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三話「第三王子の過去」
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ヴォルフリック視点
◇◇◇◇◇
生まれてすぐ母を亡くした。
だが不自由はなかった。
精霊の血を引くと言われた母と同じ、銀髪に紫の瞳を持つ私を、誰もがありがたいと手を合わせ、陛下も二人の兄も私を愛してくれた。
九つの時、私の髪と目が黒く染まるまでは……。
ある新月の夜、そいつは現れた。
夜のような黒の髪と黒檀の目を持つ男。彼は自らを「魔王」と名乗った。
「これがお前の本当の色だ」
魔王が私の髪に触れた瞬間、銀の髪は漆黒に染まり、瞳は烏木うぼくのように真っ黒く変わった。
それでも私は人々に愛されていると思っていた。今まで通り愛してもらえると。
その日から私の人生は変わった。
神を見るような羨望のまなざしは畏怖と恐怖に変わり、愛は憎しみへと変わった。
私は薄暗い地下牢に入れられ、餌を与えられるだけの生き物になった。
いつかまた、私の髪が銀に変わったら出してやると陛下は言った。
私は陛下に愛されていたのではない、ただ利用されていたのだと、その時はじめて知った。
魔王と名乗ったあの男も私の髪を黒くするのなら、私も一緒に連れて行けばいいものを。
私の髪と目を真っ黒にした魔王も、髪と目の色が変わっただけで私を見捨てた陛下も、どちらも憎かった。
何年も過ぎ、人々の記憶から私が消えた頃。
「もう三カ月も雨が降っていない」
牢番が漏らす声が耳に入った。
「ちっ、黒髪の貴様の呪いか!」
八つ当たりのように飯を投げつけられた。
私に飯を投げつけた男の家は農家らしい。それで私に八つ当たりか。
「精霊の血をひく神子様がいれば雨が降るのに……」
男の嘆きが牢の石壁に吸い込まれるように消えた。
そんなものは言い伝えだ。
黒髪であれば異形と恐れ、銀髪であれば精霊と崇める。
くだらない。人はまことに愚かだ。
私の元を珍しい人間が訪ねてきたのは、それから数日後の事。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
生まれてすぐ母を亡くした。
だが不自由はなかった。
精霊の血を引くと言われた母と同じ、銀髪に紫の瞳を持つ私を、誰もがありがたいと手を合わせ、陛下も二人の兄も私を愛してくれた。
九つの時、私の髪と目が黒く染まるまでは……。
ある新月の夜、そいつは現れた。
夜のような黒の髪と黒檀の目を持つ男。彼は自らを「魔王」と名乗った。
「これがお前の本当の色だ」
魔王が私の髪に触れた瞬間、銀の髪は漆黒に染まり、瞳は烏木うぼくのように真っ黒く変わった。
それでも私は人々に愛されていると思っていた。今まで通り愛してもらえると。
その日から私の人生は変わった。
神を見るような羨望のまなざしは畏怖と恐怖に変わり、愛は憎しみへと変わった。
私は薄暗い地下牢に入れられ、餌を与えられるだけの生き物になった。
いつかまた、私の髪が銀に変わったら出してやると陛下は言った。
私は陛下に愛されていたのではない、ただ利用されていたのだと、その時はじめて知った。
魔王と名乗ったあの男も私の髪を黒くするのなら、私も一緒に連れて行けばいいものを。
私の髪と目を真っ黒にした魔王も、髪と目の色が変わっただけで私を見捨てた陛下も、どちらも憎かった。
何年も過ぎ、人々の記憶から私が消えた頃。
「もう三カ月も雨が降っていない」
牢番が漏らす声が耳に入った。
「ちっ、黒髪の貴様の呪いか!」
八つ当たりのように飯を投げつけられた。
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「精霊の血をひく神子様がいれば雨が降るのに……」
男の嘆きが牢の石壁に吸い込まれるように消えた。
そんなものは言い伝えだ。
黒髪であれば異形と恐れ、銀髪であれば精霊と崇める。
くだらない。人はまことに愚かだ。
私の元を珍しい人間が訪ねてきたのは、それから数日後の事。
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