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十三話「玉座の間、国王との謁見③」
しおりを挟む「陛下申し訳ありません」
母上が父上に頭を下げた。
「エアネストの髪色が変わってしまうなんて……! 灰茶色の髪に灰色の目なんてなんてみっともない! 我がヴァイス子爵家の恥ですわ! あたくしの子がこんな品位のない髪と目の色をしているなんて、亡くなったお父様やお母様、口うるさい親戚に何と言って謝罪すればいいのかしら……あたくし恥ずかしくて明日から生きていけませんわ!」
母上は心底煩わしい者を見る目でボクを睨みつけた。
母上はボクのことよりも親戚への体面が大事らしい。思いやりのある方だと思っていたのに。母上が気に入っていたのはボクの黄金色の髪と藍色の目だけだったようだ。
「エアネストお前には心底がっかりした」
父上の低い声は玉座の間に響く。
「お前を王太子候補から外す」
我が国の歴代の王は金色の髪と、青もしくは水色または緑の瞳を持っていた。
灰茶色の髪に灰色の目のボクでは王位を継げない。王太子候補から外されても仕方ない。
分かっていたことなのだが実際に言われると、ショックが大きい。
「プラチナブロンドの髪と濃い青い目を喪失し、いやしい灰茶色の髪に価値のない灰色の目を持つお前はもはや王族ではない、お前の王位継承権を剥奪する」
「……はい」
ゲームでヴォルフリックルートのソフィアが国に帰らず、新天地を求め旅に出た理由が今なら分かる。
黄金色の髪と藍色の目を失えば、こういう扱いを受けると分かっていた、だから帰らなかったんだ。
兄上の髪と目が黒檀(こくたん)色になった時もこんな扱いを受けたのだろうか?
昨日まで親切で思いやりがあった人たちが、手のひらを返し冷たい視線を向ける。
ボクには支えてくださるヴォルフリック兄上がいる、それでも切ない気持ちになった。
お一人で耐えられた兄上は、ボクなんかよりずっとおつらかったはず。その時の兄上の気持ちを思うと胸がズキリと痛んだ。
「シュタイン侯爵の地位と領土を与える、王都から出てそこで余生を過ごせ」
「はい」
ボクは兄上を助けられればそれで良かった。鮮黄色の髪と群青色の瞳を失った事を後悔してない。兄上が幸せになれるなら、侯爵の身分に落とされ、辺境地に飛ばされてもかまわない。
「そなたは今日から王子エアネスト・エーデルシュタインではない、シュタイン侯爵だ」
「承知いたしました」
王子の身分はボクには重かった。侯爵領でのんびりと野菜でも育てた方が性に合っている。
領地改革とスローライフ、それはそれで異世界転生っぽくて楽しそうだ。
ちなみにエーデルシュタインとは宝石のこと、シュタインとは石のことである。
「宝石箱の王子様~愛をささやいて~」のゲームのタイトルはここから来ている。
ボクは今日から宝石(エーデルシュタイン)ではなく|石ころ(シュタイン)になった。石ころは石ころらしく、地方で畑でも耕してのんびり暮らそう。
「なお王妃でありエアネストの母であるルイーサへの処遇だが」
「はい、陛下……」
母上が父上に頭を下げる。母上の顔は青ざめていた。
「エアネストの髪と目の色が変わったことは、予測しがたいことであり、王妃の落ち度ではない。また王妃は国母として民に慕われ、また義理の息子であるワルフリートとティオの面倒をよく見ている。その功績を評価し王妃の地位はそのままとする」
「ありがとうございます、陛下」
母上が涙を流し父上に感謝の言葉を述べた。
「エアネストはああなったが、次の子がプラチナブロンドの髪と紺碧の目を持って生まれて来ないとは限らんからな」
子爵家の出身でありながら、ダークブロンドの髪と空色の目を持つ母上を、父上は手放したくないようだ。
金髪碧眼の子孫を求めると、どうしても同族での結婚になってしまいがちだ。
DS版「宝石箱の王子様~愛をささやいて~」のヒロインソフィアの攻略対象に、いとこしかいなかったのもそういう背景からだ。
母上には一度プラチナブロンドの髪にコバルトブルーの目の子供を生んだ実績もある。母上はお若いし、父上が二人目に期待する気持ちも分かる。
「陛下のお心遣いに、ヴァイス子爵家を代表して感謝を申し上げます」
母上は自分の地位と子爵家におとがめがないことを知り、安堵の表情を浮かべた。
「ヴァイス子爵家の誇りにかけて、必ずや輝く金の髪と深い青い眼を持つ子を生んでみせますわ。二度とエアネストのような失敗はおかしませんわ」
母上がボクをちらりと見る。その視線は軽蔑の色を含んでいた。
母上にとってボクは失敗作なの? 昨日まで「エアネストは私の誇りだわ」「自慢の息子ですわ」とか言ってたのに。
母上にとって大事なのは王妃の身分と、ヴァイス子爵家の面目だけらしい。侯爵の地位に落とされ、王位継承権を剥奪されたボクには興味もないようだ。
プラチナブロンドの髪と青碧の瞳を失ったボクは、母上と子爵家にとって恥でしかないらしい。
◇◇◇◇◇
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