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加筆③ー1「ライバル令嬢の足止めと、鬼よりも怖い皇太子」アルファポリス限定
しおりを挟むボワアンピール帝国、帝都フォレ・カピタール。
王宮にて。
「ザフィーア・アインス公爵令息!」
その日はある人に呼ばれて、応接室に行くところだった。
ノヴァさんは騎士に剣術の指導をつけに行っているので、今日は彼とは別行動だ。
宮殿の庭に面した廊下を歩いているとき、白猫が横切った。
昨夜は白い猫耳のカチューシャと、白のもこもこのパジャマと、股下の短いショートパンツを身に着け、ノヴァさんにご奉仕したのを思い出してしまった。
『シエル、せっかく猫耳をつけたのだから、語尾に《にゃあ》とつけてくれ』
『あっ、あっ……ん、はぁ……はぁ……ノヴァさん、胸の突起ばかり弄ってないで、俺のペニスを掴んで……
イかせて……にゃぁん!』
昨夜の行為をリアルに思い出したら、顔に熱が集まって、その場からしばらく動けなかった。
これから会う人は時間に厳しい。
だから急いで約束の場所に行かなくてはいけない。
それはわかっている。
だが、こんな締まりのない顔では行けない。
そんなことを考えていたので、背後から声をかけられたことに、しばらく気づかなかった。
「ザフィーア・アインス公爵令息!
わたくしの話を聞いておりますの!」
ヒステリックな声で怒鳴られ、振り返ると貴族の令嬢らしき女の子が立っていた。
茶色の髪を縦ロールにし、ツリ目がちな瞳を細め、長身のナイスバディの美少女が厳しい表情で俺を睨んでいる。
おそらくだが彼女の年は、俺より少し上だろう。
華美なアクセサリーを身に着け、フリルとかリボンとかがいっぱい付いたドレスを纏っているので、高位貴族の令嬢だと思う。
誰だっけ?
こんな特徴的な人物なら、一度会ったら、顔を忘れないと思うんだけどな。
俺はこの国に来たばかりだから、この国の貴族には詳しくないんだよな。
ザフィーアの記憶にもないしな。
困ったな。
「ええと、すみません。
どちら様でしょうか?」
俺は愛想笑いを浮かべ尋ねた。
出来ればこの国の貴族とも仲良くやっていきたい。
だから、波風を立てないように穏やかに問いかけた。
「まぁ、わたくしの事をご存知ないなんて、あり得ないわ!」
だが相手をさらに怒らせてしまった。
「すみません」
そんなに有名な人なのか?
「わたくしの名前は、ナントカナル公爵家の長女カントリーナ!
花も恥じらう十八歳!
よ~~く覚えておきなさい!」
「はぁ……」
随分と高飛車な人だな。
「ザフィーア・アインス公爵令息!
はっきりと言わせていただきます!
小国の公爵令息ごときが、
第二皇子のカルム様の婚約者に収まっているなんて、
生意気ですわよ!!」
彼女は持っていたセンスを畳み俺に向けた。
彼女の目には嫉妬と憎しみが混じっていた。
あーー、やっぱりこういう人もいるよな。
ノヴァさんはこの国の皇子様、俺は滅びかけてる国の公爵令息。
あと少しすれば、レーゲンケーニクライヒ王国は滅亡し、アインス公国になると思う。
それまでは、俺を軽んじる貴族もいるだろう。
むしろ、今まで遭遇しなかったのが不思議だ。
覚悟はしていたけど、実際に遭遇すると、想像していた以上に面倒くさいな。
「第二皇子のカルム様は、頭脳明晰、容姿端麗、剣術や馬術だけでなく魔法の腕も一流!
ボワアンピール帝国の全貴族令嬢の憧れの的でしてよ!」
婚約者が褒められるのは悪い気はしない。
俺はノヴァさんの冒険者としての面しか知らない。
この……なんたらかんたら公爵令嬢の話を聞く限りでは、ノヴァさんは皇族としてのスペックが高くて、貴族からも信頼されてるんだな。
それがわかっただけでも収穫だ。
「そんな完璧な皇子であるカルム様と、
小国の公爵令息に過ぎないあなたでは、
釣り合いがとれませんわ!
しかもあなた、祖国で王太子の婚約者だったのに、
大勢の前で婚約破棄されたそうじゃない」
公爵令嬢は蔑むような視線を俺に向けた。
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