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2話「多忙な日々……」
しおりを挟む「アダリズ様、この仕事今日中にお願いしますね」
「アダリズ様、明日までにこの書類に目を通しておいてください」
「アダリズ様、文化祭の予算のことなのですが……」
「書類は机に置いといてください、文化祭の予算については来週の生徒会総会で決めます」
学園では生徒会会長である王太子殿下の代わりに仕事をこなし。
「アダリズ様、この書類に本日中にサインをお願いいたします」
「アダリズ様、次のパーティーの出席者リストです、パーティーまで時間がありませんが当日までに完璧に暗記してください。くれぐれも王太子殿下に恥をかかせないようにお願いしますね」
「アダリズ様、王太子殿下の仕事が遅れておりますので、王太子殿下の仕事もあなたが処理してください」
王宮では王太子妃の仕事と、王太子殿下の仕事をこなし。
「アダリズ様、王太子妃としての教育のお時間です。宿題に出した古代語の本三冊は読んで暗記してきましたね? 王太子妃になるのですからこんなこと出来て当たり前ですよ」
厳しい王太子妃の教育に耐え。
「アダリズすまないが、明日提出のレポートが終わらないんだ」
「お手伝いします、王太子殿下」
「そうか恩にきる、やはり頼りになるのは君だけだ。僕は夜会用の衣装の打ち合わせがあるから申し訳ないが残りは君がやっておいてくれ」
「承知いたしました」
王太子殿下の宿題を代わりにこなす。
締め切り前日に王太子殿下からほぼ白紙のレポートを渡されるのは、珍しいことではない。
昼は学校、夕方は生徒会、夜は王宮、家に帰るのは深夜で、寝る時間も休む時間もほとんどない、こんな生活がもう何年も続いている。
一度部屋を出ていった王太子殿下が戻って来られた。
「言い忘れていた、次の夜会でアダリズと踊れるのを楽しみにしているよ。君と僕のドレスのデザインをお揃いにしたんだ、僕の服の色は君の瞳の色に、君のドレスの色は僕の瞳の色にしたんだよ」
「まあ、素敵」
「美しく着飾った君をみんなに見せびらかしたいよ、アダリズ愛してる、じゃあまた明日」
王太子殿下が私の頬にキスをし、ウィンクをして去っていった。
王太子殿下の唇が触れた頬が熱い、心臓がドキドキと音を鳴らしている。
王太子殿下は青い髪に翡翠色の瞳の類まれな美貌の持ち主…………だが勉強熱心ではなく、仕事の要領もあまりよろしくない。
王宮の家庭教師からは、王太子殿下の出来の悪さは王太子妃がカバーするようにと言われ、幼い頃から厳しい教育を施されてきた。
王太子殿下が無能で役立たずでも構わない、彼は私の希望なのだ。王太子殿下と結婚すれば私は公爵家を出ることが出来る。家を出れば両親と顔を合わせる機会も減る。
王太子妃の教育も王太子妃の仕事も大変だけどちっともつらくないわ、王太子殿下が私を愛してくださっているから乗り越えられる。
もうすぐ学園を卒業する、卒業すれば生徒会の仕事と宿題がなくなる、その分楽ができそうね。
それに学園を卒業すればすぐに王太子殿下との結婚式だ、王宮と公爵家を馬車で往復しなくてすむので時間も節約できる。
朝食と夕食をパンだけで過ごす、わびしい食生活から抜け出せる。
もうすぐよ、王太子殿下と結婚すれば何もかもうまく行くわ、今だけもう少しだけ辛抱すればいいのよ。
この時の私は心の底からそう信じていた。大切な人に裏切られていた事を知るのはその数日後のこと……。
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