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4話「王子、一目惚れする」
しおりを挟む小鳥のさえずりのような美しい声、優雅な所作、鼻筋の通った優美な顔立ち。
彼女の周りは神々しい光に満ちていて、俺は天使が空から舞い降りてきたのかと錯覚した。
次の瞬間、俺は彼女に恋をしていた。
一目惚れというのは本当にあるのだな。
彼女に比べたらクロリスなど白鳥の横に立つ鶏にすぎない。
ダイヤモンドとガラス玉、純金と銅、銀の皿と欠けた陶器の皿、そのくらいソフィアとクロリスには差があった。
「失礼だとは思いながら、殿下とルーリー先生のお話をドアの前で聞かせていただきました」
ソフィアが申し訳無さそうに言った。
「あ、いや……あれは」
ソフィアの家庭教師に、彼女を婚約者候補から外すと言ったことを本人に聞かれていた。
急いで撤回しないと……!
「殿下は私と同じ年であらせられるのに、もう真実の愛で結ばれた方を見つけられたのですね。
羨ましいですわ。
ぜひその方と添い遂げてください。私、陰ながら殿下の恋を応援しております」
そう言ってソフィアはニッコリとほほ笑んだ。
彼女の眩しいほど輝いている笑顔に俺の心臓は撃ち抜かれた。
な、なんとかソフィアを婚約者候補に戻さなくては! いや婚約者候補から婚約者にしなくては!
「違うんだソフィア……! あれは……」
ソフィアに一歩近づこうとしたら、公爵とフォンゼルが彼女の前に立ちはだかった。
「殿下、僕も殿下の身分違いの恋を応援しております」
フォンゼルはそう言ってニコリと笑う。
「聞いてくれフォンゼル……!
あれはだな……!」
「わしは殿下がソフィアを婚約者候補から外すとおっしゃったことをしかとこの耳で聞きました。
バウムガルトナー公爵家の当主として殿下のご意思を尊重いたします」
宰相が俺に顔を近づけてほほ笑んだ。
公爵もフォンゼルも口角は上がっているのに目は全然笑っていなくて、雪よりも冷たい視線に背筋が寒くなった。
「もう娘は殿下の婚約者候補ではありません。
今後は娘を名前で呼ぶことはお控えください。
それから娘は本日初めて登城いたしました。
よってペトリ男爵令嬢に嫌がらせをしたのは娘ではありません」
「えっ?」
ソフィアは登城したことがない?
ではだれがクロリスに嫌がらせをしていたというんだ?
「この件は公爵家の名誉に関わりますので、徹底的に調べさせていただきます」
公爵の言葉は丁寧だが、彼の発する言葉は冷たかった。
「ああ、そうしてくれ」
俺はそう返した。
誰がソフィアを悪女に仕立てようとしていたのか単純に気になった。
そいつが余計なことをしなければ、ソフィアは今も俺の婚約者候補のままで、いずれは彼女と正式に婚約できたのに。
「それにしても王妃殿下は遅いですね。
もう約束の刻限を過ぎていますよ」
フォンゼルが置き時計をちらりと見た。
「何者かが王妃殿下の名を騙り娘を呼び出したのかもしれん。
そちらも調査することにしよう」
公爵の言葉に俺の心臓がどきりと音を立てた。
「王妃殿下の名を騙り公爵家を欺いたのです、王家から然るべき罰を受けるでしょう。
バウムガルトナー公爵家を欺いた者をわしも許すことはできません。
必ずやバウムガルトナー公爵家を敵に回したことを後悔させてやります」
「それがいいですね、お義父様」
公爵とフォンゼルが氷のように冷たい目つきで俺を見据えた。
「ひっ……!」
二人の殺気に気圧され、俺はその場で尻もちをついてしまった。
ばっ、バレてる?
俺が母上の名を騙ってソフィアを呼び出したのがバレているのか??
「大丈夫ですか? 殿下?
お顔の色が優れないようですが」
宰相が俺に手を差し出す。
「へ、平気だ……」
だが俺は怖くてその手を掴むことができなかった。
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