【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」

まほりろ

文字の大きさ
9 / 22

9話「初めて『好き』と言われました」

しおりを挟む
――レーア・カイテル視点――


私を天使と間違えた男爵様は、私に告白をし、母親と領民のことを託してまた眠りについた。

「オーベルト男爵は、お嬢様を天使と間違えていましたね」

「そうね」

オーベルト男爵を担いで保健室に運び、ベッドに寝かせた。

異性と二人きりになるわけにはいかないので、チェイも一緒にいる。

不意に目を覚まされたオーベルト男爵は、白いカーテンに囲まれたこの場所を、天国だと勘違いしたらしい。

その上、私を天使と呼んだ。

「チェイ、私殿方に『天使』と言われたのの初めてだわ」

「えっ? そうなのですか?」

「つり目に赤い髪なので『魔女』とか、『悪魔』とか言われたことはありますが」

「誰ですか? 
お嬢様にそんなことを言った愚か者は!」

「第一王子です」

「くそっ王子がっ! 
……お嬢様の前で汚い言葉を使ってしまいました。
申し訳ありません」

「いいのよ」

チェイが殿下を罵ってくれて、すこしだけ溜飲が下がった。

「それから……殿方に『好き』と言われたのも初めてだわ」

「ええっ? 
ゴミ王子……もとい殿下からは『好き』と言われなかったのですか?」

「一度もないわ。
もともとあの方との婚約は家同士の結びつき、政略てきなものでしたから、お互いに愛などありませんでしたから」

それは三百年以上前の話。

当時エーダー王家は存在せず、エーダー家はある王国に使える公爵にすぎなかった。

ある時、エーダー公爵は孤児を拾った。

エーダー公爵は、拾った孤児の潜在能力の高さに目をつけ、英才教育を施した。

孤児だった少年はたくましく成長し、魔王を倒すまでに至った。

エーダー公爵は悪政を敷いていた王族を滅ぼし、国を興し、初代国王となった。

その末裔が第一王子のベルンハルト・エーダーだ。

そしてエーダー公爵に拾われた孤児の末裔が、私の実家カイテル公爵家だ。

魔王を倒した孤児は勇者と崇められ、エーダー国王からカイテルの姓と公爵の地位を与えられた。

私が第一王子の婚約者になったのも、殿下を守るためにも剣術や武術やロッククライミングの訓練を受けたのも、

勇者こと初代カイテル公爵が、自分の死後百年間カイテル公爵家の子孫に、エーダー王家を守ることを誓ったためだ。

そういう誓いは自分の代でとどめて、子孫に残さないで欲しい。

しかし幸いなことに初代国王と、初代カイテル公爵の交わした約束は口約束。

カイテル公爵家を縛る契約書はない。

しかも勇者が死後、百年以上経過している。

今までは王家には義理で仕えてきたが、公衆の面前で婚約破棄してくる愚劣な王子が王太子候補では……そろそろ王家を見限る頃合いね。

「チェイ、私守りたい人ができたわ」

「どういうことですか、お嬢様?」

「殿下に罵られている私の前に、ミハエル・オーベルト男爵が颯爽と現れたとき、胸がドキドキしましたの。
いまもオーベルト男爵の寝顔を見ているだけで、心臓がキュンキュンと音を立てているわ」

「それはつまり……」

「ミハエル・オーベルト男爵に恋をしてしまったみたい。
この年になって初めて恋を知るなんて恥ずかしいわ」

ほのかに頬を染める私を見て、チェイは驚いた顔をしていた。

「私も脳筋だった勇者の血を引いているのね。
助けられた人に恩を返し、一生をかけて一人の人に尽くしたいと思ってしまうのだから。
オーベルト男爵に受けた恩に報いるために、一生をかけてオーベルト男爵をお守りするわ」

「えっ? 
冗談ですよねお嬢様? 
この地味でださくてちっさい瓶底眼鏡男を愛してしまわれたのですか?!」

「チェイ、動揺しているのは分かるけど、歯に衣が着せられなくなっているわよ」

「し、…………失礼いたしました! 
ですがお嬢様、オーベルト男爵はその……ぶさ……あまり見目がよくありませんが」

「人間なんて皮を一枚剥げばみんな同じようなものよ。
王子殿下も顔だけは良かったけど、他は平均以下。
特に性格は最低だったじゃない。
殿下のおかげで私気づいたの、人間に大切なのは中身だって」

「確かに中身は大切ですが……」

「やっぱり! 
チェイもそうおもうでしょう!」

第一王子は、生徒会の仕事の2/3と、王子の仕事の3/4を私がこなしていた事を知らない。

もうすぐ卒業するので生徒会の仕事はなくなりますが、第一王子としての仕事はどうなさるのかしら?

第一王子のテストの順位が毎回首席だったのも、教師がテストに出る問題と答えをそれとなく王子に教えていたからです。

教師たちは成績上位者に圧力をかけて、わざと問題を間違えて、王子に首席譲るように強要していた。

私も何度わざと問題を間違えたことか。

私が万年二位に甘んじていたのには、理由があったのです。

第一王子はこれからどうするのかしら? 

私との婚約を破棄したことを国王陛下が知ったら、きっとカンカンね。

謹慎で済めばいいけど……勘当? 
除籍? 
王位継承権の剥奪もありえるわね。 

婚約を破棄された私には関係ありませんけど。

第一王子が王族から除籍されれば、王子は王族の仕事から開放されますし、国は王子のために無駄な税金を遣わなくてすみますね。

「オーベルト男爵ったら、メガネをかけたまま寝てしまうなんて」

オーベルト男爵の瓶の底のような眼鏡を外すと、あどけない寝顔が見られた。

「可愛い」

オーベルト男爵の寝顔を見ていたら、幸せな気分になった。

「はぁ~~。
お嬢様も恋をすると、普通の女の子になってしまわれるのですね」

オーベルト男爵の寝顔を愛でている私の横で、チェイが深く息を吐いた。


☆☆☆☆☆


※伯爵令嬢のハンナと、レーアのお母さんのカイテル公爵夫人の話し方が同じになってしまいました。(^_^;)



☆☆☆☆☆☆☆☆





昨夜の地震の影響で感想の返信が遅れてます。すみません。いただいた感想はちゃんと読んでます。時間が作れたら返信します。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの
恋愛
「失礼いたしますわ」――断罪の広場で令嬢が告げたのは、たった一言の沈黙だった。 侯爵令嬢レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、“涙の聖女”によって悪役とされ、王太子に婚約を破棄され、すべてを失った。だが彼女は泣かない。反論しない。赦しも求めない。ただ静かに、矛盾なき言葉と香りの力で、歪められた真実と制度の綻びに向き合っていく。 「誰にも属さず、誰も裁かず、それでもわたくしは、生きてまいりますわ」 これは、断罪劇という筋書きを拒んだ“悪役令嬢”が、沈黙と香りで“未来”という舞台を歩んだ、静かなる反抗と再生の物語。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。 王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。 アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。 薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。 魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。 ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。 婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

処理中です...