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10話「国宝」
しおりを挟むそんなこんなで、一週間をすぎる頃にはぼくのレベルはかなり上がっていた。
ほとんどモンスターに止めをさしたのはリュートで、ぼくはちょっとダメージを与えただけ。
少しダメージを与えただけのぼくのレベルは結構上がったのに、リュートのレベルは一つも上がらなかったみたい。
やっぱりリュートはレベルをカンストしているのかな? それとも他に何か理由があるのかな?
リュートともっと仲良くなれたら教えてもらえるかな?
ある程度ぼくのレベルが上がったので、今日からはリュートに剣術を教えてもらえる。
場所を暗黒の大地から荒野に移し、修行を始めた。
「よろしくお願いします! リュート先生!」
「よろしく」
リュートが素っ気なくボソッとつぶやく。そういう素っ気ない態度も好き♡
「じゃあとりあえず素振りから」
リュートがアイテム袋から取り出したのは、短めの剣だった。
「握り方はこう」
リュートがぼくの背後に立ち、ぼくの手に自身の手を添え剣の持ち方を教えてくれる。
リュートに抱きしめられてるみたいで、心臓がドキドキした。リュートから花のような甘い香りする。
顔が熱い、胸がバクバクする、鼻がむずむずして真っ赤な鼻血がボタボタと……。
興奮して鼻から血を流したら、リュートに嫌悪感のこもった目で見られた。
それから剣の持ち方を教えてもらえなくなった。ぴえん、ぼくのおバカさん。
「おれが剣を振るのを見てまねして」
リュートがアイテム袋から取り出したのは、鷹の装飾が施された長めの剣だった。
リュートが剣を構えるところ初めて見た♡ 魔法が主体だと思ってたけど、剣も使えるんだ。
いやリュートが剣術もできると思ったから「剣術を教えて!」とお願いしたんだけど、剣を持つリュートの姿が想像の百倍かっこよくて……やばい、吐血しそう! ぼくは口に手を当て吐血をこらえる。
リュートが剣を振るう姿は、ギリシャ彫刻が社交ダンスを踊っているみたいに優雅でうっとりと見とれてしまう。
ポーーッ♡としていたら、リュートの素振りが終わってしまった。
「じゃあやってみて」
「はい!」
元気よく返事したもののリュートの華麗な舞に夢中で、素振りの仕方をよく見ていなかった。どうすればいいんだろう? とりあえず振ればいいのかな?
「えいっ!」
見よう見まねで剣を頭の上に上げ、勢いよく振り下ろす。
剣はぼくの手をすり抜け、リュートに向かって飛んでいく。
「リュート、危ないっ!」
剣が当たる寸前に、リュートがさっと剣をかわした。剣はリュートの後ろにある大きな岩に突き刺さった。
「ごめんなさいリュート! けがしなかった?」
「ちゃんと剣を持って」
リュートが無表情で岩から剣を抜く。
「はい」
「もう一度最初から、素振り十万回」
えっ? 桁を間違えてない? それとも聞き間違いかな?
「返事」
「はい!」
ぼくは勢いよく剣を振りおろした。勢いがよすぎて前のめりにこけ、地面に顔から突っ込んだ。
「まずは一回でいいからまともに素振りして、じゃないと何も教えられないから」
「……はい」
見上げたリュートは死ぬほど冷たい顔をしていた。
かっこ悪いところを見られてしまった。泣きたい。でも頑張る。
ぼくは立ち上がり剣を振るう。また顔から地面に突っ込んでしまった。
ううっ、同じ失敗を二度も。
何度やっても顔から地面に突っ込んでしまう。
「あんたに剣術はむいてないのかも、止めようか?」
顔から地面に突っ込むこと千三十八回目、リュートが地面に膝をつきハンカチを差し出してくれた。
リュートがやさしい、うるうる。でも泣かない!
「諦めない、ぼくは強くなりたいんだ!」
リュートと別れてからも(本当は別れたくないし、永遠に一緒にいたいけど)一人で生きて行かなくちゃいけない。
頼れるのは自分だけ、だから強くならなきゃいけない!
好きでもない人に襲われて、無理やり処女を奪われるなんて絶対に嫌だっ!
「そんなに強くなりたいんだ、でもあんた剣の才能ないよ」
「ううっ……」
「でも……あんたの運動神経のなさと、境遇にはちょっとだけ同情した」
「ふぇっ?」
リュートがぼくに同情してくれたの?
「だからいいものを上げる」
リュートがアイテム袋に手を入れる。リュートがアイテム袋から取り出したのは、一本の剣だった。
猫の顔のモチーフのついた、黄色い剣だった。
可愛い、なにこのおもちゃみたいな剣。
「どっかの国の国宝だったんだけど、おれには使いこなせないから」
えっ? こんなキュートな剣が国宝だったの?
「あんたなら使いこなせると思う」
リュートにも使いこなせなかった剣を、ぼくなんかが扱えるのかな?
「ありがとう」
ぼくは立ち上がり、剣を受け取ろう手を伸ばす……しかし手は空をきった。
「危ないから別の場所で渡す」
リュートが意味ありげ言う。危ないってどういうこと?
そうしてぼくが連れて来られたのは、暗黒の大地だった。
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