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7話「助けて! リュート!」
しおりを挟む「やぁ、また会えたね。僕の可愛い子猫ちゃん」
金髪碧眼の美形の男が、ぼくの髪を撫で回す。
男の鼻息は荒く、目は血走っていて、口の端からよだれをたらし、男根はフル勃起し、ぼくをベッドに組み敷き、なめるような目でぼくを見ていた。
ぼくの上着は破られ、ズボンとパンツは一緒に脱がされ、ほぼ全裸の状態で男に押し倒されている。
この世界での僕の通常運転。
だけど今回はさすがに不味い。
金属製の魔法封じの手錠で両腕を拘束され、ドアの前には見張りと思われる屈強な男が二人。
そして何より近くにリュートがいない。
リュートと別れたあと、森でリュートの名前を叫んでいたら人の気配がして、リュートが戻ってきてくれたのかもと淡い期待を抱き、自分から近づいて行った。
金髪の男が「見つけた。僕の愛しい子猫ちゃん」と言って欲情に染まった目で近づいて来たので、魔法で撃退しようとしたら、魔法封じの術をかけられ、両手に魔法封じの拘束具を付けられ、袋に押し込められて、ここに連れて来られた。
最初の街で二番目に出会ったのが、今ぼくを組み敷いているこの金髪の男だったらしいのだが、ぼくは覚えていない。
「僕が最初に君を見つけたんだ。だが君は緑髪の男に声をかけた。悔しくて発狂しそうになったよ」
言われてなんとなく思い出した。そう言えば緑の髪の男からぼくを助けてくれたのはこの人だった気がする。そのあとすぐに馬車に乗せられてさらわれそうになったけど。
「君に逃げられたあとずっと君を探していたんだ。最近あの森で魔法を使う栗色の髪の天使がいると聞いてね、君じゃないかと思い探していたんだ」
リュートと一カ月ほど同じ森にいたから、ぼくのことが噂になっていたのかも。
ちょこちょこ場所を変えてたし、大きな森だから大丈夫だと思っていたのに。
「あの森で君を抱いてもよかったんだけど、僕は紳士だからね。やはりそれなりの場所じゃないと」
だから森からさらってこの場所まで運んで来たんだ。
どこかのお屋敷? それとも宿屋かな?
最初の村で連れ込まれた宿屋より豪華な内装の部屋だった。ベッドは天蓋付きで、ふかふかしていて、とても大きい。
テーブルとイスは猫足で綺麗な装飾が施されていた。
「坊ちゃん、前置きはいいからさっさとやっちゃってくださいよ」
「そうそう後がつかえてるんだから」
扉のところに立っていた見張りらしき男二人がヤジを飛ばす。
見れば二人ともズボンに大きなテントを作っていた。
「うるさい! 外野は黙っていろ!」
金髪の男が眉根をつり上げ、見張りの男たちを怒鳴りつける。
「大きな声を出してごめんね子猫ちゃん、最初はぼくがやさしく抱いてあげるからね」
男がにやりと笑い、ぼくの胸に手をはわせる。
「ヒッ……!」
背筋に虫がはったような不快感に襲われる。
もしかしてぼくこの人に犯されて、そのあとこいつら三人に共有されちゃうの?
「やだっ! 離して!」
涙目で金髪の男を見上げる。
男が顔を赤くし、口を手で覆う。
「煽らないでくれ! やさしく出来なくなる!」
男が鼻息を荒くし、ぼくの首筋に顔を埋め、首筋にキスをした。
「やだ! 止めてぇぇ……!!」
助けてリュート! リュートーー!!
バン!
と音がして、突風とともに扉が開いた。
扉のところに立っていた男が壁まで飛ばされた。
「何事だ!」
金髪の男がおちんちん丸出しのまま振り返る。
その格好ですごんでも、しまらない。
「ねぇあんたさ、もしかしてわざとやってる?」
聞き覚えのある声、見覚えのある青い髪、サファイアのような輝く瞳……!
「リュート……!」
涙でうるうるになった目でリュートを見る。
リュートは心底めんどくさそうな顔でため息をつく。
「隣の部屋で騒がれたら、うるさくて眠れないんだけど」
リュートがやる気なさげに抑揚のない声で話す。
「どういう事だ宿は貸し切りにしろと言ったハズだ!」
金髪の男が見張りの男たちを怒鳴りつける。
「すみません、一部屋だけ先約がありまして」
手下が謝ると金髪の男が苛立たしげに舌打ちをした。
「ガキ、悪いがこの宿は僕が貸し切った」
金髪の男が引き出しを開け小袋を取り出すと、リュートの足元に投げつけた。
「くれてやる。よその宿に移れ」
男が冷淡に言い放つ。
「念のために聞くけど、同意の上? ハルトはこういうプレイが趣味なの?」
今リュートが初めてぼくの名前を呼んでくれた!
キューンとぼくの胸が高鳴る。
今はそんな場合じゃなかった。
ぼくはふるふると首を横に振る。
「だよね、やっぱり」
リュートが気だるげな目で金髪の男に近づく。
「小僧、邪魔する気か?」
男が上着の内ポケットから赤い石を取り出した。
あれは確か魔法封じの……!
「リュート近づいちゃダメ!」
「魔封じの石よ、我の道を邪魔するものの魔力を封じよ!」
金髪の男が手にした赤い石が光る。
「小僧その格好からして魔法使いだろ? 魔法を封じられた魔法使いなど無力……!」
男が高笑いをする。
「だから?」
まばたきしている間にリュートは金髪の男の目の前に立っていた。
ドスッと音がして、リュートが金髪の男のみぞおちに一発入れていた。
金髪の男の顔が苦痛に歪む。
リュートが金髪の男の頭を蹴り上げると、下半身丸出しのまま男は床に倒れた。
「ガキが調子に乗るなよ!」
残された二人の男が剣を抜き、同時にリュートに遅いからかかる。
「リュート危ない!」
リュートは二人の剣を素早く交わし、一人目の男の頭を蹴り飛ばし、二人目の男の顔を殴りつけた。
二人は壁まで吹っ飛ばされ、そのまま気を失った。
三人を倒してもリュートの息はみだれていなかった。
ぼくはリュートのかっこよさに見とれていた。
リュートがぼくの両手を拘束していた鎖を素手で壊してくれた。
「あんた絶対わざとだろう? なんでおれの泊まった部屋の隣にいるの? 安眠妨害するのが趣味?」
リュートが気だるそうな顔でぼくに問う。
「ぐすっ、リュート……だ、リュートがいる! リュートーー!」
泣きながらリュートに抱きつく。
すぐにベリッとはがされた。
「涙と鼻水がつくから止めてくれない」
リュートが死んだ目で冷たく言い放つ。
ああこの反応久しぶり。リュートと離れていたのは数時間だけなのに、もうずっと会っていなかった気がする。
リュートの顔を見てから、ぼくの胸はずっとキュンキュンと音を立てている。
今確信した。ぼくリュートの事が好き。
男同士だけどそんなの関係ない。
ぼくはリュートが好きだ。大好きだ。
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