助けた旅人が隣国の第三皇子!? 運命的な出会いからの即日プロポーズ! 婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!・完結

まほりろ

文字の大きさ
12 / 16

12話「リリアナ、色仕掛けをする」

しおりを挟む



「今日は遅いので宿駅に泊まりましょう」

街道には大きな街はあっても村はないのです。

村人がよそ者が村の近くを歩くのを嫌がるのと、街道沿いに畑を作ると馬やロバに作物を食べられてしまうからです。

そんな訳で村は街道から少し外れた所にあります。

それでは旅人が宿がなくて困るので、近くの村人が街道沿いに宿駅を作り、宿やご飯を提供しているのです。

宿駅によっては民芸品なども売られています。

カイロス様は疲れているようで、無言でコクリと頷きました。

彼が疲れるのも無理はありません。

カイロス様はあのあと何度も悪魔に取り憑かれていましたからね。

でもこれは好都合かもしれません。

私にはある計画があります。

それは、カイロス様を逃さない為に、色仕掛けで迫って既成事実を作ってしまおうというものです。

アルバート殿下の時は、手も触れさせなかったせいで、代わりが見つかったらあっさり婚約破棄され、頼み込んでも愛人にすらして貰えませんでしたからね。

慎みを持つことも大事ですが、本命に逃げられたら元も子もありません。

……いえ、少しだけ嘘を付きました。

アルバート殿下には手も触れさせなかったのではなく、彼が私を気味悪がって手どころか指にすら触れようとしなかったのです。

アルバート殿下は、ネクロマンサーをばい菌か何かと思っていたのかしら?

そんな苦い思いをもうしたくありません!

男性は一度体を交えた相手には、情が湧くと聞いたことがあります。

カイロス様に本命が出来た時にあっさり捨てられないように、せめて愛人にくらしてもらえるように、彼の自己肯定感が低いうちに色仕掛けで迫っておきましょう!

 

◇◇◇◇◇


「二名様ですね?
 お部屋はどうされますか?」

「ダブルルーム一つお願いします!」

ダブルルームとはダブルベットが一つある部屋のことです。

主に恋人同士や夫婦で泊まります。

「えっ? ダブルルーム……ですか?」

うつらうつらして、半分眠っていたカイロス様が、ダブルルームというワードに反応しました。

身の危険を感じたのかもしれません。意外と勘の良いかたですね。

「カイロス様、お疲れでしょう?
 さっそくお部屋に参りましょう」

私は部屋の鍵を受け取ると、まだぼんやりとしているカイロス様を部屋まで連れていきました。

「えっ、でも……ちょっと待って下さい……!」

カイロス様は事態が飲み込めないらしく、オロオロしています。

私はカイロス様を部屋に押し込み、後ろ手に鍵をかけました。

「ふふふ、もう逃げられませんよ」

カイロス様はベッドの上でぷるぷると震えています。

嫌だ、これでは私完全に悪役じゃないですか!?

いえいえ、アルバート殿下の時のように人前で婚約破棄される醜態をさらさない為です。

その為には色仕掛けが必要なのです!

そうです色仕掛け、色仕掛け、色気……?

部屋に全身を映す鏡があり、その鏡に映った自分の姿を見て、私は愕然としました。

ありふれた栗色の髪、カラスの羽のような真っ黒な瞳、平凡な顔、メリハリの少ない体……山賊に高く売れないと言われるのも納得です。

…………ない!

色仕掛けしようにも、私には色気なんか一ミリもない!!

体の力が入らなくなった私は、その場にへたり込みました。

聖女様も、殿下の浮気相手のエマ様も、ミリア様も、ロザリア様も、みんな美人でボンキュボンのナイスバディでした。

そんな方々と自分を比べようなんて、なんて厚かましい!!

「すみませんカイロス様。
 一時の気の迷いでダブルルームを取ってしまいました。
 今から受付けに言って部屋を変えて貰います」

カイロス様は一人にすると、次の日には悪魔に取り憑かれて死んでいそうで心配なので、シンクルルーム二つではなく、一部屋にベッドが二つあるツインルームを取りましょう。

色気もないのに色仕掛けしようなんて……穴があったら入りたいです!

消えてしまいたいです!

魔晄炉で自分を溶かしてしまいたいです!

「リリアナ様、待って下さい!」

「カイロス様……?」

「すみません……リリアナ様が勇気を持って誘って下さったのに……女性に恥をかかせてしまって……。
 リリアナ様とえっと、その……こ、行為に及ぶのが嫌なわけじゃないです……!
 でもそれは、ちゃんと式を挙げてからにしたくて……。
 ちゃんとけじめをつけたくて……。
 すみません、僕がヘレナなばかりに……!」

私はとても愚かです。

このような誠実な方にいつか捨てられるのではないかと疑って、色気もないのに色仕掛けで落とそうとしていたんですから!

「謝らないで下さい。
 悪いのは私ですから。
 こちらこそカイロス様のお気持ちも考えず、強引に事に及ぼうとしてすみません」

「あ、いえ、僕たちは婚約してますし、結婚を待たずに婚約中にそういう事に及ぶ人達もいますから。
 リリアナ様の行動は、別に不自然ではないかと……。
 その、僕がそういうのが嫌だというだけで。
 こちらこそ、融通が効かなくてすみません」

カイロス様は顔が真っ赤でした。

おそらく今まで誰かとこういった話をする事もなかったのでしょう。

「僕達は利害関係の一致から会ったその日に婚約しました。
 見ようによっては恋人や婚約者というよりビジネスパートナーの側面が強いかもしれません。
 でも僕はリリアナ様と、心の繋がりが欲しいです。
 本当に夫婦として愛し会いたいんです」

カイロス様のストレートな言葉を聞き、私の顔に熱が集まりました。

「……はい。
 私も、カイロス様と心の繋がりが欲しいですし、愛し合いたいです」

心臓がドキドキしてます。

こういう事を素面で伝えるのは恥ずかしいものがあります。

「………」
「………」

ち、沈黙が気まずいです!

「あの……!
 私、受付に行ってツインルームに変えて貰いますね!」

「それなら僕も一緒に行きます!」

色仕掛けは玉砕というか自爆しましたが、カイロス様のお気持ちを知ることが出来ました。

彼がとても誠実な方だというのがよくわかりました。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜

遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。 晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。 グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。

「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。 しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。 王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。 絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。 彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。 誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。 荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。 一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。 王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。 しかし、アリシアは冷たく拒否。 「私はもう、あなたの聖女ではありません」 そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。 「俺がお前を守る。永遠に離さない」 勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動…… 追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!

虐げられてきた妾の子は、生真面目な侯爵に溺愛されています。~嫁いだ先の訳あり侯爵は、実は王家の血を引いていました~

木山楽斗
恋愛
小さな村で母親とともに暮らしていアリシアは、突如ランベルト侯爵家に連れて行かれることになった。彼女は、ランベルト侯爵の隠し子だったのである。 侯爵に連れて行かれてからのアリシアの生活は、幸福なものではなかった ランベルト侯爵家のほとんどはアリシアのことを決して歓迎しておらず、彼女に対してひどい扱いをしていたのである。 一緒に連れて行かれた母親からも引き離されたアリシアは、苦しい日々を送っていた。 そしてある時彼女は、母親が亡くなったことを聞く。それによって、アリシアは深く傷ついていた。 そんな彼女は、若くしてアルバーン侯爵を襲名したルバイトの元に嫁ぐことになった。 ルバイトは訳アリの侯爵であり、ランベルト侯爵は彼の権力を取り込むことを狙い、アリシアを嫁がせたのである。 ルバイト自身は人格者であり、彼はアリシアの扱われた方に怒りを覚えてくれた。 そのこともあって、アリシアは久方振りに穏やかな生活を送れるようになったのだった。 そしてある時アリシアは、ルバイト自身も知らなかった彼の出自について知ることになった。 実は彼は、王家の血を引いていたのである。 それによって、ランベルト侯爵家の人々は苦しむことになった。 アリシアへの今までの行いが、国王の耳まで行き届き、彼の逆鱗に触れることになったのである。

「きみは強いからひとりでも平気だよね」と婚約破棄された令嬢、本当に強かったのでモンスターを倒して生きています

猫屋ちゃき
恋愛
 侯爵令嬢イリメルは、ある日婚約者であるエーリクに「きみは強いからひとりでも平気だよね?」と婚約破棄される。彼は、平民のレーナとの真実の愛に目覚めてしまったのだという。  ショックを受けたイリメルは、強さとは何かについて考えた。そして悩んだ末、己の強さを確かめるためにモンスター討伐の旅に出ることにした。  旅の最中、イリメルはディータという剣士の青年と出会う。  彼の助けによってピンチを脱したことで、共に冒険をすることになるのだが、強さを求めるためのイリメルの旅は、やがて国家の、世界の存亡を賭けた問題へと直結していくのだった。  婚約破棄から始まる(?)パワー系令嬢の冒険と恋の物語。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

処理中です...