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一章
10話「奇跡はときどき起こる」最終話
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「……バカ」
「えっ?」
「初めましてじゃないでしょう?
何年一緒に暮らしたと思ってるのよ」
リコがすねたような口調で言う。
「リコ……記憶があるのか?」
神にあの世界で暮らした記憶を消されたんじゃ?
「ああ、あたしを勝手に日本に連れ帰った自称神様ね!
あたしの記憶を消そうとするから、顔を引っ掻いて腕に思いっきり噛みついてやったわ!
そしたら逃げるように姿を消したわ!
全く逃げる前に私をコルトとアビーのいた世界に返しなさいっての!」
リコは眉間にシワを作りプリプリと怒っていた。
リコの記憶は神に消されてなかった?
「良かった……!
本当に良かった……!」
「ちょっと、コルトなんで泣いてるの……!?」
「母さ~~ん!」
「アビー大きくなったわね!
成長しても泣き虫のままね」
アビーがリコに抱きついた。
アビーはリコが消えた日に一度泣いただけで、それから一度も泣いていない。
そのアビーがリコに抱きつき声を上げて泣いている。
「ねぇ、どうやってこっちの世界に来たの?
自称神様を捕まえて締め上げたとか?
それとも城に攻め込んで王家の秘術を盗んだの?」
「どっちも違うよ」
王家の秘術の書かれた本はアビーの眷属がこっそり持ち出してくれた。
読み終わったあとはちゃんと返したので泥棒ではない……はず。
「とりあえず寒いからどっかのお店に入ろうよ。
あ、ちょうどハンバーガーショップがある」
ハンバーガーショップ? 以前彼女が行きたいといっていたお店のことだろうか?
「クリスマスイブだから期間限定ハンバーガーが食べられるかも!?
奢ってあげるわ!
温かいコーヒーとポテト付きでね!
帰りにクリスマスケーキを買って帰りましょう!
家族用の大っきなやつ!」
そう言って彼女はウィンクした。
クリスマスとかクリスマスケーキとか、初めて聞く言葉が出てきたけど、それが何なのかは後で彼女に聞くとしよう。
「ありがとう」
俺もアビーも君に話したいことがたくさんあるんだ。
「神様は信じないけど、サンタさんは信じてもいいかも。
こうしてコルトとアビーに会わせてくれたんだから」
リコの言うサンタさんが誰かは分からないが、きっと素敵な人物に違いない。
シャンシャン……と鈴がなったような気がして、見上げると赤い服を着たおじいさんが、トナカイの引くソリに乗って空を飛んでいた。
「ねぇ、リコ……」
「なぁに、コルト?」
「この世界じゃ飛行機以外に、ソリも空を飛ぶの?」
「はっ?」
リコがキョトンとした顔をしている。
リコの表情から察するに、この世界ではソリは空を飛ばないらしい。
「もしかしてコルト、このイラスト見てそう思った?
これはイメージイラストだよ。
実際にはソリもトナカイも空を飛ばないよ」
リコが指さした方向には、トナカイの引くソリに乗って空を飛ぶ赤い服を着た老人が描かれていた。
「リコ、このおじいさんは誰なの?」
「この赤い服を着たおじいさんこそ、クリスマスのアイドル!
サンタクロースです!
別名サンタさん!
良い子にしていると、サンタさんがプレゼントを持って来てくれるんだよ!」
「母さん、僕のところにもサンタクロースが来るかな?」
「アビーはいい子だから絶対来るよ!」
リコとアビーがじゃれ合っている。
こんな光景がまた見れる日が訪れるなんて……。
「コルトは大人だから、サンタクロースは来ないかもね」
俺の顔を見ながら、リコが「残念でした」とと呟く。
「って、コルト泣いてるの?
い、今のは嘘!
コルトも良い子だから、コルトのところにもサンタさんが来るよ!」
俺は知らない間に涙が流れていたらしい。
「大丈夫だよ、リコ……サンタクロースにはもう会えたから」
その後、時空を超える乗り物が壊れていたり、部品を手に入れるのにお金がかかった、俺の作ったサンタクロースを木彫りの置物が跳ぶように売れて、部品を調達する費用を賄えたりするのだが、それはまた別のお話。
――終わり――
最後まで読んでくださりありがとうございます!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
※下記の作品もよろしくお願いします!
【連載中】「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097
【完結】「義妹を溺愛するヤンデレ公爵令息は、ハニートラップに引っかかり義妹を傷つけたアホ王子を許さない」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/563699054
【完結】「私が彼から離れた七つの理由」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/37699061
「えっ?」
「初めましてじゃないでしょう?
何年一緒に暮らしたと思ってるのよ」
リコがすねたような口調で言う。
「リコ……記憶があるのか?」
神にあの世界で暮らした記憶を消されたんじゃ?
「ああ、あたしを勝手に日本に連れ帰った自称神様ね!
あたしの記憶を消そうとするから、顔を引っ掻いて腕に思いっきり噛みついてやったわ!
そしたら逃げるように姿を消したわ!
全く逃げる前に私をコルトとアビーのいた世界に返しなさいっての!」
リコは眉間にシワを作りプリプリと怒っていた。
リコの記憶は神に消されてなかった?
「良かった……!
本当に良かった……!」
「ちょっと、コルトなんで泣いてるの……!?」
「母さ~~ん!」
「アビー大きくなったわね!
成長しても泣き虫のままね」
アビーがリコに抱きついた。
アビーはリコが消えた日に一度泣いただけで、それから一度も泣いていない。
そのアビーがリコに抱きつき声を上げて泣いている。
「ねぇ、どうやってこっちの世界に来たの?
自称神様を捕まえて締め上げたとか?
それとも城に攻め込んで王家の秘術を盗んだの?」
「どっちも違うよ」
王家の秘術の書かれた本はアビーの眷属がこっそり持ち出してくれた。
読み終わったあとはちゃんと返したので泥棒ではない……はず。
「とりあえず寒いからどっかのお店に入ろうよ。
あ、ちょうどハンバーガーショップがある」
ハンバーガーショップ? 以前彼女が行きたいといっていたお店のことだろうか?
「クリスマスイブだから期間限定ハンバーガーが食べられるかも!?
奢ってあげるわ!
温かいコーヒーとポテト付きでね!
帰りにクリスマスケーキを買って帰りましょう!
家族用の大っきなやつ!」
そう言って彼女はウィンクした。
クリスマスとかクリスマスケーキとか、初めて聞く言葉が出てきたけど、それが何なのかは後で彼女に聞くとしよう。
「ありがとう」
俺もアビーも君に話したいことがたくさんあるんだ。
「神様は信じないけど、サンタさんは信じてもいいかも。
こうしてコルトとアビーに会わせてくれたんだから」
リコの言うサンタさんが誰かは分からないが、きっと素敵な人物に違いない。
シャンシャン……と鈴がなったような気がして、見上げると赤い服を着たおじいさんが、トナカイの引くソリに乗って空を飛んでいた。
「ねぇ、リコ……」
「なぁに、コルト?」
「この世界じゃ飛行機以外に、ソリも空を飛ぶの?」
「はっ?」
リコがキョトンとした顔をしている。
リコの表情から察するに、この世界ではソリは空を飛ばないらしい。
「もしかしてコルト、このイラスト見てそう思った?
これはイメージイラストだよ。
実際にはソリもトナカイも空を飛ばないよ」
リコが指さした方向には、トナカイの引くソリに乗って空を飛ぶ赤い服を着た老人が描かれていた。
「リコ、このおじいさんは誰なの?」
「この赤い服を着たおじいさんこそ、クリスマスのアイドル!
サンタクロースです!
別名サンタさん!
良い子にしていると、サンタさんがプレゼントを持って来てくれるんだよ!」
「母さん、僕のところにもサンタクロースが来るかな?」
「アビーはいい子だから絶対来るよ!」
リコとアビーがじゃれ合っている。
こんな光景がまた見れる日が訪れるなんて……。
「コルトは大人だから、サンタクロースは来ないかもね」
俺の顔を見ながら、リコが「残念でした」とと呟く。
「って、コルト泣いてるの?
い、今のは嘘!
コルトも良い子だから、コルトのところにもサンタさんが来るよ!」
俺は知らない間に涙が流れていたらしい。
「大丈夫だよ、リコ……サンタクロースにはもう会えたから」
その後、時空を超える乗り物が壊れていたり、部品を手に入れるのにお金がかかった、俺の作ったサンタクロースを木彫りの置物が跳ぶように売れて、部品を調達する費用を賄えたりするのだが、それはまた別のお話。
――終わり――
最後まで読んでくださりありがとうございます!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
※下記の作品もよろしくお願いします!
【連載中】「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097
【完結】「義妹を溺愛するヤンデレ公爵令息は、ハニートラップに引っかかり義妹を傷つけたアホ王子を許さない」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/563699054
【完結】「私が彼から離れた七つの理由」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/37699061
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