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14話「目覚めたら鳥がチュンチュン鳴いていたら、朝チュンですわ!」
しおりを挟む小鳥が窓の外でチュンチュン騒いでます。
朝……?
うーん、嫌です……登城したくないです。
アルバート殿下の愚痴を聞きたくないです……ああでも、生きの良い悪霊が彼に取り憑いていたら、とっ捕まえて魔晄炉に焚べてやりたいです……。
「リ、リリアナ様……」
「う~~ん、お母様……あと五時間……スピー」
「僕はお母様ではありませんよ。
それにあと五時間も寝ていたらお昼になってしまいますよ」
ふむふむ……この冷静なツッコミ、家族ではないようです。
それに自宅のベッドよりふかふかです。
それにいい匂いがしますし、綺麗な声も聞こえます……まるで天使のような……。
んん……? 天使……?
そうでした!
私、実家から勘当され旅にでした!
アルバート殿下には婚約破棄されて、彼の新しい婚約者はボンキュボンのナイスバディの商売敵の聖女様で……!
いえ、そんなことはどうでもいいことです!
私の新しい婚約者は、天使のように汚れない心を持った美少年の……。
「お、おはようございます……カイロス様」
視界いっぱいに、カイロス様の美しいお顔が広がっていました。
あれ? カイロス様がこんなに近くに……?
昨日は確か、ベッドの端と端に別れて寝たはず。
起き上がって自分の寝ている位置を確認しました。
どうやら私は寝ている間にベッドの端から端まで移動していたようです。
「す、すみません!
私ったら寝相が悪くて……!」
私は急いでカイロス様から距離を取りました。
昨夜カイロス様には指一本触れないと、約束したばかりなのに……!
まさかしらない間に移動して、彼にピッタリくっついて、眠っていたのは!
「あの……大丈夫ですから。
不可抗力だと分かっていますから」
なんて無垢な瞳をしているのでしょう!
彼の信頼を裏切りたくありません!
「それよりリリアナ様は昨日、あまり眠れなかったのではありませんか?
目の下にくまが出来ていますよ」
「えっ?」
ベッドから下りて、部屋に取り付けられている鏡に顔を映すと、目の下にうっすらくまができていました。
なんということでしょう! ただでさえ平凡な容姿なのに、くままで作ってしまうとは!
カイロス様に「不美人な嫁はいりません」と言われてしまいます。
こ、これからは美容と健康にも気を使わなくては……!
「疲れすぎていると眠れない事があると聞いたことがあります。
リリアナ様は僕に取り憑いた悪魔を祓ったり、魔晄炉を破壊したり、荷物を運んだり、馬車の操縦をしたり、山賊を追い払ったり、宿駅の手配をしたりで、疲労していたのかもしれません。
すみません、僕が役に立たないばかりに、リリアナ様だけに負担をかけてしまって」
カイロス様がしょんぼりしてしまいました。
「ち、違いますよ!
私が寝不足なのは昨日カイロス様の寝込みを襲ってきた悪魔をやっつけていたからで……けっして昨日の疲れがでたからでは……」
「えっ? 悪魔が僕の寝込みを……?」
迂闊でした!
カイロス様を不安にさせないために、彼が悪魔に寝込みを襲われたことは内緒にするハズだったのに……!
まだ、寝ぼけていたとはいえ、とんでもない大ポカを……!
「ああ、でも悪魔はちゃんとやっつけたのでご心配なく!
朝一番に魔晄炉で溶かして魔石に変えてやりましょう!」
「リリアナ様……!」
「はい……!」
彼が大きな声を出すなんて珍しいですね。
悪魔の姿はカイロス様には見えません。下手な言い訳と思われたでしょうか?
彼は裸足で私の傍まで来ると、私の手をギュッと握りしめました。
「それで寝不足だったのですね。
僕の為に夜中まで戦ってくれたのに、僕は何も気づかなくてすみません」
「悪魔に寝込みを襲われた話、信じてくれるのですか?」
「リリアナ様の言葉を疑う理由がありません」
ピュアです! カイロス様の心が眩しいくらいにピュア過ぎます!
彼は絶対良いところの御曹司です! そして家族に大切に育てられたに違いありません!
でなければ、この年まで純粋無垢なまま育つ筈がありません!
「それに昨日はぐっすり眠れたのです。
旅の疲れが出たからかと思いましたが、旅に出たあともリリアナ様と出会う前は旅に毎晩うなされていました。
だから昨日僕がぐっすり眠れた理由が、リリアナ様が一晩中僕を守ってくれたからだと仮定すると、納得がいくんです」
「カイロス様が昨日ぐっすり眠れたのならよかったです。
こころなしかあなたの目の下のくまが薄くなってます。
それに血色も良くなってるみたいです」
「僕の代わりにリリアナ様がやつれていくのは嫌です!
だから僕のことはいいですから、リリアナ様も夜はしっかり眠ってください」
「その結果、カイロス様が悪魔に取り憑かれてるのに気づかず、あなたがうなされているのを放置するのは嫌ですわ」
何か対策を考えなくてはいけませんね。
浄化力の高い聖女様なら傍にいるだけで、悪魔や悪霊を消し去ってくれるんでしょうけど。
私にはそのような力はありません。
起きていて悪魔を拳で黙らせるのが手っ取り早いんですよね。
「悪魔はネクロマンサーのリリアナ様を恐れているかもしれません。
リリアナ様が僕を抱きしめて眠れば悪魔も襲ってこないかも……」
「えっ? カイロス様を抱きして眠るんですか……?」
「す、すみません!
考えなしに大胆な提案を……!」
「い、いえ、起きになさらず……!」
カイロス様が私からパッと手を離し、慌てた様子で私から距離を取りました。
私がカイロス様を抱きしめて眠るのは最終手段として、何か対策を考えなくてはいけないのは事実ですね。
【けっ、朝っぱらからイチャイチャしてんじゃねーよ!】
ふと部屋の隅に目をやると、昨夜げんこつで黙らせ、特殊なロープで縛り上げ、す巻きにして転がしておいた悪魔が不貞腐れた表情で悪態をついてました。
カラス除けの為に、畑に死んだカラスを吊るしておくと良いと聞いたことがあります。(※良い子は真似しないで下さい)
「カイロス様、心配いりませんよ。
悪魔避けの良い解決策が見つかりましたから」
私が悪魔に向かってニコッと微笑むと、悪魔が【ヒッ……!】と短く悲鳴を上げました。
◇◇◇◇◇
どついてボコボコにした悪魔を特殊なロープで縛り、ロープを馬車の後ろにくくりつけ馬車で引きずることにしました。
そうしてボロボロになった悪魔を宿駅の部屋の窓から吊るして置きました。
なんと効果てきめん!
ボロボロの悪魔に恐れをなしたのか、その晩は他の悪魔に寝込みを襲われることはありませんでした。
【頼む……殺して……】
よく朝、朝露に濡れた悪魔を取り込むとき、悪魔が何か言っていましたが、悪魔の言葉を聞いてやる義理はありません。
ネクロマンサーを舐めないで下さい。
悪魔と取り引きなんかしませんからね。
しかもこいつは、ひ弱なカイロス様の寝込みを襲い馬乗りになってた悪魔です。
簡単に魔石に変えて楽になんかしてやるもんですか。
「なぜか昨日はぐっすり眠れました」
「私もです」
こうして私達は悪魔の犠牲の上に安眠を手に入れたのです。
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