妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ

文字の大きさ
10 / 53

10話「初夜」

しおりを挟む


結婚式のあと、お披露目パーティーも、パレードもありませんでした。

私は馬車に乗せられ真っ直ぐに離宮に帰されました。

式にはたくさんの貴族が来ていたが、国王夫妻の姿は見えませんでした。

王太子の結婚式に、国王夫妻が式に参列していないのには、何か理由があるのでしょうか?

王太子殿下に質問しても、教えてくれませんよね。

離宮に帰り、私はゴテゴテしたウェディングドレスを脱ぎ捨てました。

コルセットがきつくて、苦しかったのです。

縦ロールと厚化粧はそのままです。

化粧も落としたいのですが、それはジャネットが許してくれません。

重たいウェディングドレスを脱いで、安堵したのもつかの間。

「アリアベルタ様、初夜の準備をします」

ジャネットがナイトドレスを持って来ました。

彼女が持って来たのは、猛毒を放つ蛾の羽根のような、悪趣味なデザインのナイトドレスでした。

契約結婚ですし、王太子殿下は私を嫌っています。

きっと彼は、初夜でも私の部屋に来ないでしょう。

それを差し引いても、このデザインのナイトドレスはありません……。

悪趣味が限界突破しています。

ひと目見ただけで、夢に出てきそうなデザインです。

フェルではありませんが、ジャネットに対して「早く国に帰って」と言いたくなりました。


 ◇◇◇◇◇


その夜、離宮にて――

「初夜……なのよね」

現在、私は枕を抱きしめてベッドの隅にうずくまっています。

王太子殿下は私を嫌っているから、初夜に離宮を訪れるとは思いません。

しかし、来ないからといって眠ってしまってよいのか……悩みます。

誓いのキスもフリだけだったことを考えると、彼が初夜に私の部屋に来る可能性は限りなく低いでしょう。

しかし今夜王太子殿下に会えないと、次に彼に会えるのがいつになるかわかりません。

彼と話せないと、いつまで経っても庭園の使用許可を貰えません。

それは困ります。

教会では彼に庭園のことを話す機会がありませんでした。

それならば、披露宴やパレードで……と思っていたのですが、披露宴もパレードも行われませんでした。

クレアさんのお話では、この国の民は飢餓に苦しんでいます。

宮殿の庭師すら、農業に駆り出されるほどです。

一日も早く畑を作り、国民にお腹いっぱいじゃがいもを食べさせてあげたいのです。

果物の種は日持ちしますが、種芋の方は時間が経ちすぎると腐ってしまいます。

そうなっては元も子もありません。

なので、なるべく早く庭の使用許可をいただきたいのです。

だから、できれば王太子殿下に今夜部屋に来てもらいたいです。

もし、王太子殿下が今日この部屋に来なかったら、明日私の方から彼に会いに行きましょう。

彼は私を歓迎しないでしょうが、ことは急を要するのです。

なりふりかまってはいられません。

「王太子はまだ来ないのだ?
 僕、もう眠いのだ……」

フェルがまぶたを擦りながら、大きなあくびをしました。

彼は姿を消して私についてきてくれます。

頼もしいボディーガードです。

午後十時、普段ならとっくにフェルが眠っている時間です。

「ごめんね、フェル。もう少し我慢して」

王太子にいかがわしいことをされそうになったら、フェルに眠りの魔法をかけてほしいのです。

だけどその前に、フェル自身が眠ってしまいそうだわ。

まぁ……誓いのキスもフリで済ませた方が、襲ってくるとは思えないのですが……。

念には念を入れて置かなくては……!

「もう、限界なのだ……」

フェルが枕に頭を乗せ、クークーと寝息を立てました。

「フェル、起きて……」

しかし、彼はぐっすりと眠ってしまったのか、私の言葉が届いていないようです。

そのとき、廊下を早足で歩いてくる足音が聞こえました。

この足音は、ジャネットではなさそうです。

足音に気を取られていると、扉が乱暴に開かれました。

扉の向こうには、王太子が立っていました。

「王太子殿下……!」

彼は黒いジュストコールを纏っていました。

本当に訪ねて来るとは思いませんでした。

フェルは、眠ってしまったし……どうしましょう!?

どうしていいかわからず、私はあたふたしてしまいました。

私は立ち上がって、王太子に向かって頭を下げました。

「王太子殿下、ようこそおいでくださ……」

「悪趣味だな」

王太子殿下は私の言葉を遮り、私のナイトドレスを見て眉をしかめました。

このナイトドレスは、私の趣味ではありません。

好きで着ているわけではないのですが、面と向かって「悪趣味」と言われると傷つきます。

「殿下が、お越しになるとは思いませんでした」

「今日は初夜だ。
 侍従が煩いから顔を見に来ただけだ。
 すぐに帰る。
 お前も血なまぐさい男に触れられたくはないのだろう?」

「それは……」

王太子殿下に「化け物」と言ったのはジャネットです。

一介のメイドにすぎないジャネットが、王族を誹謗中傷したことが知られたら、彼女の命はないでしょう。

ジャネットは嫌な子だけど、死んでほしいとまでは思っていません。

なので、彼に本当のことは言えません。

しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

処理中です...