幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで・BL・完結・第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

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六十九話「ノヴァさん、俺に嘘ついてるでしょ①」*

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目覚めたとき黒いシャツが目の前にあって、服の上からでも分かる分厚い胸板に顔をうずめていた。たくましい腕に抱きしめられていて身動きがとれない。

その鍛えられた腕は俺の尻に回っており、スカートの上からガッチリ尻を掴んでいる。

ノヴァさん服を着たまま寝たんだな。俺のことホールドしつつ尻を掴んでいるあたりブレないなぁ。

というかパンツぐらい脱がされてると思ったけど、服の上から触られてるだけですんでいるのが意外だ。

起きたらノヴァさんの竿が俺の中に入っていると思ってた。

そういえばラック・ヴィルで昨日の明け方ノヴァさんとセックスして以来、ノヴァさんに子種を注いでもらってない。

はじらい死草の解毒治療には、毎日精液を中に注いでもらって、それを一年間続けなくちゃいけないんだったよな?

部屋の中が明るいのでとっくに日は昇っているようだ。寝たのは夜明け近かった、あれから何時間経過したのか……?

今が九時頃だと仮定して、ノヴァさんと最後にセックスしたのが昨日の明け方だから、まる一日子種を摂取していない。

でも俺はなんともない、と言うより元気だ。

俺の中にある仮説が浮かぶ。ノヴァさんに確かめないと。

「ノヴァさん、ノヴァさん、起きてください」

ノヴァさんの胸板を押すがびくともしない。

天使の口付けエンゲル・クスで起こすしかないかな。宿駅では無意識に使っていたらしい。

誰かが唱えた呪文しか使えないと思ってたけど、無意識に使える呪文もあったんだな。

でもあのときはキスしたら目覚めたわけで『天使の口付けエンゲル・クス』って唱えた訳じゃないから、この呪文はイレギュラーかな。

「ノヴァさん起きて、チュッ♡」

ノヴァさんの唇に口付ける。

尻を掴んでいたノヴァさんの手がスカートの中に入ってきて、パンツの上から尻を揉みだしたので、どうやら起きたらしい。

「おはようシエル」

切れ長の紫の目を細め、ノヴァさんがふわりと笑う。

超絶美形の笑顔を寝起きに至近距離で見るのは、心臓に悪い。

「おはよう、ノヴァさん……っん、……ふぁ……ぁっ……やっ」

唇を重ねられ侵入してきた舌に舌を絡め取られる。

パンツを半分脱がされ尻を直に揉まれ、ノヴァさんのギンギンに勃った息子をスボン越しに擦り付けられる。

「シエル、解毒治療をしていなかったな」

「うん、そのことなんだけどさノヴァさん」

ノヴァさんに仰向けに寝かされ、両腕をベッドに縫い付けられる。

ギリシャ彫刻のように整った顔立ちのノヴァさんに、とろけるような笑顔で熱い視線を送られても流されてはいけない。

「ノヴァさん、俺に嘘ついてるでしょ」

ノヴァさんの目をまっすぐに見つめる。スカートをたくし上げていたノヴァさんの手が、ピタリと止まる。

スカートは俺のへその所で止まっている、パンツを半分脱がされたので、ゆるく立ち上がった俺のペニスが外気に晒される。

これ以上服をたくし上げられると、胸につけているあれを見られてしまう。

「……嘘、とは…………?」

ノヴァさんの顔にギクリと書いてあった。

「嘘っていうか秘密かな? はじらい死草の解毒治療って、毎日する必要ないですよね? 本当は最初の一回だけでよかったんでしょ?」

確信はないのでかまをかけてみた。

ノヴァさんの顔から血の気が引いていく。この反応は当たりかな。

「違うのだシエル! 別に騙そうとした訳ではない! 確かに古文書には一度の性行為で治療は終わると書いてある。だが遥か昔に書かれたもので絶対に大丈夫だと言う確証はない! リーベ村の宿でシエルは『熱っぽい』『アナルがうずく』と言っていたし、体質によっては一度では足りず、二度、三度精液を注ぐ必要があるのかと……!」

「なるほど」

ノヴァさんの目をじっと見つめる、嘘をついている感じはしない。

「精液を中に注ぐのを止めシエルが死んでしまうのが怖かった……! 王都に着いたら帝国一の植物の専門家と医師に診せる予定だった! それまでは治療のために精液を注ぎ続けようと思ったのだ!」

「分かりました、俺のためにしてくれてたんですね」

俺が笑うとノヴァさんはホッとしたように、短く息を吐いた。

ノヴァさんの言ったことが嘘か本当か分からない。というか嘘でも構わない。俺はノヴァさんなしでは生きていけないのだから。

ノヴァさんはいつも俺の言うことを信じてくれた、俺もノヴァさんの言うことを信じたい。

「許してくれるのか?」

ノヴァさんが迷子の子猫のような目で俺を見る。可愛い、ハグして、キスしたい。

「許すも何も、俺の体のためにしてくれたことでしょ?」

俺がこてんと首を傾げると、ノヴァさんが頬を染めた。

ノヴァさんは優しくて、いつも俺を大切にしてくれる。

そのノヴァさんが俺を傷つけるために嘘をつくはずがない。

「俺はノヴァさんを信じてるから」

「シエル……!」

ノヴァさんが瞳を輝かせ顔を綻ばせる。

「解毒治療じゃなくて、愛のある性行為をしたいよ」

「シエル、もう我慢出来ない!!」

ノヴァさんの息が荒い、顔も赤いし、ペニスもギンギンに立ってる。

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