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12話「無理…………じゃないかも」*

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翌日、リュートに町の近くにある森まで送ってもらった。

「リュート、今までありがとう」

「服はあげる、裸じゃ町に入れないだろ? 特にあんたは」

「うん」

「このまま森で暮らすのもいいし、町で暮らすのもいいかもね、今のあんたなら素手でも簡単には負けないだろうし」

「うん」

「じゃあ、これで」

「待ってリュート!!」

リュートのローブをぎゅっと掴む。

「まだなんかあるの?」

心底面倒そうな顔で、リュートが息を吐く。

クールな口調にぼくの胸がキュンと音を立てる。

「あのね……リュートの旅にぼくを同行させてほしいのっ!」

「うん、無理」

即答された。予想していたことだ、こんなことでは負けない!

「お願い! お願い! お願い! リュートの旅に同行させてくださいッッ!!」

「うん、無理」

地面に膝を付き、頭を下げてお願いしたがすげなく断られた。

「ちょっとだけ、一年だけでもいいからっ!」

リュートの足にすがり付き頼み込む!

「うん、無理」

また即答された。今日のぼくはまだまだ諦めないぞ!

「なら半年だけでも!」

「うん、無理」

「三カ月だけ!」

「うん、無理」

「二カ月半!」

「うん、無理」

「二カ月と一週間!」

「うん、無理」





一時間ほどねばってみたが、リュートの返事は変わらなかった。 

「分かったよ、旅に同行させてもらうのは諦めるよ……」

「そう、それはよかった」

ぼくの言葉にリュートが安堵あんどしてたように見えた。

でもまだ負けない! 旅への同行が無理なら……。

「あのね、ぼく……リュートのことが好きなの」

「…………はっ?」

三秒かけてリュートが返事をした。

リュートに「うん、無理」って即答されなくてよかった。さすがにそれは心が折れる。

「この世界の人に求愛されて、襲われ続けているうちに、変な性癖に目覚めちゃったみたいで、リュートに冷たくされると胸がドキドキするの」

「…………頭、大丈夫?」

リュートがあきれた顔で言った。

リュートにあきれられても仕方ない。やさしい人ではなく、冷たくする人に惚れるとか、ドMもいいところだ。

「この世界で唯一ぼくを襲わなかったリュートに惚れたの! だから、最後に……」

言え、これがリュートとの今生の別れになるかもしれないんだ、勇気を出せ!

ドン引きされるかもしれないが、負けるなぼく!

「ぼくを抱いてください!!」

言った、言ってしまった! 急速に顔に熱が集まる! 心臓が破裂しそうなぐらいバクバクしている!

「うん、無理」

ゴフッ! リュートに即答された! 心臓が剣で突き刺されたみたいに痛い……!

「言ってること矛盾してない? おれがあんたを襲わなかったから、あんたはおれのこと好きになったんでしょ? なのに最後におれに襲ってほしいとか意味が分からないよ」

顔色ひとつ変えず、いや若干嫌悪感を表しながらリュートが言った。

「うん、そうなんだけど。ぼくの男を引きつける体質と、不運でうっかりな性格を考えると、森で暮らしていても荒野で暮らしていても雪山で暮らしていても離島で暮らしていても、男に発見されて、発見されしだい襲われて、運良く逃れてもまた別の誰かに襲われて……いつか好きでもない人に無理やり処女を奪われちゃうと思うんだ。それなら初めては好きな人に……リュートにもらってほしいなって」

言っていて恥ずかしくなってきた、自分に微塵みじんも興味ない人にこんなことを頼むなんて。

「うん、無理」

ごふぁっ! 除夜をの鐘をつく棒で殴られたような衝撃を受け、吐血しそうになるのをなんとか耐えた。

そうだよね、こんなお願いを聞いてもらえるはずがない。

だけどぼくも簡単には引き下がれない! 変態だと思われても、ドン引きされても、とこまでも食らいついて「うん、いいよ」と言わせてみせる!

「じゃあ、せめて、フェッ……フェラチオだけでも」

言ってから気がついたけど、ぼくがリュートにフェラするの? それともリュートにフェラしてもらうの? もしかして同時に……? そのへんは色よい返事がもらえたら考えよう。

「うん、無理」

ズガーン! 巨人の岩リーゼ・フェルスが頭に直撃したような衝撃を受ける! 分かってた、リュートならそう応えると思ってたよ!

「ところでフェラって何?」

「えっと……フェラって言うのは」

リュートはフェラチオを知らないの? この世界にはない言葉? それともリュートが知らないだけ?

「おっ、おちんちんを……くっ、口でペロペロ、ちゅぱちゅぱするというか……」

説明していて顔から火が出そうになった!

「それをおれにさせようとしてたの?」

「させようというか、リュートが嫌ならぼくがリュートにしようかなと……」

ファーストキスもまだなのに、好きな人のおちんちんをなめますって申し出るとか、
ただの変態だ、淫乱だ。

「うん、無理」

リュートに氷河より冷たい視線を向けられた。胸がドキドキする、冷徹なリュートもかっこいいな! よし、次の提案だ! 今度こそ「いいよ」と言わせてみせる!

「なっ……なら、せめてキッ、キスだけでも……! お願いします! ぼくのファーストキスをもらってください!」

深々と頭を下げる。

リュートとのファーストキスの思い出だけで、五十年は生きていける。

「うん…………無理」

やっぱり無理か~~。唇が無理でもほっぺ、せめておでこに……!

「…………じゃないかも」

「ふぇっ?」

カバっと頭を上げる!

リュートいま「無理じゃないかも」って言った??

それってつまり、OKってこと??

「リュートそれって……」

「いいよ、キスしても」

リュートが表情一つ変えず抑揚のない声で答えた。ぼくの心臓がピクン! と跳ねる。

こんなセリフをサラッと言えるなんて、リュートってもしかして性の経験が豊富なの?

リュートが顔も知らない誰かと口づけしてるところを想像したらもやもやした。

「もし、あんたのキスでおれのが勃起(た)ったら…………セックスしてもいいよ」

「ふぇえっ!?」

心臓が爆発するかと思った! セックスしてもいいよとか、無表情で淡々と言わないで!

「まぁ、無理だろうけど……」

「ううん、ぼく頑張る! リュートのおちんちん勃起たせててみせる!」

なんて言葉を口にしてるんだぼくは! 恥ずかしさで死ねる! 顔から火が出て火事になる! 炎上する!

「じゃあしてみる?」

「うん」

と言ったものの、どうやってキスしよう?! リュートのさくら色の唇を見つめる、心臓がドクンドクンと音を立てる。

ぼくが固まっていると、リュートが動いた。

「あんたからしないなら、おれからするね」

「……うん」

リュートに肩を掴まれぼくはぎゅっと目を閉じる、数秒後唇に柔らかい感触が……!

心臓がバクンバクンと音を立てる……!

息ってどうやってするんだっけ?! 金縛りに合ったみたいに体が動かない……!

でもリュートのペニスを勃起たせるためには、このまま触れ合うだけのキスをしていたらだめだっ!!

しっ、舌を絡ませて……リュートの手をぼくの胸や、お尻や、おちんちんに持っていかないと!

恋人いない歴一四年、童貞で処女だけど、この世界に来てからいろんな人に襲われたから、男が何に興奮するのかは分かる!

ぼくを襲った人たちは、みんなぼくと舌を絡めたキスをしたいって言ってたし、胸やお尻やおちんちんを見たがったし、触れたがっていた。

この世界の人はぼくを視界に入れた途端、ズボンにテントを作っていたから、ぼくのどこに興奮しておちんちんを硬くしてたのかは、正確には分かんないんだけど……。

ええい、考えるより行動だ!

リュートの唇がぼくから離れて行く前に、リュートの男根を勃起たせないと!

おそるおそる、リュートの唇をぺろりとなめる。

その行為は効果が合ったらしく、リュートの舌がぼくの口内に侵入してきて、歯列をなぞられ、舌を絡め取られた。

こっ、これがディープキス!?

下半身に熱が集まりちんこが硬くなっていく……って、ぼくが勃起させられてどうするんだよ!

リュートの男根をそそり立たせなきゃ! リュートのペニスを勃起たせて、ぼくの初めてを捧げるんだ!

キスをしながら、自分のシャツのボタンを外し、ベルトを外しファスナーを下げ、スボンとパンツを一緒に下ろし、立ち上がりかけのおちんちんをパンツの中から取り出す。

触ってリュート、ぼくの体に。

ぼくの肩に置かれたリュートの右手を胸の突起に導き、左手をおちんちんに導く。

リュートの手にじかに触れられ、ぼくの体がビクビクと震える。

リュートの右手がぼくの胸の突起をやさしくなぞり、左手がぼくの男根を上下にしごく。

「ん、ふっ……、ん、ん……、ンっ……!」

たまらず声が漏れる。

リュート……好き! もっといじってぼくの体!

好きな人に触れられた体は敏感で、簡単に達してしまった。

「ん、ンっ、んンンンンッッ……!」

白濁した液があふれ、リュートの手を濡らす。

リュートが唇を離すと、唾液が糸を引いた。

「ん……、はっ♡ すごっ……! リュート……好き♡」

荒い息を整え、熱のこもった目でリュートを見つめる。

リュートは自身の手についたぼくの精液を眺めていた。

そんなにじっと見られると顔が火照るよ。

「…………やっぱ無理か、呪われた体じゃ…………」

リュートがほそりとつぶやく、いま「呪われた体」って言った? それってどういう意味……?

リュートの息は上がっておらず、冷めた目をしていた。

えっと……エッチなことした後ってこんな表情なんだっけ?

日本にいたときはこんなこと他の人とした経験なかったし。異世界の人はぼくを見た瞬間、目をギラギラさせ、呼吸を乱し、頬を赤くし、よだれを垂らしてたから、比較ができない。

ぼくを襲おうとしていた人たちが異常で、リュートのこの反応が正常なのかな?

ぼくだけ耳まで真っ赤にして、息を乱していて気恥ずかしい……!

リュートがおもむろにぼくの手を掴み、自身の陰部にあてる。

リュートのおちんちんにぼくの手がぁぁっ……!

リュートがぼくのを手でしてくれたから、ぼくにも手でしろってことかな?

少しドキドキするけど、リュートのなら……ぼくは!

「あんたとのキスじゃ勃起たなかったね」

リュートのおちんちんはふにゃんふにゃんのままだった。

「リュート、おちんちんが勃起たないのは後ろめたいことじゃないよ。勃起たないなら指や舌でもいいから……」

ぼくのお尻を見た男たちは、ペニスを挿す前に指や舌で解かす……とかなんとか言ってた。

いきなり男根を入れるんじゃなくて、最初は舌や指で中を解かすのが正解だと思ってる、多分だけど。

「なんか勘違いしてるみたいだけど、そういう問題じゃないから」

リュートはスンとした目でぼくを見た。

もしかしてリュートはノンケなのかな? この世界にもごく少数だけど女の子もいるって言ってたし。

ノンケのリュートを誘惑して、おちんちんを握らせて、興奮していたぼくって……!

かっこ悪すぎる! そして悲しすぎる!

「いつまでもそんな格好をしていると襲われるよ? あんたとのキスじゃ勃起たなかったから、約束通りおれはこれで」

リュートの足元に転移用の魔法陣があらわれる。

「リュート! 待ってっっ!!」

追いかけようとするが、脱ぎかけのズボンが足に絡まり転んでしまった。

頭を低くしお尻を突き出した姿勢で固まる。ぼくってやつは最後まで……!

「…………次に会うときまで、無事でいてよ」

「えっ……?」

転移の魔法陣が発動し、リュートの姿は消えていた。



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