妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ

文字の大きさ
3 / 53

3話「城下町と罵声」

しおりを挟む


「アリー、平気なのだ?
 死にそうな顔をしているのだ」

魔法で姿を消したフェルが小声で話しかけてきました。

「だ、大丈夫よ。
 ちょっとコルセットがきつくて苦しいだけだから……」

昨日はあのあと、お風呂に入れられて身体中をくまなく洗われました。

そのあとは髪を何度もブラッシングされ、ドレスの採寸をされました。

私がベッドに入ったのは深夜でした。

翌日は早朝から叩き起こされ、コルセットでギュウギュウに腰を締められ、急ごしらえで作ったと思われるドレスを着せられました。

「そのドレス……少し派手……というか、
 これ以上ないぐらいダサいのだ。
 髪型も変なのだ。
 お化粧も全然アリーに似合っていないのだ」

ドレスを着たあとは髪を縦ロールにされ、顔にベッタリとおしろいを塗られました。

全ての支度を終えて鏡に自分の姿を写したとき、あまりの酷さに私はめまいを覚えました。

金色のけばけばしいドレスをまとい、髪は古の時代に流行った縦ロール、元の形がわからなくなるほど化粧を施された顔……。

この姿で人前に出なくてはならないなんて……嫁ぐのも楽ではありません。

そうして支度を終えた私を、昨日私を部屋まで迎えに来たメイドが、屋根のない馬車に放り込みました。

なんでも私が嫁入りする姿を、民衆に披露しなくてはいけないそうです。

それが王族のしきたりなのだそうです。

王族は嫁ぐときに、こんなことをしなくてはいけないのですね。

昨日までみすぼらしい格好で過ごしていたので、自分が王族であることを忘れていました。

長年放置していたのに急に引っ張り出して、王族としての努めを果たせとか、王族のしきたりをこなせとか言われても、困惑するばかりです。

こんな派手派手な格好をさせられるのなら、母の古着で嫁いだ方が、ずっといいです。


 ◇◇◇◇◇


「アリー、顔色が青を通り越して土色になっているのだ」

「街を出たら、どこかで着替えさせてもらいましょう」

馬車の客席には私とフェルだけしか乗っていません。

だからこうしてフェルと気軽に話せています。

御者席とは少し離れているので、フェルの声が聞こえる心配はないでしょう。

「仕方ないわ。
 いつもの格好では隣国に嫁げないし、民衆の前にも出れないもの」

「僕はいつものアリーの方が好きなのだ」

「ありがとう、フェル。
 私もいつもの格好の方が動きやすくて好きよ」

フェルと話している間に、馬車はお城の広い庭を通り過ぎ、大きな門に近づいていました。

生まれて初めて見る外の世界に、私の胸は少しの不安と、沢山のわくわくとドキドキでいっぱいでした。

馬車はいくつかの門をくぐり、城と街を繋ぐ桟橋を渡り終えました。

「あれが街なのね!」

馬車から見えたのは、私が本でしか知らなかった世界でした。

街には大小沢山の建物が所狭しと並んでいました。

「この街でお母様が若い頃暮らしていたのね」

もしかして、母が働いていたカフェの前も通るかしら?

私がドキドキしながら待っていると、程なくして街の中心地に差し掛かりました。

事前に馬車が通る通達があったのか、沿道には大勢の人が並んでいました。

私は沿道に並んでいる人たちに笑顔で手を振りました。

生前、母が教えてくれました。

王族はパレードのとき、民衆に向かって笑顔で手を振るものだと。

ですが……彼らの反応は喜ばしいものではありませんでした。

「贅沢三昧の姫様は、嫁入りするときのドレスも華美だね!」
「金遣いの荒い王女様は馬車もドレスも豪華だな!」
「金銭感覚の狂った暴力王女は引っ込め!!」

沿道にいる人たちが、私に向かって大きな声で叫んでいます。

贅沢三昧? 金遣いが荒い? 暴力王女??

私にはなんのことかわかりませんでした。

街の皆さんは、私を親の敵でも見るような目で睨みつけてきます。

民衆からの怒りがひしひしと伝わってきます。

「みんな何に怒っているのかしら?
 贅沢三昧とか金遣いが荒いとか暴力王女とか、なんのことかしら?」

私は母が亡くなってから八年間、食事も衣服も満足に与えられずに育ちました。

なのに民衆は私がお城で贅沢な暮らしをしていたと思っているみたいです。

母が亡くなってから使用人に放置され、フェルと二人で過ごしたのに、私が誰に暴力を振るったというのかしら?

「フェル、私、街のみんなに嫌われているみたいね」

小声でフェルに話しかけると、彼もこの状況に困惑しているみたいでした。

「何かがおかしいのだ!
 僕、ちょっと調べてくるのだ。
 すぐ戻るのだ」

そう言ってフェルは馬車を飛び出し、どこかへ飛んでいってしまいました。

フェルは姿を消しているので、民衆にはその姿は見えません。

彼がいなくなり、私は急に心細くなってきました。

フェルがいなくなったあとも、民衆からの暴言は止むことはありません。

彼と二人だから耐えられた暴言も、一人だと堪えるものがあります。

フェル……早く戻ってきて!

私は天に向かって祈りました。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...