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9話「剣術を教えてください!」
しおりを挟む宿屋でリュートに助けられてから一週間、ぼくは暗黒の大地でモンスター相手にレベル上げを行っていた。
魔力がなくなる度に黒と緑の絵の具を悪い感じに混ぜたような色の、生ゴミのような匂いのする魔力回復アイテムを飲まされている……めそめそ。
宿屋でリュートに再会したぼくは、全裸のまま土下座をし、リュートの足にすがりつき、「剣術を教えてください!」とお願いした。
百パーセント魔法に頼っていると、呪文を封じられたとき終わる。金髪碧眼の貴族風の男に襲われたとき、それを痛感した。
宿屋で襲われたときリュートは呪文を封じられても、体術だけで敵を倒した。強そうな大人三人をたやすくノックアウトしたのだ。
リュートが魔法だけでなく体術や剣術にも長けていると踏んだぼくは、なりふり構わず全裸で頭を下げ頼み込んだ。
リュートはため息をつき「いいから服を着て」と言って、自身のローブを脱いでぼくの肩にかけてくれた。
リュートのやさしさが嬉しくて、涙がこぼれた。涙を流したら鼻水も出てきた。
涙と鼻水をリュートから借りたローブで拭いたら、リュートに死んだ目をされた。
「ごめん、リュートのローブだったのに……!」
「いい、あんたに服を汚されるのにはなれた」
リュートが盛大に息を吐いた。
またリュートに迷惑をかけてしまった。
「服を着て、それとも裸で出かけるのが趣味?」
「えっと……」
「いいよ剣術を教えても、また安眠を妨害されたら迷惑だから」
「ありがとう! リュートッ!」
リュートに抱きつこうとしたけど、抱きつく前にリュートがひらりとよけた。ぼくは顔から床にダイブすることになった。
「涙と鼻水を拭いて、汚いから」
鼻を抑えながら体を起こすと、スンとした目のリュートにそう言われた。
相変わらず反応が冷たい。でもそこが好き♡
ぼくの着ていた服は、ぼくを襲った男たちにボロボロにされてしまったので、リュートの服を借りた。
リュートの服を借りるのは初めてじゃないけど、リュートを好きって意識してからは初めてで……袖を通すだけでドキドキした♡
服を着たあと服の匂いを嗅いでにやにやしてたら、リュートにドン引きされた。
◇◇◇◇◇
そうして連れて来られたのが、暗黒の大地。
カルデラ状の地形に無数のモンスターが生息していて、高レベルの冒険者でも単独では訪れない場所だとリュートが教えてくれた。
剣術を習う前に、まずレベルを上げる必要があると言われ、目隠しをした状態で「暴風」を連発した。
なぜ目隠しをしているのかと言うと、リュートいわく「見ない方があんたのためだから」らしい。
一日目はおとなしく目隠しをして魔法を放なっていた。
二日目、リュートが高位の魔法を唱えるかっこいい姿がどうしても見たくて、リュートに内緒でこっそり目隠しを外した。
スプラッタ映画の十倍グロい風景が広がっていて、そっと目隠しをもどした。
そして吐いた、ゲロゲロと胃の中のものをぶちまけた。
昨日の夜とその日の朝飲んだのが、黒緑色の百足……魔力回復アイテムだったから、吐いたものがゴミ置き場みたいな悪臭を放った。
嘔吐物がリュートから借りた服にもついてしまい、リュートの服がまた一着使用不可になった。
ぼくの体調不良により、二日目のレベル上げはそこで終わり。
「三日目からは絶対に目隠しを外さないように」と、死んだ魚の目をしたリュートに注意された。
吐しゃ物の匂いのついたぼくの体を、リュートが「水」の魔法で清めてくれた。
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