完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え〜の効果で妖精王が釣れました・完結

まほりろ

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1話「フンメル国の王太子妃」

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フンメル国には完璧な淑女と称される王太子妃がおりました。

金色の艶のある長く美しい髪、白磁のようにきめ細かな肌、エメラルドのように輝く瞳、聡明でしとやかな彼女は、完璧な淑女と称され、フンメル国の宝石と称されていました。

しかしそんな彼女にも人知れぬ悩みがありました。

「はぁ……、今日もバナード様のお渡りがなかったわ。私はそんなに魅力がないのかしら……?」

アデリンダがエーレンベルク公爵家から嫁入りして一年。

彼女の夫である王太子バナードは、新婚初夜に寝室を訪れず浮気相手の元に通っていました。

それから一年、王太子は一度も寝室を訪れたことはありません。

アデリンダは王太子が放り出した政務を代わりにこなし、美しく輝ける期間を仕事に費やす日々を送っていました。

「バナード様は今日も彼女のところにいるのかしら……?」

アデリンダが彼女と呼ぶのは、ミラ・シェンク男爵令嬢のことです。

ミラは王太子と学生時代からの仲で、彼は新婚初夜もミラの元に通っていました。

バナードは「結婚して一年経過しても王太子妃が懐妊しなければ、アデリンダ王太子妃は妻の勤めを果たしてないと言える! よって役立たずの正妃を補佐するためにミラ・シェンク男爵令嬢を愛人として迎え入れる!」と公言していました。

「王太子の夜のお渡りがなくては、懐妊のしようがないわ。
 そう思わなくてブラザ?」

ブラザはアデリンダに幼い頃から公爵家に仕える侍女です。

王家への輿入れの際、公爵家から連れてきたのでした。

アデリンダはブラザをとても信頼していました。

彼女にとってブラザは姉のような存在で、ブラザにとってのアデリンダは仕えるべき主であり、可愛い妹のような存在だったのです。

「アデリンダ様に、あのようなポンコツ男はふさわしくありませんわ」

「そんなことを言ってはだめよブラザ。
 不敬罪で捕まるわよ」

アデリンダは侍女に注意しました。

彼女が侍女を注意したのは、侍女の身を案じてのことです。

「捕まっても構いません。
 アデリンダ様は、幼い頃から容姿端麗、淑女としてのマナーもパーフェクト、学園を主席で卒業され、王太子妃教育も歴代最高の成績で納められた、完璧な淑女と称されております。
 そのアデリンダ様を妻として娶りながら一年間も放置しているなんて、あの男が王太子でなかったら殴っているところです!」

「落ち着いてブラザ。
 それだけ私に女としての魅力がないということよ。
 彼女……ミラ様はきっと殿方を虜にする魅力に溢れているのね」

学生時代の二人が、学園の中庭で仲睦まじく腕を組んで歩いていた姿を思い出し、アデリンダは深く息を吐きました。

「私にもミラ様の半分でも愛嬌があれば……」

アデリンダの長年の淑女教育で培われた感情を読み取れない優雅な微笑みは、バナードの心を掴むことはできなかったのです。

彼の心を掴んだのは子供のように無邪気に笑うミラだったのです。

「私もミラ様のように無邪気に笑えたら……」

アデリンダは手鏡を覗き込み、そこに映る無邪気さとはかけ離れた、社交的なほほ笑みを浮かべる自分の顔に辟易していました。

幼い頃から王太子の婚約者として厳しい淑女教育を受けてきたアデリンダには、もう幼子のように無垢に笑うことはできなかったのです。

彼女はその事をとても気に病んでいました。

「アデリンダ様、あれは愛嬌とか無邪気とかそんな可愛いものではありませんわ!
 例えるなら蝶の鱗粉、蜘蛛の巣、雀蜂の針です!
 男を篭絡し、確実に仕留めるための罠や毒です!
 あんな軽薄な笑顔にころっと騙される王太子の気がしれません!」

侍女は思いつく限り、ミラの悪口わ並べ立てました。

彼女は頬を赤らめ、眉間にしわを寄せ、それはそれほとそろしい顔をして、ミラの事をけなしました。

よほど腹に据えかねる思いがあったのでしょう。

「それでも彼女は殿方に一途に愛されている……羨ましいわ」

アデリンダは美しい眉をハの字に下げました。

彼女はそんな表情も淑やかで、絵になりました。

「おいたわしやアデリンダ様。
 あんな安っぽい女に王太子がのめり込んだばかりに、こんなご苦労を……。
 はっ、安っぽい!
 わたくし、アデリンダ様に足りないものがわかりました!」

ブラザは何かに気づいたようで、瞳をキラリと光らせたのでした。











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