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三十八話「死の荒野《トート・ハイデ》」
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ヴォルフリック兄上が掛け声とともにモンスターを、一刀両断にする。
兄上に斬られた牛のようなモンスターは、一枚の銅貨に変わった。
ここはゲームの世界なので、モンスターを斬っても血は流れない。
お金や宝石に魔王が闇の力を与え、モンスターに変えている。
だからモンスターを倒すと宝石やお金に戻るのだ。
強いモンスターほど、得られる金も経験値が増える。
モンスターを倒すのをなりわいにしている、冒険者という職もある。
冒険者はモンスターを倒してお金と経験値が得られるし、町の人はモンスターが減りモンスターに襲われたり農地が荒らされる被害が減る。
冒険者と町の人は win-win の関係なのだ。
だけどこのシュタイン侯爵領、特に死の荒野には冒険者が来ない。
理由はモンスターがそこそこ強いわりに、得られるお金と経験値が極端に少ないからだ。
しかも死の荒野に出現するほとんどのモンスターが、毒やまひや眠りなど厄介なスキルを持っている。
荒野では飲み水の確保がむずかしく、北に位置するこの地では、冬季に旅をするだけで凍死する危険もある。
たかが銅貨一枚か二枚にしか変わらないモンスターのために、そんな危険を犯しにやってくる冒険者はいない。皆無と言ってもいい。
前世でゲームをプレイしていた時も、死の荒野にはほぼ行かなかった。
死の荒野に好んで行くプレイヤーは、討伐モンスターをコンプリートしたいマニアぐらいだ。
せめてレアなアイテムを落とすモンスターが一体でもいればいいんだけど、そういったモンスターも存在しない。
冒険者に退治されないので、死の荒野のモンスターが増え、時々町を襲う。
シュタイン領は貧しく、冒険者を雇う金も、自警団を組織する力もないのだ。
民が安全に暮らせるためにも、この死の荒野のモンスターをなんとかしなくては!
兄上が魔法や剣を使い、襲いくるモンスターを次から次へとお金に変えていく。
王都からシュタイン領への旅の途中、山賊に襲われた時は、ボクは馬車の中にいたから、兄上の勇姿を見ていない。
ふぁぁ、バスタードソードを振るう兄上はかっこいいなぁ。
「侯爵様、まだ終わりませんか?」
うっとりと兄上の勇ましい後ろ姿を眺めていたら、御者のルーカスに涙目で急かされた。
「ごめんなさい、今やりますね」
ボクが始めてもいなかったことを知ったルーカスが、死んだ目をした。
ここはモンスターが数多く生息する死の荒野、長居をしてはいけない。
ボクは精霊様からもらった白樺の枝を、乾いた大地に突き刺した。
シュタイン領が豊かな土地になるように、民が安心して暮らせる地になるように願いながら。
次の瞬間、白樺の枝は千年この地に根ざした大木のような存在感を放った。
なぜかわからないが、白樺の枝はもう大丈夫なような気がした。
「終わりました、帰りましょうか」
ボクの言葉を聞いたルーカスが涙を流して喜んだ。
◇◇◇◇◇
兄上に斬られた牛のようなモンスターは、一枚の銅貨に変わった。
ここはゲームの世界なので、モンスターを斬っても血は流れない。
お金や宝石に魔王が闇の力を与え、モンスターに変えている。
だからモンスターを倒すと宝石やお金に戻るのだ。
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なぜかわからないが、白樺の枝はもう大丈夫なような気がした。
「終わりました、帰りましょうか」
ボクの言葉を聞いたルーカスが涙を流して喜んだ。
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