助けた旅人が隣国の第三皇子!? 運命的な出会いからの即日プロポーズ! 婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!・完結

まほりろ

文字の大きさ
5 / 16

5話「リリアナ、旅人を助ける」




「うう……、僕はいったい……?」

そうこうしている間に、倒れていた男性が目を覚ましました。

「体が徐々に重くなって……意識が朦朧として……馬のいななきや、御者の悲鳴が聞こえて……それで……?」

彼は悪魔に取り憑かれ、それで体調が悪くなったのでしょう。

「大丈夫ですよ。
 あなたに取り憑いていた悪魔は私がボコボコにしましたから」

「悪魔に取り憑かれていた……?
 それであなたは……?」

このとき男性と視線が合いました。

彼はサファイアブルーの瞳をしていました。

顔立ちもかなり整っています。

年は十六~十八歳ぐらいでしょうか?

悪魔に取り憑かれていた後遺症か、肌の血色が悪く、目の下に隈がありました。

元々は美少年だったでしょうに、顔色のせいで病弱に見えるなんてもったいないですね。

「私はネクロマンサー兼錬金術師です」

「ネクロマンサー……? 錬金術師……?」

「詳しいお話は後でいたしましょう。
 それより、あなたに折り行って頼みがあるのです」

「なんでしょう?」

「あなたに取り憑いていた悪魔を譲ってほしいんです!」

「はい……?」

「困惑するのはわかります!
 これだけ綺麗に色の別れた悪魔ですものね!
 簡単には人に譲りたくありませんよね!
 そこはまぁ、私があなたを助けたことへのお礼ということで……」

「あの! 先程からなんの話をしているんですか?」

「あなた悪魔に取り憑かれていたんですよ。
 心配しないでください。
 悪魔は私がフルボッコにしておきましまから。
 そこに転がっている悪魔が見えませんか?」

私が悪魔を積み重ねた場所を指差すと、青年は首を傾げました。

「僕には何も見えませんが……」

青年は困ったように首を傾げました。

「そうですか……あなたには悪魔は見えないんですね」

見えないものは存在しないのも同じ……彼に私がしたことを理解して貰うのは不可能。

ということは……この人に取り憑いていた悪魔をこのままネコババしてもバレないということですね!

思いがけず生きの良い悪魔を手に入れてしまいました。

魔晄炉で溶かす前に、あんな実験や、こんな実験をするチャンスですね!
キーヒッヒッヒッ……! 今日はついてますわ!

「僕は……祖国にいた時からずっと……体が重くて、苦しくて……息をするのも大変でした……」

私が心の中でガッツポーズしていると、青年が自分語りを始めました。

「多くの医者に診てもらいましたが、原因はわかりませんでした……」

霊障の類はお医者様の専門外ですからね。

「僕の側にいると悪寒がし、
 良くないことが立て続けに起こるようで、
 友人は気味悪がって僕から離れて行きました。
 ソフィアも僕の元から去って行った……」

悪魔に取り憑かれ、苦労していたのですね。

「わらにもすがる思いで、国一番の占い師に見てもらったんです!
 そして、オルフェア王国のフロスト伯爵の別邸を尋ねるように言われました。
 彼なら僕を苦しみから開放してくれると……!」

オルフェア王国とはこの国の名前です。

ああそれで……近所の人間どころか、強盗も山賊も近寄らないこの道を走っていたわけですね。

「フロスト伯爵の別邸はこの先にあります。
 彼は私の祖父でした」

「そうだったのですか?
 彼のお孫さんに助けて頂けるとは何たる偶然!
 何たる幸運!
 それでフロスト伯爵は今どこに……?!」

「祖父は数年前に亡くなりました。
 なのでフロスト伯爵ではなく、フロスト前伯爵になります」

「そうなんでね……僕は訪ねて来るのが遅すぎたようです……」

「そうでもないですよ。
 祖父の技術や能力は、全部孫の私が全部受け継ぎましたから」

「それは本当ですか?!」

「はい。
 あなたの問題はすでに解決しています。
 あなたには悪魔が七体取り憑いていました。
 祖国にいた時から七体全部に取り憑かれていたのか、この国に来てから新たに取り憑いた悪魔がいたのかは、私にはわかりません」

殴った悪魔を起こして話を聞けばわかるかもしれませんが、めんどくさいです。

「ただこだけはわかります。
 あなたの体調が悪かったのも、
 友人が気味悪がって離れていったのも、
 全部悪魔のせいだと」

「そうだったのですね」

「先ほどお話した通り、その悪魔は私が全部やっつけました。
 だからもう大丈夫ですよ。
 安心して祖国にお帰り下さい」

報酬はそこに転がってる悪魔を置いてってくれるだけでいいですから。

「ありがとうございます!
 あなたにはなんと感謝したらいいか!」

少年がガバっと起き上がり、おもむろに私の手を取りました。

「私が言うのもなんですが、今の話を信じるのですか?
 悪魔は目に見えないのに?」

「今までずっと感じていた体の怠さや不快さ、空気の重苦しさが綺麗さっぱり消えています!
 それがあなたの言葉が正しいという証明です!」

この人、悪い人に騙されないか心配になるほどの純粋さですね。

この年になるまでこのように純粋でいられたのですから、彼はよほど育ちが良いのでしょう。

「高名な医者や学者を何人も呼び付け、体を診てもらいました。
 教会でお祓いを受けたこともあります。
 ですが、誰も僕の体調不良の原因を突き止められなかった。
 あなたはその原因を突き止め、僕を苦しみから救ってくれました!
 僕があなたを信じる理由はそれで十分です!」

彼も大分苦労してきたようですね。

教会でお祓いを受けても無意味でしょう。

シア様ほどの神聖力を持つ聖女でなければ、低級霊ならともかく、悪霊より強い力を持つ悪魔を祓うなんて不可能ですから。

「本当に本当にありがとうございます!
 あなたは命の恩人です!
 なんとお礼を言ったらいいのか……うっ……!」

私の手を握り手を上下にぶんぶん振っていた少年が、急に苦しみ出しました。

「どうかしましたか?」

「何だかわかりませんが……体が急に重く……」

彼は立っていられず、道に蹲ってしまいました。

【フフフフフ……兄者達を倒したからっていい気になるなよ。
 我こそは悪魔の中の悪魔、虹色レーゲンボーゲンファルベン
 一人で七つの色を持つ特異体質!
 兄者達の異変を嗅ぎつけ駆けつけた訳さ!
 よく聞け、人間の女!
 オレは他の兄弟のように弱くないぞ!
 貴様は明日の朝日を拝めずに死ぬ……の、だ……?】

ドコスッッッ! バギッ!! ボコッッッ!!

少年の背中には、七色に光る悪魔がくっついていました。

なんか凄くレアな悪魔を倒したみたいです!

この悪魔からはどんな魔石が作れるのかしら?

それにしても長々と口上を垂れていたわりには、弱い悪魔でしたね。

か弱い乙女のげんこつ数発で伸びてしまうなんて。

「うわっ、何故か急に体が軽くなりました!」

悪魔に取り憑かれていた時は真っ青だった少年の顔に、血の色が戻ってきました。

「ええ私が今、あなたに取り憑いていた悪魔をしばき倒しましたから」

「悪魔をしばきたおすなんて凄い!
 あなたはとてもたくましい方なのですね!」

それは私がバカ力という意味でしょうか?

「いえいえ、私など小麦粉の大袋を一度に三つ担ぐのがやっとの華奢で非力な女の子ですよ」

小麦粉の大袋一つ二十五キロ。

本当は小麦粉の大袋なら、一度に二十四個はらくらく持ててしまうんですが、怪力だと思われたら嫌なので少しサバを読みました。

「それにしても……。
 祓って貰った直後に、また別の悪魔に取り憑かれるなんて……僕はなんて情けないんだ」

「もしかしたらあなたは、稀に見る特異体質なのかもしれません」

「特異体質……?」

歩く悪霊ホイホイのアルバート殿下を商売敵の聖女に取られ、もうあのような悲劇的な体質のレア度マックスの人間に出会うなんて不可能だと思ってました。

でも、捨てる神あれば拾う神ありです!

「あなたは稀にみる悪魔召集体質……!
 歩く悪魔ホイホイなんですわ!」

「な、なんですってーーーー!!」

今彼の後ろに大ゴマ&ベタフラッシュで「ガーン!」という擬音が見えた気がします。

古い演出ですね。

感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

「平民とでも結婚すれば?」と捨てられた令嬢、隣国の王太子に溺愛されてますが?

ゆっこ
恋愛
「……君との婚約は、ここで破棄させてもらう」  その言葉を、私は静かに受け止めた。  今から一時間前。私、セレナ・エヴァレットは、婚約者である王国第一王子リカルド・アルヴェイン殿下に、唐突に婚約破棄を言い渡された。 「急すぎますわね。何か私が問題を起こしましたか?」 「いや、そういうわけではない。ただ、君のような冷たい女性ではなく、もっと人の心を思いやれる優しい女性と生涯を共にしたいと考えただけだ」  そう言って、彼は隣に立つ金髪碧眼の令嬢に視線をやった。

婚約破棄?悪役令嬢の復讐は爆速で。

八雲
恋愛
「リリム・フォン・アスタロト! 貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの最中、婚約者である王太子エリオットから身に覚えのない罪を突きつけられた公爵令嬢リリム。隣には「真実の愛」を語るマシュマロ系男爵令嬢シャーリーの姿。 普通の令嬢なら泣き崩れる場面――だが、リリムは違った。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。