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五十話「モンターニュ村の少年①」

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「ふぅ~」

杖を握りため息を付く。

水晶クリスタロの杖、お値段金貨八千枚。

俺の身につけている濃紺のローブ、星のシュテルン・ささやきフリュステルン、お値段金貨五千枚。

白のブーツ、賢者ヴァイザーの靴、お値段金貨三千枚。

ホワイトのワンピース、妖精の歌フェー・リート、お値段金貨一万枚。

総額金貨二万六千枚。

ちなみに昨日泊まった高級宿のスイートルームのお値段、一人一泊金貨百枚。

最初に泊まったリーベ村の宿が一人一泊金貨一枚だから、金貨一枚≒一万円ぐらいだと思う。

総額金貨二万六千枚、日本円にして二億六千万円の装備。羽のように軽い素材でできているのに、俺にはとてつもなく重たく感じた。

「はぁーー」

もう一度深く息を吐く。

ノヴァさんからの贈り物がこんなに高額だとは思わなかった。

お金の価値観が分からなくなってきた。俺は生きている間にノヴァさんにお金を返せるだろうか?

こんなことならベビードールとレースのTバックぐらい着て上げればよかった……とちょっとだけ後悔している。

S級冒険者ってそんなに儲かるの? それともノヴァさんの実家がお金持ちなのかな?

朝食を終えチェックアウトした俺たちは、帝都フォレ・カピタールを目指す事になった。

部屋に戻ったノヴァさんはセックスをしたそうな目で俺を見てたけど、なんとか説得して宿を出た。

リーベ村からラック・ヴィルに移動してときのように、駅馬車に乗ると思っていたんだけど。ノヴァさんが「駅馬車の中ではシエルといちゃいちゃできない!」と言い出した。

そんな訳でノヴァさんは馬車を借りに行っている。

ノヴァさんが、ついに移動時間にまでいちゃいちゃを求めるようになった。

王都までは馬車で一日かかるって言ってたな、一日ぐらい我慢できないのかな……?

馬車の客席で、ノヴァさんに服のボタンを外されているところを容易に想像できてしまう自分が悲しい。

ノヴァさんが買ってくれた服は、前にボタンがついているくるぶし丈の白のワンピース、袖や裾に金の糸で刺繍ししゅうが施されている。

妖精の歌フェー・リートという名前の通り、妖精の歌声が糸になりそれを織ったものだそうだ。炎、水、毒、麻痺などのアーテムの攻撃を八割カットしてくれるとか。金貨一万枚するだけあってすごい効果だ。

それはともかく、フロントボタンワンピースはリーベ村で買っもらったのと同じタイプだ。ノヴァさんはこの形のワンピースを気に入っているらしい。ボタンを全部外すと裸になってしまうからだろう、絶対エロい目的だ。

馬車を取り扱っている店の入口で待っていると、隣の建物から少年が出てきた。

出てきたというより放り出されたと言った方が正しい。

「出てけクソガキ!」

屈曲そうな男二人が子供を投げ飛ばし、罵声を浴びせる。

「待って! 助けて……! 村の人たちが病にかかって動けないんだ!」

転がされた少年が立ち上がり、男たちにしがみつく。

まだ十歳ぐらいなのに、すごい根性だな。


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