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一話「悪役王子に転生していたことに気が付きました!」
しおりを挟む七歳の誕生日、バースデーケーキのローソクの炎を吹き消した瞬間思い出した。
ここが前世でプレイした「紫の髪の勇者世界を救う」という冴えないタイトルのRPGの世界だと。
そしてぼくはゲームの世界の悪役で、物語の序盤の序盤に勇者によって倒される王(今は王子)、金髪の悪魔の異名を持つラインハルト・フォルモーントだということを!
ラインハルトが一六歳の時、国王夫妻が他界。王太子であるラインハルトが王位を継ぐ、それがフォルモーント王国の悪夢の始まり。
ラインハルトは悪政の限りを尽くし、最後は勇者に倒され、民衆になぶり殺しにされる。
殺すならせめて剣でひと思いにやってほしい。なぶり殺しとか痛みが長く続くので勘弁して。
だけどラインハルトはなぶり殺しにされても仕方のないことをしている。
貧しい子供を奴隷として他国に売りとばし、初夜権法を作り結婚式を終えたばかりの花嫁たちの処女を奪いまくった。
くそゴミ虫野郎だ。
ちなみにラインハルトに処女を奪われた女性の中に、勇者の幼なじみもいた。
勇者の親友と幼なじみの結婚式、二人にとって人生で一番幸せな日になるハズだったその日、王に即位したばかりのラインハルトが初夜権法を発令。
花嫁は兵士にさらわれ、花嫁を助けようとして花婿は兵士に斬りかかり、殺された。
勇者の幼なじみの少女は初夜権法の最初の犠牲者となり、翌日自害した。
勇者は親友と幼なじみを同時に失い、ラインハルトを殺す決意をする。
実はラインハルトは魔王サイドと通じていて、金品と引き換えに子供たちを魔族に売っていた。
魔王ミーヌスは一万年前に封印された破壊神・最悪の闇の復活をもくろんでいた。
子供たちを奴隷として他国に売り飛ばしたというのは建て前で、本当は魔族の食料や破壊神復活の生贄のために魔王に売られていたのだ。
本当~~~~に殺されても仕方のないくそ野郎だと思う。
よりによってそのくず王(今は王子)に転生するとは……!
周りは誕生日の華やかな空気に包まれているのに、ぼくの目の前は一気に暗くなった。
民衆になぶり殺しにされるのは嫌だ!
絶対になんとかして死亡フラグをへし折ってやる!
「お誕生日おめでとうラインハルト、誕生日プレゼントに何が欲しい?」
にこやかな笑顔で話しかけてくる金髪のイケメン。歳は多分二十代後半。
頭に冠を乗せてるから多分王様、ラインハルトの父親だろう。
確か名前はハインツ・フォルモーント。
「遠慮なく言ってみなさい」
ニコニコしながら話しかけてくるのは、栗色の髪のしとやかな美女。歳の頃はやはり二十代後半。
服装や装飾品から判断して多分王妃だろう。名前はアンナ・フォルモーントだった気がする。
二人はとてもやさしくて穏やかな性格で、こんな善良な人たちからなぜ悪魔(ラインハルト)が生まれたのか、不思議だ。
誕生日プレゼント?
なんだろう、嫌な予感がする。破滅へまっしぐらなフラグがこの時点から立っているような……。
「確か前に別荘が欲しいと申していたな」
父上の言葉にぼくは首を傾げる。
「別荘……?」
心臓がざわざわざわする。思い出さないと大変な事になるような……。
そうだ別荘!
ラインハルトは見晴らしの良い場所に新しい別荘を建てたいとだだをこね、国で一番見晴らしの良い高台に建っていた孤児院をぶっ壊し、そこに別荘を建てた。
なんで孤児院がそんな見晴らしの良い場所に建っていたかというと、ラインハルトの曾祖父が国を統治していた時代、曾祖父の夢に女神が現れこう告げたのだ。
「国で一番見晴らしの良い場所に孤児院を建てなさい。やがてそこから勇者が巣立ちこの世界を救うでしょう」と。
でそのありがたい孤児院をラインハルトは「古くて汚くて邪魔! あの場所はぼくの別荘が建つのにふさわしい!」とわがままを言ってぶっ壊し、無理やり別荘を建てさせた。
孤児院は暗くて日の当たらない古い教会に移転された。
教会は孤児院より小さく、半分以上の子供たちが孤児院を追われた。
孤児院を追われた子供たちの中に勇者の三つ上の姉もいた。勇者の姉は人買いに売られ娼婦にされた。
勇者がその事を知るのはずっと後の事。勇者の姉は幼い勇者を心配させないために「大きなお屋敷でメイドとして働くの、心配しないで」と言って孤児院を出ていった。
実際には娼館に売られ、食べ物もろくに与えられず、毎夜客を取らされ、言うことを聞かないとムチで打たれていた。
九年後、勇者の姉リーゼロッテは娼館に売られてきた少女の一部が破壊神復活のために生贄にされていると知る。その事を弟に知らせようとして、娼館を抜け出し追っ手に切られる。
ボロボロの姿で孤児院にたどり着いたリーゼロッテは、真実を話し弟の腕の中で息を引き取った。
事実を知った時の勇者の心境を思うと胸が痛い。しかも少女たちを破壊神復活の生贄として魔王に売っていたのは王(ラインハルト)だし。
基本的に現王ハインツと王妃アンナはいい人たちなのだが、名君ではないし、良い親でもない。
ラインハルトをあまやかして育て、わがままし放題のバカ息子にした。
あと人を見る目がない。
王は孤児院を壊すとき「子供たちには今まで通りの生活をさせるように、前の孤児院と同じ広さの場所を用意するように」と命じた。
だが担当に当たった役人が悪党で、実際に子供たちに与えられたのは孤児院の半分以下の広さの廃教会。
そこはすきま風がピューピュー吹いて寒く、食事の質を下げ量も少なくし、浮いた金は役人が着服したため、子供たちの中には病気にかかるものもいた。
そんな経緯があり、勇者は王室に恨みを抱く。
やばい! 破滅フラグの一個目だよ! なんとかしてフラグをへし折らないと!
「いいえ父上、別荘はいりません。というか誕生日プレゼントはいりません」
ぼくの発言に、両親と近くにいたメイドと執事たちが目を丸くした。
それはそうだ。今まで金を湯水のごとく遣いわがままに育った王子が、プレゼントをいらないと言ったのだから。
「本当にいらないと申すのか? 前々から別荘が欲しい、欲しいと言ってだだをこねていたではないか?」
「はい父上、ぼくも今日で七歳になりました。そろそろ分別をわきまえ、大人としての良識を身に付けても良い年頃かと」
ぼくの言葉に周りから歓声がわく。父上と母上なんか目に涙を浮かべている。
そんなに珍しい事を言ったのだろうか?
「可愛がるあまり自由闊達に育て過ぎたと思っていたが、なんと立派に……!」
父上と母上がぼくに歩み寄り、抱きしめ、涙を流した。
自由闊達にではなく、わがままにの間違いでは?
記憶が戻る前とはいえ、今まで好き勝手やってきてすみません。ぼくは心の中で両親にわびた。
「では、今年の誕生日プレゼントは……?」
「先ほども申し上げた通り遠慮いたします」
「そういうわけにも……」
両親が困った顔でぼくを見る。
王子ともなると、誕生日プレゼントを受け取らないという訳にもいかないらしい。
「でしたらこうしてください」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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