幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで・BL・完結・第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

文字の大きさ
97 / 131

97話「モンターニュ村から、帝都フォレ・カピタールまで」

しおりを挟む


事後シャワーを浴び、衣服を整えていると、トマが血相を変えて飛び込んできた。

俺たちが広場に行くまで、家には誰も近づかないと思っていたから油断してた。

服は着たけど、まだ匂いが……! じゃなくて、トマが顔色を変えて飛び込んで来るなんてただ事じゃない。

広場に向かいながらトマに話を聞くと、ラック・ヴィルの市長とギルド長がモンターニュ村に手下を連れて乗り込んで来たらしい。

ラック・ヴィルでノヴァさんにギルドの職員をボコボコにされたことを逆恨みしたのだろうか?

しかし事態はもっと深刻だった。

「モンターニュ村は疫病が蔓延していると聞く、モンターニュ村の住人がラック・ヴィルに来たら疫病がラック・ヴィルに広まってしまう。だからモンターニュ村ごと焼き払うことにした!」

ラック・ヴィルの市長と名乗る男が、松明を片手に言い放つ。

モンターニュ村の人たちは後ろ手に縛られ、広場に転がされていた。

まずい! なんとかしないと!

俺は吹雪シュネーシュトゥルムで、市長と市長の手下が持っている松明を凍らせた。

ノヴァさんが音速で市長の手下に当て身を食らわせ、剣を市長の喉元に突きつける。

「疫病の村を焼き払うには皇帝陛下の許しがいる、皇帝陛下の印のある許可証をもっているのか!」 

ノヴァさんが市長に凄む。

「へ、陛下の許可ならもらっている……! 昨日帝都まで早馬を飛ばし、皇帝陛下から直に賜ってきたのだ……!」

市長は震える手で許可証を取り出した。

ノヴァさんが許可証を見て、鼻で笑う。

「陛下は今身体を患い床に伏せっている、許可証など出せん。皇太子殿下が代理政権を行っていることも知らないのか?」

ノヴァさんの言葉に市長の顔が青くなる。

「それに俺の知る皇太子殿下は疫病の村を焼き払う許可証など絶対に出さん! 皇印を偽造は重罪だ!! 皇帝陛下の命と偽り罪のない民を殺そうとした罪は重い! 帝都の兵に引き渡してくれる!!」

ノヴァさんが市長をぶん殴った。市長は「ひでぶっ……!」と叫び、ゴロゴロと地面を転がった。

ラック・ヴィルの市長とその手下はノヴァさんが帝都の兵士に事情を話すまで、村の牢屋に入れることになった。

「こんなことをしてただですむと思うなよ! 私は帝都の貴族に知り合いが多いのだ!! 牢屋なとすぐに出て貴様らに復讐しさてやる!!」

往生際悪く市長が喚く。貴族に知り合いがいようが、皇帝陛下の印を偽造したら死罪は免れないと思うが。

ラック・ヴィルと市長の耳元でノヴァさんが何かささやいた。その途端、市長の顔から血の気が引き市長がガタガタと震えだした。

ノヴァさんは市長になんて言ったのかな? 気になる。

後でノヴァさんに聞いてみたが、市長に何を囁いたのか教えてはもらえなかった。


◇◇◇◇◇


その夜はラック・ヴィルの宿には泊まらず、帝都に向かった。

ノヴァさんは白羊宮ベリエの新月までに帝都フォレ・カピタールに帰らないといけないらしい。

ラック・ヴィルの宿屋でのセックスはなくなった。ホテルでのセックスを期待していたからちょっと残念……いや何でもない。

変わりにラック・ヴィルから帝都への街道で、馬車を街道の端に止め馬車の荷台でいちゃいちゃした。

ノヴァさんが御者付きの豪華な馬車ではなく、荷馬車を買ったのは、荷台でセックスしたかったからのようだ。

豪華なホテルでのセックスもいいけど、星の数を数えながら馬車の荷台でする性行為もそれはそれで萌えた。


◇◇◇◇◇


帝都の入口に着いたのは、白羊宮ベリエの新月の前日の午前中だった。

帝都というだけあってフォレ・カピタールの城壁は高く厚く城門も立派だ。

若い門番に馬車を止められ「身分証を提出しろ! 身分証がない者を帝都に入れることはできん!」と言われた。

帝都の入口になると、チェックも厳しい。

まずいな、【シエル】なんて人間はこの世に存在しない。身分証なんかある分けがない。

本名のザフィーア・アインスとは名乗れないし…………どうしよう?? このままでは王都に入れない、完全に詰んだ。

「ノヴァさん、俺身分証がないのでここで待ってます。ノヴァさんは今日の夜までにご実家に帰らないといけないんですよね? 俺のことは気にしないで、ノヴァさんだけ帝都に入ってください」

「シエル、私と一緒にいて身分証の心配など不要だ」

ノヴァさんが不敵に笑い、耳元で囁く。

ノヴァさんのその自信はどこから来るんだ?

「おい! 何をひそひそと話している!」

内緒話を不快に思ったのか、兵士がノヴァさんに槍を向ける。

「シエルに槍を向けるとはいい度胸だ、貴様死にたいようだな?」

ノヴァさんが兵士を睨めつける。

「シエルは私の妻だ、身分は私が保証する。だからそこを通せ」

ノヴァさんの言葉に若い兵士が何言ってんだこいつ? みたいな顔をしていた。年配の兵士が慌てた様子で走ってきて、若い兵士の頭を叩いた。

ボコッと音がしたから相当強く叩かれたと思う。叩かれた兵士の目から星が飛び出した気がした。

しかしノヴァさんに槍を向けた若い兵士の不幸はそれで終わらなかった。他の兵士にも殴られたり蹴られたりしていた。動けなくなり地面に伸びだ若い兵士を、他の兵士が引きづってどこかに連れて行った。

「カル……いえ、ノヴァ様、部下が大変失礼いたしました。新人なものでお許し下さい。きつく叱っておきますので」

年配の兵士は低姿勢で終始謝っていた。

「分かればいい、気にするな」

「ノヴァ様の寛大なお心に感謝いたします」

年配の兵士が深く頭を下げる。

「通ってもよいか?」

「もちろんでございます」

結局俺たちは、身分証の提示をすることもなく、荷物のチェックも受けることなく、帝都に入ることができた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...