなった。
『軍の誘導を開始。1機はレディをエスコートします』
1機はリーズレットをエスコートするようにメインストリートを前進。
残り2機は空を動くとラディア軍が展開する2つの場所に赤い信号弾を落す。
「マム、ご武運を!」
2つの信号弾へ向かうのは首都からやって来た部隊。それぞれ地上から舞い上がる赤い煙を追ってリーズレットから離れて行った。
コスモス率いる一部部隊は門に残り、門の確保と城壁の上にある魔導兵器へと急ぐ。生きている魔導兵器を確保して、その砲身を王都内部へと向けるつもりだ。
空から彼等を支援するべく、ロビィも王都上空を旋回。
王都内部に侵入したリリィガーデン王国軍は生きている魔導兵器の鹵獲によって王都内部を地獄へと変える役割を忠実にこなす。
サリィも同様に与えられた任務を遂行するべく動き出した。リーズレットの頭上を飛んで不埒者から守護する役割を全うする。
メインストリートに配置されたバリケードを吹き飛ばしながら前進を続け、リーズレットは左右に顔を向けた。
王都に建つ無数の建物を透過して、敵の位置が見える。その塊に向かう自軍の姿も。
リトル・レディとナイト・ホークの支援によってリリィガーデン王国軍は奇襲という好条件で相手へと攻撃を仕掛けられたようだ。
「マム! 前方に敵部隊ッ!」
マチルダ隊の男が叫んだ声に反応してリーズレットは前を向く。コンタクトレンズ越しにリトル・レディから送られた情報を見るに、王城を守護する人数は大隊クラスのようだ。
王城目前。国のトップを守るべく特別精鋭な部隊を配置しているようで、持っている魔法銃も道を塞ぐ魔導車も新型のように見えた。
『マム! 援護します!』
通信機越しにコスモスの声が聞こえた。
すると、上空から何かが飛来する音が聞こえてくる。
瞬間、王城を守る最前線の敵部隊頭上に炎の砲撃が落ちた。それと連動するようにサリィの掃射が続く。
「ヒュウ!」
突然のサプライズプレゼントにリーズレットは満面の笑みを浮かべる。
最初の砲撃が飛んできたであろう場所はコスモスのいる城壁。振り返れば2機の魔導兵器が王都の外ではなく、内に向けられていた。
「コスモス! グッジョブですわよ!」
『はい! 援護を続けます!』
再び魔導兵器のコンソールを使って砲撃を繰り返し、行く手を阻む敵部隊の頭上に炎の弾を落す。加えてサリィの機銃掃射が敵の防衛陣を打ち崩し続けた。
リーズレットとマチルダ隊は止まる事無く前進。遂に王城の入り口が見えた。
「ファァァック!!」
固く閉ざされた王城の入り口に向かってロケットランチャーを向けるリーズレット。
これぞリーズレット式、正しいドアノック方法。前世から変わらぬ、王城突入前の儀式である。
爆発して大穴を開け、王城の玄関ロビーが丸見え。そこに魔導車ごと突っ込む。
「ステイダウン、マザファッカァァァッ!!」
内部にいた敵兵に向かって更にもう1発。白い内装と金の装飾を施し、敬愛する神の像が設置されたラディア王国が誇る王城ロビーが瓦礫と人の死体で彩られたクソ塗れのパーティー会場に変化した。
「王城にいる全てのラディア人を殺しなさいッ! ラディアの豚王一家を殺して首を持って来た野郎にはご褒美が出ますわよッ!」
「イエェェイ! やったるぜェェッ!!」
魔導車から降りたリーズレットはアイアン・レディを抜くとマチルダ達へと叫ぶ。
ラディア国産豚狩りツアーの最終地点に到着したマチルダ達は獰猛な笑みを浮かべながらリーズレットの後に続く。
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一方、王城4階の大広間に設置された司令室に焦りを露わにした兵士が駆け込んでラディア王国の王であるヘルモンドへと叫んだ。
「リリィガーデン王国軍が王城に侵入! 現在、2階で戦闘中です!」
彼がそう告げた瞬間、王城が大きく揺れた。
2階にいるリーズレット達が爆発物を使用したのだろう。室内で爆発を起こすなど城が崩れるような事態に陥ってもおかしくはない。
だが、彼女等はお構いなし。城が崩れて豚共が下敷きになれば万々歳といったところか。
「クソッ! 何故だ、何故だッ!」
何故、我が軍はリリィガーデン王国を止められぬのか。その一言に尽きる。
最新鋭の魔導兵器と魔法銃を配備したのにも拘らず、時代遅れの実弾銃を使う軍隊に何故勝てないのか。
3ヵ国同時に侵略されて国の領土と戦意を削いで来たにも拘らず、どこに巻き返しを図れるほどの力が残っていたのか。
ヘルモンドは本気で理解できていなかった。
彼が苛立ちを解消しようと机に拳を打ち付けた瞬間、城の窓に黒い影が高速で横切った。
「あの黒い空を飛ぶ物も落とせんのか! あれが原因だろう! あれを堕とせばどうにでもなるはずだッ!」
「しかし、城壁に設置した魔導兵器は奪われてしまい……」
「他の兵器はどうした!?」
「あの黒い空を飛ぶ物に壊されました!」
「ふざけるなァ!」
と、リーズレット達が聞けば抱腹絶倒するであろうやり取りが繰り広げられる。ある意味、彼女等がこの場にいなくてよかった。いたら笑い転げて銃すら手放していただろう。
まさにアホウ。何事も神が助けてくれる、神の使者だから敵から奪ってもOK、などと本気で言っているアホウ共は格が違う。
現実を直視せず、民衆を操作する為に神を作り出して罪を擦り付けてきた者共にようやくツケが回って来た。
とにかく敵をこの階まで到達させるな、と叫ぶヘルモンド。そこに現れたのは――
「ほんと、よわよわなんだからぁ」
いつもの煽情的なドレスとは違って、丈が短く、肩が丸出しな黒いボンテージのような露出度の高い戦闘服と胸に宝石が輝くペンダント見せつけるリリムがため息を零しながらやって来た。
「まぁ無理もないかなぁ。あっちにはお姉様がいるし~」
やれやれ、と首を振るリリムを切羽詰まるヘルモンドは睨みつけた。
「どういう事だ!?」
「あはっ☆ パパ、こわ~い!」
しかし、リリムはいつも通りにおどけてみせた。体をくねらせて、手で口を隠しながらクスクスと笑う。
「でもでもぉ~。サイキョー魔法少女のリリムちゃんがいるじゃ~ん」
リリムは「キャハハ☆」と笑いながら手を広げた。
彼女の両手10本の指からは魔法で作られた透明の糸が出現し、床をすり抜けて下の階へと落ちていく。
「むふふ。お姉様、どっちが強いから比べてみようよ。私にはいっぱい味方がいるんだから」
リリムは指から垂れる糸の数を増やしながら、ヘルモンドの問いかけを無視しながらクスリと笑った。
「私が一番なのよ? 時代遅れのお姉様。殺して、私のお人形さんにして……いっぱい可愛がってあげる♡」
やがて想定した糸の本数に達すると、彼女はそう言いながらべろりと自分の唇を舐めた。
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