【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」

まほりろ

文字の大きさ
18 / 33

17話「森で……ぃしてたの」

しおりを挟む



城から遠く離れた森にリュートは降り立った。

地面に足をつけると、リュートの背に生えた白い羽は消えた。

残念、天使みたいで奇麗だったのに。

リュートがアイテム袋から服を出してくれた。

ぼくは急いでその服を着た。

フランメ

リュートが木の枝を集め火をつけた。

たき火を囲んで座る。ぼくはリュートのすぐとなり、肩がつくぐらいの位置に座った。

いつものリュートなら『もっと離れたところに座ってくれる?』とか『暑苦しいよ』とか言うんだけど、今日はそれがない。

今日のリュートはやさしい。冷たいリュートも好きだけど、暖かいリュートも同じぐらい好きだ。

「じゃあ聞かせてもらおうか、奴らに捕まった理由を?」

リュートがスンとした顔でぼくを見る。無表情だけど怒っているのが伝わってきて、ぼくの背中を冷たい汗がつたう。

もう少し離れた位置に座ればよかった……! だが後悔しても遅い。

「複数人が相手でも今のあんたのレベルと、『転んだ拍子に会心の一撃剣』があればそう簡単には負けないよね? 野獣のような男に捕まって裸にされて縛られるのが趣味なの?」

リュートの視線が冷たい、目から吹雪が出てるよ~!

「違う! ぼくにそんな趣味はないよ! ……リュートにならされてもいいけど」

「はっ?」

ボソボソと話した言葉はリュートにも聞こえていたらしく、真顔で聞き返された。後半部分は聞かなかったことにしてください。

「なら、どうして捕まったの?」

「うっ、それは……」

リュートの顔が至近距離に迫る。別れるときにしたキスを思い出し、頬に熱が集まる。

羞恥心に耐えかね、ぼくはリュートから顔を背けた。

「わっ、笑わない?」

「笑わないよ、おれが笑ったところを見たことがある?」

「……ない」

悲しいかなリュートの笑顔を一度も見たことがない。

「だから話して、何があったのか」

「うん、あのね……」

ぼくは意を決して口を開いた。

「リュートと別れたあと、リュートとのキスが忘れられなくてその……」

リュートに一回抜いてもらっただけでは、下半身のうずきがおさまらなかった。

「森で……ぃしてたの」

「なに?」

「森で自慰してたの……!」

リュートが目を瞬かせる。

そりゃあ引くよね、自分と別れたあと、弟子が森の中でオナニーしていたら。

「リュートととの口づけが気持ちよくて、下半身がじんじんして、それで……」

「自慰してたところを捕まった?」

「ちっ、違うよ! 捕まったのは一人エッチが終わったあと、パンツを履こうとしてたとき……!」

二回も抜いていたとはさすがに言えない。

「手淫してるところなんか見られてたら、あんたその場で犯されてたよ」

リュートの言葉に背筋が寒くなった。不幸中の幸いだった!

「パンツを履こうとしてたら、赤い髪と黄色い髪の人と緑の髪の人が現れて、『天使』とか『神子』とか『妖精』とか呼ばれて」

パンツを履くことに気を取られ、攻撃するタイミングを逃した。

「赤い髪の人に『また会えましたね、今度は逃しませんよ!』って言われて、気がついたら体がしびれて動かなくて、魔法を封じられていて」

魔法封じツァオバー・ベエンゲン麻痺レーメンの技だね」

「うんそうだと思う。それから赤い髪の男に『あなたを今すぐにでも犯したいところですが、前のように邪魔が入っては面倒だ。城に連れて帰ってからじっくりと抱くことにします』って言われて、お城に連れて行かれたの」

かろうじてパンツを履いていたことがせめてもの救い。下半身丸出しで誘拐されるのは、かっこ悪すぎる。

「あっ、リュートからもらった剣!」

リュートからの贈り物なのに、貴重な剣なのに、森においたままだ!

「『転んだ拍子に会心の一撃剣』のことを言ってる? それなら回収したよ、城の物置に転がってた」

リュートがアイテム袋から『転んだ拍子に会心の一撃剣』を取り出す。

「良かったぁ!」

ぼくは剣を抱きしめ、頬ずりした。 

「王子の一人が拾って持ち帰ったんだろうね。物置に転がってたところを見ると、『転んだ拍子に会心の一撃剣』の価値には気づかなかったみたいだけど」

よかった! 王子も城の人たちもこの剣の価値に気が付かなくて!

「今回のことでひとつ分かったことがある」

リュートがぼくの目を真っすぐに見る。

「なに?」

リュートに見つめられ、心臓がドキドキと音を立てる。

「あんたがおれの想像を超える間抜けだってことが」

「うっ……!」

悔しけど反論できない。おちんちんを慰めていて、人の近づいてくる気配に気づかず、誘拐されるとかおたんこなすにもほどがある。

「目的を達成するまでは、離れていようと思ったんだけど……やめる」

「えっ……?」

リュートは何を言いたいんだろう?

「あんたは目を離すとすぐに他の男に襲われるから、おれの目の届くところにおいておく」

「ええっと……?」

リュートの言った言葉の意味を考える、リュートがぼくの側にいてくれる、それって……!

「好きだから側にいたいって言ったほうが分かりやすい?」

「ふぇっ!?」

リュート今なんて言った? ぼくのことを『好きだ』って言った?? 聞き間違いじゃなくて……??

「リュートは、ぼくのことが……好き、なの?」

「好きだよ」

リュートが無表情でサラッと答えた。『カレーが好き?』って質問に『好きだよ』って答えるみたいにすごく自然に……!

ツンデレのデレ来たーー!! ……全然デレっぽくないけど。

「好きじゃないなら、キスなんかしないよ」

「そうなの……!?」

森でリュートと別れたときに、リュートとしたディープキスを思い出し顔が火照る。

あのときには、リュートはぼくのことが好きだったってこと?!

「リュートはいつからぼくのことが好きだったの?」

「さぁいつからかな? おれにもよく
分からないけどハルトに『キスして』って言われたとき、してもいいかなって思った。多分そのときには好きだったんじゃないかな」

ダメ元で『キスして!』ってお願いして良かった! ぼくは心の中でガッツポーズした!

それから今、リュートがぼくのことを名前で呼んだ!!

「リュート今ぼくのこと『ハルト』って……!」

「あれ? 呼んだことなかった?」

「ないよ! いつも『あんた』って呼んでたもん!」

「そうだっけ? じゃあ次からは極力名前で呼ぶようにするね」

うわぁぁああああ! リュートに名前で呼んでもらえる! すごく嬉しい! スキップして野原を駆け回りたい気分!!

「うん、そうしてくれると嬉しい!!」

ぼくの顔はゆでたこのように真っ赤で、心臓が爆発しそうなぐらいドキンドキンしていた。

リュートはぼくに『好き』って告白してからもずっと無表情で、頬を赤らめることも、目を逸らすこともなくて。

ぼくだけ目に見えるぐらい動揺しているのが、少しだけ悔しかった。



◇◇◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。

一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。 衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。 これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?

雪 いつき
BL
 仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。 「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」  通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。  異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。  どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?  更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!  異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる――― ※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...