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8話「代替品」
しおりを挟む「ふふふ、代替品があるのです!」
「代替品ですか?」
「はい。
技術は日々進化しています。
新しい技術を取り込み、コンパクトで持ち運びに便利な新型の魔晄炉ができないか研究していたのです。
祖父の作った魔晄炉は性能は良いのですが、少し大きすぎるんです。
第二王子と結婚後、殿下が賜った公爵家に嫁ぐ予定でしたが、公爵邸からこの屋敷までは距離がありすぎるのですよね。
それでは、いつでもどこでも好きな時に魔晄炉が使えません!
そして試行錯誤の末完成したのが、この魔晄炉二号、持ち運び便利君です!」
私は部屋の隅に移動し、ホコリを被っていたシーツを取りました。
魔晄炉二号持ち運び便利君は、大きさが人の背丈の半分しかありません。重さも小麦粉の袋二個分(五十キロ)なので、手軽に持ち運べます。
「嫁入り道具にするつもりで作ってたんですよね」
第二王子との婚約は破棄されてしまいましたが。
「僕の家にお嫁に来る時に持って来ればいいよ」
「それは助かります」
「それにしても君は本当に凄いね。 この大きな機械をこんなに小さくしてしまうなんて……!
君は天才だよ!」
「そんなに褒められると照れますね。
ですがまだ試運転してないんですよね」
こんなことならさっきの悪魔の内の一体を残しておくべきでした。
「そうなのかい……?
ううっ……!
また体が……!」
カイロス様が苦しそうな声を上げ、その場に蹲りました。
彼の頭に黒色の悪魔が乗っていました。
流石が歩く悪魔ホイホイ……!
カイロス様はアルバート殿下以上の召集体質のようです!
【心地よい。
心地よいぞ。
この人間の生命エネルギーは極上だ!
この力があれば俺はこの世界の覇者にも……ひでぶっ!】
ドスッ! ドスッ!! ゴスッ!! ガスッ!!
「ちょうどよく悪魔が一体手に入りました。
魔晄炉二号持ち運び便利君に入れて溶かしてみましょう」
私の作った魔晄炉二号持ち運び便利君は完璧のハズ!
ちゃんと魔石になってね!
どんな色の魔石が出来るのかも楽しみです!
「スイッチ、オン!」
ドキドキしながら魔晄炉のスイッチを入れると、鈴を転がすような悪魔の断末魔が聞こえ、そのすぐ後魔石が誕生しました!
「成功しました!
今回出来たのは黒色の魔石ですわ!」
悪魔の色と魔石の色は同じになることがおおいようですね。
最初の時に、色の違う七体の悪魔から七色の魔石ができたのは奇跡かもしれません。
「私の作った魔晄炉でもちゃんと魔石が作れることが証明されました。
これで古い魔晄炉を心置きなく壊せます」
「あなたのお祖父様の遺品でしょう?
大きさ以外は完璧ですし、壊すことにためらいはありませんか?」
「少しはあります。
ですが私はこの国を離れる身。
お祖父様の作った魔晄炉は完璧ですが、素人が扱うには危険が伴います。
私がいなくなったあと、誰かが不用意に使って事故を起こすよりは、今ここで壊してしまった方が良いと思うんです。
天国のお祖父様もわかって下さいますわ」
「僕は浅はかでした。
確かに専門知識のいる道具を放置するのは危険ですね」
「はい。
という訳で今から魔晄炉を壊しますので、カイロス様は魔晄炉二号持ち運び便利君を持って外で待っていて下さい」
私は壁に立てかけてあった鉄製の巨大ハンマーを片手で持ち上げました。
「どこからかそんなハンマーが?! 僕も壊すのを手伝います!」
「それには及びません。
言い方をかえますね。
素人が魔晄炉の破壊に立ち会うのは危険ですので避難してください」
「すみません。
僕がいては迷惑ですよね。
リリアナ様に言われた通り、魔晄炉二号持ち運び便利君を持って外に出ます」
ちょっときつい言い方になってしまったでしょうか?
でも危険なのは本当ですし、ああでも言わないとカイロス様は外に出てくれなそうでしたから。
「……あぅっ!」
「カイロス様、どうされました?」
振り返るとカイロス様が、新型魔晄炉の前に座り込み涙ぐんでました。
「……すみません。
魔晄炉二号持ち運び便利君が重くて持ち上がらなくて……」
カイロス様の頬は赤く色づいてました。
そんな綺麗な顔で頬を染め、上目遣いで見つめないでください!
心臓がドキドキして仕方ありませんわ!
「カイロス様は今まで悪魔に取り憑かれ、日常生活も思うようにいかなかったのです。
体力がなくても仕方ありません。
魔晄炉二号持ち運び便利君は私が外まで運びます」
「申し訳ありません。
役に立たなくて……って、えっ??」
私は片手でカイロス様を担ぎ上げ肩に乗せました。
そしてもう片方の手で魔晄炉二号持ち運び便利君を持ちました。
「面倒なので一度に外に運んでしまいますわ」
「待ってくださいリリアナ様!
僕は自分で歩けますから!」
カイロス様がバタバタと暴れています。
「じっとしてくださいカイロス様。
運びにくいです。
重さのことなら心配いりません。
華奢なカイロス様は羽のように軽いですから」
「それはそれでショックなのですが……」
カイロス様を励まそうと思ったのですが、凹ませてしまったようです。
何にしても彼が暴れなくなったので運びやすくなりました。
私はカイロス様と魔晄炉を外に運び出し、「いいですかここでおとなしく待っていてくださいね。何があっても中に入ってきてはいけませんからね」外で待っていてもらうことにしました。
「分かりました。
あなたにこれ以上迷惑をかけたくないので、ここで大人しくしています」
カイロス様は泣きそうな顔をしていました。いや実際少しだけ泣いていました。
魔晄炉の解体とか常人には聞きなじみのない言葉です。
良い家のお坊ちゃまだと思われる カイロス様には、メンタルへのショックが大きかったようですね。
「ぐすっ……。
僕だって男の子なのに……本当は僕がリリアナ様をお姫様抱っこしたいのに……」
彼がブツブツ言っていましたが、私にはよく聞こえませんでした。
それよりも今は魔晄炉の破壊が先です。
グズグズしていたら王家がなんて言ってくるかわかりません。
もう彼らに関わりたくないので、さっさと魔晄炉を破壊してカイロス様と一緒に国外に出ましょう。
魔晄炉の部屋にある部屋に戻った私は 、ハンマーを持ち上げ、力いっぱいふるいました。
「お祖父様ごめんなさい。お祖父様の最高傑作を破壊します。コンパクトで持ち運びに便利な第二魔晄炉を作ったので、安心して成仏してください!」
アルバート王子に取り付いた悪霊を最初に倒したのは四歳の時だったなぁ、なんてことを思い出しながら私はハンマーを振るう。
さよなら昔の婚約者!
私はあなたの上位互換の悪魔ホイホイのカイロス様を見つけたので、そちらはそちらで聖女様と仲良くやってくださいね!
人前で婚約破棄されたもやもや、実家から勘当されたもやもやを魔晄炉にぶつけていきます!
途中魔晄炉で分解し損ねた悪霊や悪魔の残りかすが出てきたので、ハンマーで潰しておきました。
こういうこともあるので、素人で悪魔 ホイホイのカイロス様はこの部屋に置いとけなかったんですよね。
カイロス様は外に避難させておいて正解でしたわ。
そうしてハンマーを振るうこと三十分。
魔晄炉は無事に鉄くずと化しました。
「ふーー、魔晄炉も無事に破壊できましたし、新しい婚約者もゲットしましたし、これで心置きなく旅に出れますね」
さて外にいるカイロス様の元に向かわなくては、
彼は今何してるかしら?
青空の下、そよ風に吹かれながら、のんびり馬に草でも与えているかしら?
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