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9話「身体交換」
しおりを挟む「メイドにお茶を入れさせましょうか?」
エマが呼び鈴に手をかけようとするのを「いえ、結構よ喉は乾いてないの」私は止めた。
エマと違い私には専属のメイドがついていない、呼び鈴を鳴らしてもどうせ誰も来ない。
だが万が一ということもある、せっかくエマと二人きりになれたのに余計な人間に入って来られては面倒だ。
「そうですか? それでお姉様、私に聞きたいことというのは?」
「……私こんな醜い顔でしょう、誰からも愛されていないのが悲しくて……。お父様も、お母様も、婚約者の王太子殿下も私を疎んでいる……。私は誰にも愛されていない、己の醜い顔が嫌い、消えてしまいたい……」
手で顔を覆い、泣いているまねをする。
「そんなことないわアダリズお姉様!
お父様もお母様もお姉様を愛しているわ! もちろん婚約者のデレック様もお姉様のことを大切な人だと思っているわ!」
王太子殿下の婚約者である私が「王太子殿下」と呼んでいるのに、婚約者の妹に過ぎないエマが「デレック」と呼んでいる……そのことにエマは違和感を覚えないのかしら?
エマは眉を下げ悲しそうな顔をしていた、そんな顔を作りながら、お腹の中では私をさげすみ大爆笑しているのでしょうね。
今にもエマの口から「その通りよ、あんたなんか誰からも愛されてないわ! この醜いメス豚が!」という言葉が漏れてきそうだわ。
「本当エマ? 本当にそう思う?」
「ええもちろんよ、お姉様はボーゲン公爵家の長女で美人で賢くてピアノもダンスも得意で所作も完璧で私の自慢の姉ですもの。その上王太子のデレック様の婚約者だなんて、すごく羨ましいわ!」
かかったわねエマ、あなたがそう言うのを待っていたのよ。
「ねえエマ、本当に私のことを自慢の姉だと思ってる? 本当に私のことが羨ましい? 私がエマと私の人生を交換したいと願ったら、あなた了承してくれる?」
「まあ交換してくださるの? 私昔からお姉様が羨ましかったのよ。だってお姉様は全てを持っているんですもの、公爵家の長女の地位も、王太子殿下の婚約者の地位も、学園の首席間違いなしと言われる頭脳も、私ずっとお姉様になりたかったのよ!」
どうせ人生を交換なんか出来ないと思って適当な事を言ってるわね。
でもまあ、エマが王太子の婚約者の地位を欲しがっていたのは事実よね。どうせ明日になれば私が冤罪で捕まり、自動的に自分のところに王太子の婚約者の地位が転がり込んでくると思っているのでしょう? 人生はそんなに甘くないのよ。
「そう、それはよかったわ……私もずっとあなたになりたかったのよエマ、美しい容姿を持ちお父様からもお母様からも王太子殿下からも愛され、使用人から大切にされ、学園では先生からも生徒からも可愛がられているあなたに……ずっと憧れていたの。だから……」
エマの手に自身の手を重ねる。
「私の人生とあなたの人生を交換しましょう」
私はエマの目を見てニッコリとほほ笑んだ、エマは何を言われたのか分からないようで、目を白黒させていた。
「呪いの魔本お聞きになりましたか? 妹は私になりたいそうです、言質は取りましたわ、これで私と妹の体を交換できますね?」
『クククそのようだな、契約は成立した。お主たちの心と体を入れ替えてやろう。アダリズの魂はエマの体に、エマの魂はアダリズの体に入れ』
私の膝の上にある呪いの魔本が発光した、私はあまりの眩しさに目を閉じた。
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