9 / 33
8話「暗黒の大地《フィンスター・エーアト・ボーデン》」
しおりを挟む草木の一本が生えないカルデラ状の地形、凶悪なモンスターの生息地になっているこの場所は人々から恐れられ、いつしか「暗黒の大地」と呼ばれるようになっていた、とリュートが教えてくれた。
「暴風ッッ!!」
「火の精霊よ我に従え、炎の竜!!」
ぼくの暴風の直後にリュートが炎の竜を唱える。
「土の精霊よ我に従え、巨人の岩!!」
リュートが連続で魔法を放つ。
ズガーーン! ボカーーン!! ズドドどどォォォーーン!!
「ぐぁぁあああ!!」
「ぎしぃぃぃイイイイっっ!!」
「ぶぎっ、びしゃぁぁアあッッ!!」
特撮ヒーローものを思わせる爆発音に続き、大型の獣や虫の断末魔のような声が響く。
「魔法力が尽きるまで『暴風』を連発して!」
「はいっ! 暴風!! 暴風ーー!! 暴風ッッ!!」
ぼくは目隠しをされた状態で、自分が使える中で最上級の魔法「暴風」を連続で放つ。
「初日だしこれくらいでいいかな」
リュートの声に目隠しを外す。そこには不気味な光景が広がっていた。
羽根の引きちぎれた巨大な蛾のような生き物の死骸、下半身と上半身を真っ二つにされたアリのようなモンスター、炎をあげ苦しげな声を上げる虎に似た体の六本足の魔物。
ズタズタになった大地に、巨大な岩が転がり、切り刻まれた魔物や、炎を上げるモンスターの残骸が転がっている。
…………何、この地獄絵図。
「えっと、リュートこれって……」
「あんたのレベル上げ、暴風であんたがダメージを与えたモンスターにおれが止めをさした」
「へ、へぇ……」
「あんたの魔法の効力が大したことないから、経験値の分配は少ないけど」
「そうなんだ」
「とはいえ格上のモンスターが相手だし、少しは経験値になったんじゃない? どう?」
「えっ? うん、そう言われてみれば少し強くなった気がするかも……?」
体の中から力が湧き上がってくるような感覚がある。
「そう、ならよかった」
リュートはモンスターの死骸の山を目の前にしても、冷静だ。
「ちょっとダメージが通っただけのぼくのレベルが上がったんなら、これだけのモンスターを倒したリュートのレベルは相当上がったんじゃないの?」
リュートがうつむいた、その表情は沈んでいるようにも見えた。
「おれのレベルは……上がらないから」
リュートはレベルをカンストしてるのかな?
それとも格下のモンスターを倒したぐらいではレベルが上がらないほど、リュートのレベルは高いのかな?
この世界のレベルの上限っていくつなんだろう? 「99」? 「999」? 「9999」?
「ねぇ、リュート……」
「今日はもう終わり」
亜空間収納できる便利な袋を取り出し、その中にあるモンスターをしまい始めた。
リュートが袋にしまっているのは、無数の足のある百足に似たモンスター、大きさは電車の車両三台分ぐらいある。黒と緑の絵の具を混ぜたような体の色に、一週間放置した生ゴミのような匂い。
不思議だな、このモンスターを見ているとぼくがリュートに作ってもらった魔力回復アイテムを思い出す……。
「ねぇリュート、聞いてもいい? そのモンスター何に使うの?」
モンスターを袋にしまっていたリュートの体がピクリと震え、手が止まった。
「世の中には……知らないほうが幸せなことってあるよね」
珍しく憂いに満ちた顔で遠くを見つめるリュートに、ぼくの背筋がゾクリとした。
「うん、そうだね」
ぼくは魔力回復アイテムの材料が何なのかを、考えるのを放棄した。
ついでに百足のような姿をした、モンスターを脳内から消した。
…………いや無理だった。
魔力回復アイテムの原材料って、百足(ムカデ)だったの??
うぎゃあああああ……!!
ぼくの断末魔が暗黒の大地に響いた。
5
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
時の情景
琉斗六
BL
◎あらすじ
中学教師・榎戸時臣は聖女召喚の巻き添えで異世界へ。政治の都合で追放、辺境で教える日々。そこへ元教え子の聖騎士テオ(超絶美青年)が再会&保護宣言。王子の黒い思惑も動き出す。
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿しています。
異世界転移した先は陰間茶屋でした
四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。
※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。
※謎解き要素はありません。
※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。
一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。
衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。
これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる