【BL】【完結】序盤で殺される悪役王子だと気づいたので、全力でフラグを壊します!

まほりろ

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二十七話「ぼくを好きにしてくれ!」

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「ラインハルト殿下は私の婚約者。勇者様とはいえおふざけがすぎますね」

フリード公子が勇者様をねめつける。勇者様にも服を着てもらいました。風邪をひいたら大変だからね。

あれ? フリード公子いまリヒトのことを「勇者様」って呼ばなかった? 聞き違いじゃないよね? ぼくフリード公子にリヒトが勇者様だって教えてないのにどうして知ってるんだろう?

「勇者? 誰の事を言ってるのかは知りませんが、ラインハルト王子はおれの婚約者です。証人もいます。フリード公子こそ引っ込んでいてください」

勇者様がフリード公子に刺すような視線を向ける。

えっ?! ちょっと待って!? ぼくいつ勇者様と婚約したの??

「リヒト、婚約者ってどういうこと?」

「モーントズィッヒェル公爵領へ向かう馬車の中でおれと結婚すると約束してくださったではありませんか。バルドリックが証人です。忘れてしまったのですか?」

勇者様がぼくの手を取り、悲しげに眉を下げる。

勇者様が世界一強くなったら身分の違いなど関係なく勇者様の好きな人と結婚出来るよとは言ったけど、勇者様と結婚するとは言ってない。

待てよ? 勇者様の好きな人の特徴って確か「高貴な身分で」「金髪で」「青い目」の人……ずっとフリード公子だと思っていた。

そういえば……ぼくの髪と目の色はフリード公子と同じ金色と青。

ええっ?! それじゃあもしかして……!

「あの時リヒトがいってた好きな人って……」

「あなたです。ラインハルト王子」

勇者様に真っすぐに見つめられ、ぼくの顔に急速に熱が集まる。

勇者様がぼくを……好き?

じゃあ今まで勇者様がぼくにキスしていたのは、フリード公子の代用としてではなく、ぼくが好きだから?

そうだと分かった途端、胸がドキドキして、勇者様から目を逸らせなくなってしまう。

勇者様の顔が近づいてきてあと一センチというところまで迫ったとき、フリード公子に抱き寄せられた。

「残念ですが勇者様、私と殿下の婚約は王命、覆すことはできません。あきらめてください」

フリード公子が勝ち誇った笑みを浮かべ、ぼくをお姫様抱っこした。

「王命……」

勇者様の目に闇が宿る。

ヤバイ! このままだと勇者様がヤンデレ化してしまう! 勇者様がヤンデレ化したら父上とフリード公子が殺される!

「落ち着いてリヒト! ヤンデレ化禁止!」

「ヤンデレ……?」

勇者様がキョトンとした顔で首をかしげる。その顔は無邪気な子供のもので、ぼくはホッと息をつく。

ぼくはフリード公子にお願いして床に下ろしてもらった。

「フリード公子、なぜリヒトが勇者様だと知っているのですか?」

婚約のことは置いといて、フリード公子がリヒトを勇者様と知っていた事が気になる。

フリード公子が意味ありげに笑う。

「殿下はベルナール男爵を覚えておいでですか?」

「ええ、先日玉座の間でフリード公子に断罪された小柄でひげ面の男ですよね」

「そのベルナール男爵なのですが、彼は国中の美人を買い集めはべらせていました」

あのスケベおやじ!

「男爵領には大した名産品や特産品がない、なのになぜかベルナール男爵の羽振りはよかった。その金がどこから入ってくるのか調べているうちに、ある者たちに行き着いたのです」

「ある者たち?」

「はい、表向き商人を装っていましたが、彼らの国も住まいも不明でした。ベルナール男爵は商人に領内の子供を売り金を作っていた」

正体不明の奴隷商人……まさか! ぼくの背中を嫌な汗が伝う。

「調べているうちに気づいたのです、どうやらその商人たちは人ではないと。そして表向きは奴隷として売られた子供たちは……」

フリード公子は最後まで言わず目を伏せた。

売られた子供たちは奴隷商人を装う魔族に食べられたか、破壊神復活の生贄にされた。

父上が治めるこのフォルモーントの国内で、子供狩りが行われていた……!

怒りで全身の毛が逆立つのを感じた。

「ラインハルト王子……!」
「殿下……血が!」

握っていた拳から血が一筋流れ床に染みを作る。

「大丈夫だよ」

回復魔法をかけようとする勇者様とフリード公子を制する。

ぼくの痛みなど売られた子供たちの痛みに比べれば、どうということはない。

国内でかかる不正がまかり通っていたことも知らず、今日まで安穏(あんのん)と暮らしてきたとは……! 悔しさと恥ずかしさで、胸がつぶれる思いだ。

「フリード公子、話の続きを聞かせてください」

フリード公子はぼくに軽く一礼し、話を続けた。

「時を同じくして殿下のお人柄が急に変わられ、孤児院の保護に乗り出されたという知らせを受けました」

隠しているつもりだったが、見る人が見たらバレバレだったんだ。

「孤児院の子供たちの中でも、取り分けリヒトという少年を気にかけていると」

フリード公子が勇者様に突き刺すような視線を向ける。勇者様はその視線に臆せず、ぼくの腕に自身の腕をからめ、フリード公子に鋭いまなざしを向ける。

二メートルを超す大男も、食わせ者の貴族もすくませたフリード公子の視線にひるまないなんて、勇者様はすごいな。

「それで気づいたのです、殿下は曾祖父アルドリック国王同様、勇者様を保護せよと神の啓示を受けたのではないかと」

フリード公子が膝をつきぼくに目線を合わせた。ぼくに向けるフリード公子の目は、いつもと同じ温かななものだった。

「うん、だいたいそんなところかな」

まさか七歳の誕生日に前世でプレイしたゲームの悪役王子に転生したと気づいたとは言えない。

ぼくは勇者様の腕をほどき、床に膝をついた。

「リヒト、いえ勇者様。今まで隠していてすみません。あなたは曾祖父の代から伝わる伝説の勇者で、魔王を倒せる唯一の存在なのです」

勇者様の顔を見る、勇者様はぼんやりとぼくの顔を見ていた。

それはそうだ、勇者様はまだ七歳の無垢な子供、いきなり伝説の勇者様とか言われても困るよね。

「おれが勇者……」

「はい、そうです勇者様」

「勇者になったら……」

「えっ?」

「おれが勇者になったら、ラインハルト王子と結婚できますか?」

「はっ……?」

勇者様がぼくの手を取る。

「おれが世界一強くなったら結婚してくれると約束してくれましたよね!」

「それは……」

結局そこに行き着くのか。ぼくは深く息を吐いた。

「勇者様、伝説の勇者だからといってあまり調子に乗らないでくださいね」

フリード公子が勇者様の手を払った。フリード公子は穏やかにほほ笑んでいるが、目は笑っていなかった。

一流の氷魔法の使い手は目から「吹雪(ジェネーシュトゥルム)」を出せるらしい。

この部屋の温度が一気に下がり、ぼくは身震いした。

「おれは世界を救う勇者なんでしょう! だったらラインハルト王子と結婚しても問題ないハズです! ラインハルト王子だっておれとの結婚を承諾してくれました!」

「いやあれは……」

まさか勇者様の好きな人がぼくだとは思わず、つい約束してしまったとは言えない。

「私は陛下らから正式に結婚の承諾を得ています。私こそラインハルト殿下の正当な婚約者です!」

ぼくはまだ承諾してないけどね。

「国王陛下は勇者(おれ)の存在を知らないから、フリード公子とそんな約束をしたんです!」

「仮に陛下が勇者の存在を知っていたとしても、君のような子供にラインハルト殿下を任せたとは思えないが!」

フリード公子がぼくの左腕を、勇者様がぼくの右腕を掴み、互いに自分の方に引っ張りだした。

両方から引っ張られ、ぼくは痛みで泣きそうになる。

ぼくは二人の手を同時に払い、床に頭を付けた。

「すみません!」

日本風の土下座だ。

「ラインハルト王子……!」

「殿下なにを……!」

二人の声は動揺しているように聞こえた。

「二人と結婚の約束をしたのはぼくだ! 国政のためにフリード公子を利用し、世界平和のために勇者様を利用した!」

ぼくは酷い人間だ二人の人間をいいようにもてあそんだ。でも時間を巻き戻せたとしても同じことをするだろう。

国政にはフリード公子が必要で、魔王討伐には勇者様が必要なんだ。

ぼくは頭を上げ二人の顔を見る。

「ぼくとセックスしたいならぼくの体を好きにすればいい! 殺したいなら殺せばいい!」

「王子様なにを……!」

「殿下そのようなことはおっしゃらないでください!」

「その代わり約束してほしい! フリード公子は王佐として政に携わり民を幸せにすると! 勇者様は世界一強くなって魔王を倒し世界を平和にすると!」

二人は目を見開いてぼくを見ていた。



◇◇◇◇◇
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