7 / 16
7話「リリアナ、悪魔から魔石を作る」
しおりを挟む「勘当された?
何故ですか?」
「その話はおいおいお話いたしますわ。 まずはそこに転がっている悪魔を屋敷に運んで魔石にしてしまいましょう」
「僕には見えないので、お手伝い出来なくて申し訳ないです」
「お気になさらないで下さい。
カイロス様がいらしたから生きの良い悪魔が手に入ったのですから」
私は悪魔を二、三体纏めてポイポイと馬車に放り込みました。
「客席が悪魔でいっぱいなので、御者席に乗りましょう。
あとカイロス様の馬と馬車を頂いてもよろしいですか?
私の馬車はボロボロなので」
「どうぞ、婚約したので馬も馬車もあなたの物です」
カイロス様は気前がいいです。
私は自分の馬車から馬を外し、カイロス様の馬車につなぎ直しました。
ついでに自分の荷物も移動しました。
そして道すがら、私の生い立ちや、第二王子と婚約していたことや、商売敵の聖女様が現れて婚約破棄された事を伝えました。
私の事情を説明し終えたあと、カイロス様の生い立ちや素性をお聞きしようと思った時、屋敷についてしまいました。
カイロス様の事情は、あとで伺うことにしましょう。
◇◇◇◇
「ところでこの部屋の三分の一を占める巨大な機械は一体?」
カイロス様、説明セリフありがとうございます。
それは人の背丈よりも遥かに大きく、大人が両手を広げて三人並んだぐらいの横幅がありました。
屋敷に着いた私達は、真っ直ぐ魔晄炉のある部屋に向かいました。
それで、部屋に入ったカイロス様の開口一番のセリフが機械への質問だった訳です。
「これは祖父が作った魔晄炉です」
「これが、前フロスト伯爵が作った魔晄炉?」
「はい」
大きすぎて国外には持ち運べません。
このまま祖国に残しても、悪用される恐れもありますし、ある意味破壊命令が出て良かったかもしれません。
その前に悪魔を溶かして魔石に変えさせていただきますけど。
「今から悪魔を溶かして魔石に変えます。
悪魔を溶かすとき、黒板を爪で引っ掻いた時の百倍不快な音がします。
カイロス様は耳を塞いで外で待機していて下さい」
私は悪霊の断末魔を聞くのが好きでした。
悪魔はどんな断末魔を上げるのかしら?
楽しみだわ。
「えっ? そうなの?
そんな不快な音が……!
でも魔石に変えられるのは僕を苦しめていた悪魔だ!
僕には悪魔の姿は見えないけど、せめて魔石に変わる所を見届けたい!」
カイロス様、結構根性ありますね。
「わかりました。
でも耳だけは塞いでいて下さいね」
私は最後に倒した七色の悪魔を残して、残り七体の悪魔を魔晄炉に放り込みました。
赤、青、緑、黄色、オレンジ、水色、紫……彼らを溶かしたらどんな色の魔石ができるのかしら?
上手く行けば七色の魔石ができるかもしれません!
蓋をして、魔晄炉のスイッチを入れました。
悪霊だとこのあと「ギェェェーー!!」的な断末魔を上げるのですよ。
悪霊を溶かすのは初めてですが、彼はどんな断末魔を上げるのでしょう?
わくわくするわ!
悪魔が魔晄炉の中でどんどん溶けて行きます。
そろそろ断末魔が聞こえるころですね。
どんな悲鳴を上げるのかそわそわしながら待っていると、聞こえて来たのは鈴を鳴らしたような歌声でした。
なんだか拍子抜けですね。
鈴を鳴らしたような歌声が彼らの断末魔なんて。
ですがこれなら、近所迷惑にならないかもしれません。
「もう終わったのかい?
断末魔は?」
「悪魔の断末魔は鈴のような歌声だったようです。
拍子抜けです」
「僕は少しホッとしてるよ」
カイロス様が額の汗を拭いました。どうやら彼は強がっていましたが、悪魔の断末魔が怖かったようです。
「それより見て下さい。
魔石ができましたよ」
出来立てほやほやの魔石を魔晄炉から取り出し、カイロス様に見せました。
「凄い……七色に輝いている!
こう言ってはなんだがとても綺麗だ……!」
カイロス様は魔石を見て感動しているようでした。
「カイロス様に取り憑いていた悪魔は赤、青、緑、黄色、オレンジ、水色、紫の七色だったのです。
それで彼らを同時に魔晄炉に放り込んだらどうなるのか実験してみました。
良い感じに混ざったみたいです」
我ながら良い出来だと思います。
それにこの七色の魔石は、今まで作ったどの魔石より強いパワーを持っています。
一応、ネクロマンサー兼錬金術師なので、それくらいのことは魔石を見ただけでもわかりますよ。
悪霊より悪魔の方が魔石の材料に適しているようです。
「では次は、新たにカイロス様に取り憑いた悪魔を魔晄炉に入れます。
カイロス様には見えないですが、なんと彼は七色に光ってるんですよ。
彼一体でも七色の魔石が出来るのか、ちょっとわくわくしますね」
私はドキドキしながら、七色に輝く悪魔を魔晄炉に入れました。
そしてポチッとスイッチを押しました。
鈴のような軽やかな断末魔を残し、悪魔は魔石に変わりました。
「やりました!
私の予想通り七色の魔石に変わりました!
二回続けて七色の魔石ができるなんて!
ついてますわ!」
ああ、楽しいです!
もっと実験したいです!
同じ色の悪魔を纏めて数体魔晄炉に入れたら、濃い色の魔石ができるのかしら?
赤と黄色の悪魔を同時に魔晄炉に入れたら、緑色の魔石ができるのかしら?
それは緑色の悪魔から作る魔石とはどう違うのかしら?
ああ、色々と実験してみたいです!
カイロス様が早く次の悪魔に取り憑かれないかしら?
いえいえ、これは流石に不謹慎でしたね。
「リリアナ様、あなは想像以上に凄い人だ!
恐ろしい悪魔を、いとも簡単にこんな美しい魔石に変えてしまうのだから!」
「そんな、褒め過ぎでよ」
でも褒められるのって悪い気がしません。
錬金術を褒められるなんて、祖父が生きていた時以来ですから。
「でも問題はこの魔晄炉だ。
こんな大きな機械を、どうやって僕の国まで運べばよいのか……?
そっと運ばないと壊れてしまうだろうし、馬車には乗せられないだろうし、こんな大きな物を動かすと目立つし、こっそり慎重に運ぶにはどうしたらよいのか……?」
「あっ、そのことなら心配いりませんよ。
この魔晄炉は壊してしまいますから」
「はっ?
ええっ?!
君はこんな貴重な魔晄炉を壊すというのかい?
正気かい?」
「はい。
第二王子から魔晄炉を壊すように命が下されましたので」
「こんな貴重な物を壊せと命じるとは、この国の第二王子は相当浅はかなようだ。
少し前まで自分もこの魔晄炉とリリアナ様のお世話になっていたのに、そのどちらもあっさりすてるなど……なんと恥知らずで、なんと恩知らずな……!」
「カイロス様、私の為に怒って下さるのは嬉しいですが、それ以上言うと不敬罪になりますよ。
私のことは気にしないで下さい。 婚約破棄されましたが、殺せとまでは命令されませんでしたから」
「同じことです。
若い娘が人前で、しかも王子から婚約破棄されたら、傷物になります。
あなたの人生を破壊されたも同然です」
こんな風に私の為に怒ってくれる人に出会ったのは、亡くなった祖父以来初めてです。
「私の為に怒って下さりありがとうございます。
でも私は、こんなことで壊れるほどやわではありませんから」
商売柄、人様に陰口を叩かれるのなんて慣れっこです。
「やわでないからといって、傷つかないわけではありません」
カイロス様は本当に良い方ですね。
私は素敵な旦那様をゲットしたようです。
「何故、笑っているのですか?」
「いえ、カイロス様のお言葉が嬉しかったのでつい」
「僕はそんなに特別な事を言った覚えは……」
「私の心には響きましたわ」
人の優しさとは不思議です。
こんなにも心のすみずみに響き、荒んでいた心を癒やして行くのですから。
「あなたの心を少しでも癒すことができたのならよかったです」
「ええ、とても癒やされました。
それより本題です!
この魔晄炉を壊しても問題ないと言ったのには理由があるのです!」
「理由とは?」
265
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜
遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。
晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。
グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。
「きみは強いからひとりでも平気だよね」と婚約破棄された令嬢、本当に強かったのでモンスターを倒して生きています
猫屋ちゃき
恋愛
侯爵令嬢イリメルは、ある日婚約者であるエーリクに「きみは強いからひとりでも平気だよね?」と婚約破棄される。彼は、平民のレーナとの真実の愛に目覚めてしまったのだという。
ショックを受けたイリメルは、強さとは何かについて考えた。そして悩んだ末、己の強さを確かめるためにモンスター討伐の旅に出ることにした。
旅の最中、イリメルはディータという剣士の青年と出会う。
彼の助けによってピンチを脱したことで、共に冒険をすることになるのだが、強さを求めるためのイリメルの旅は、やがて国家の、世界の存亡を賭けた問題へと直結していくのだった。
婚約破棄から始まる(?)パワー系令嬢の冒険と恋の物語。
虐げられてきた妾の子は、生真面目な侯爵に溺愛されています。~嫁いだ先の訳あり侯爵は、実は王家の血を引いていました~
木山楽斗
恋愛
小さな村で母親とともに暮らしていアリシアは、突如ランベルト侯爵家に連れて行かれることになった。彼女は、ランベルト侯爵の隠し子だったのである。
侯爵に連れて行かれてからのアリシアの生活は、幸福なものではなかった
ランベルト侯爵家のほとんどはアリシアのことを決して歓迎しておらず、彼女に対してひどい扱いをしていたのである。
一緒に連れて行かれた母親からも引き離されたアリシアは、苦しい日々を送っていた。
そしてある時彼女は、母親が亡くなったことを聞く。それによって、アリシアは深く傷ついていた。
そんな彼女は、若くしてアルバーン侯爵を襲名したルバイトの元に嫁ぐことになった。
ルバイトは訳アリの侯爵であり、ランベルト侯爵は彼の権力を取り込むことを狙い、アリシアを嫁がせたのである。
ルバイト自身は人格者であり、彼はアリシアの扱われた方に怒りを覚えてくれた。
そのこともあって、アリシアは久方振りに穏やかな生活を送れるようになったのだった。
そしてある時アリシアは、ルバイト自身も知らなかった彼の出自について知ることになった。
実は彼は、王家の血を引いていたのである。
それによって、ランベルト侯爵家の人々は苦しむことになった。
アリシアへの今までの行いが、国王の耳まで行き届き、彼の逆鱗に触れることになったのである。
妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました
日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」
公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。
それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。
そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。
※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる