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三十二話「十二歳の旅立ち」***

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勇者様がとても強くなったので、魔王討伐の旅に出ることになった。

ゲームの勇者様が魔王討伐の旅に出るのは十七歳。孤児院で育ち、魔法の勉強も剣術の鍛錬も受けたことがなく、なんの後ろ盾もなかったので、その年での旅は妥当だと思う。

この世界の勇者様は、七歳から魔法と剣の英才教育を受け、十二歳にして国で並ぶ者がいないほど強くなった。

十四歳ぐらいで旅に出ることを想定していたので、勇者様の成長の早さは嬉しい誤算だ。リュミエールが勇者様のそばで「リヒトすごい!」「リヒトかっこいい!」ってずっと応援していた効果が大きい。

「結婚は魔王を討伐してからね」と父上に言われたのもきいていたのかもしれない。

勇者様とはいえまだ十二歳の子供。子供だけでは旅に出せない。他国の領土に入るには許可もいるし、政治に関わる事もあるからと、保護者兼やっかい事の処理係としてフリード様も旅に同行する事になった。

リュミエールも勇者様と一緒に行くと言う。勇者様もリュミエールのいない旅などあり得ないと言って、旅への同行を承諾した。

ぼくも一緒に行くことにした。ゲームのストーリーの記憶はリュミエールよりぼくが色濃く受け継いだので、ぼくが一緒に行った方が断然旅が楽になる。

レアモンスターがいる場所も、見つけにくい宝箱の場所も、敵の弱点も全部知っているのだから連れて行かない手はない。

だけどぼくが旅に同行する一番の理由は、フリード様と一緒にいたいからだ。

勇者様とリュミエールは旅の間中イチャコラしてるのに、フリード様と離ればなれになって、ぼくだけ城で留守番なんて寂しすぎる。

フリード様が浮気しませんように、フリード様が無事に帰って来ますようにと精霊に祈り、やきもきしながらいつ帰ってくるか分からない人の帰りを待つなんて絶対に嫌だ。

この日のために世界中から買い集めた装備品で身を固め、城で保有している船に乗りぼくたちは旅立った。

ちなみにゲームだと貧乏装備で勇者様の一人旅。何日もかけて海沿いの道を歩き、遠回りして次の町を目指さなくてはならない。

王族の金と力をフルに生かし、自前の船で旅立ち時間を短縮する。これぞ王族チートのなせる業!


◇◇◇◇◇


旅はサクサク進んだ。

なんせ経験値が高い敵の生息地も、ゴールドをいっぱい落とす敵の生息地も、レアアイテムを落とす敵の出現場所も知っているのだ。

経験値は爆上がりだし、城に援助を頼まなくてもお金は腐るほどあるし、お金で買える範囲の最強装備はすぐにそろった。お金で買えない物はモンスターからいただいたり、フィールドに置いてある宝箱からいただいた。

ゲームじゃないのにフィールドに宝箱が置いてあって、誰にも開けられていないのは不思議だが、そこは突っ込んではいけない。

ストーリーを知ってるから面倒な手順とかすっ飛ばして進んでる。

敵の弱点を知っているから、中ボス程度ならワンターンキルだ。

そんな訳でゲームでは五年ぐらいかかる旅を(ゲームの公式小説設定)、半年でクリアしました。

明日はいよいよ魔王城に乗り込みます。

その前に今日は魔王城の手前にある終わりの町で、ゆっくり休む事になりました。

部屋割りはフリード様とぼくが同室で、勇者様とリュミエールが同じ部屋。

旅をしている間ずっとこの部屋割りだった。

リュミエールと勇者様はちゅっちゅっしながら部屋に消えたので、今頃はベッドの上で裸で抱き合っているだろう。あの二人は今日に限らず毎晩やってるけど。

ぼくも今日はフリード様にはっ、初めてをあげようと思う。

今まですんなり旅して来れたから心配はいらないと思うけど、相手は魔王、何が起こるか分からない。だから今晩フリード様にぼくの全てを捧げる!

……と言い訳でもしないとぼくから誘えそうにない。

精通はいまだにしてないから、お尻の穴をとかされた事はないから痛いかもしれないけど。

ぼくには秘密兵器のスライムオイルがある?

これがあれば処女の穴にもすんなり入ってしまうらしい。まさに初夜の必需品。決して安くはない値段だけど、体へのダメージを考えれば高くはない。

旅に出るまでこんなアイテムがあるなんて知らなかった。「紫の髪の勇者世界を救う」はR-15(残虐な描写がある故の年齢制限)ゲームだったからね。卑猥なアイテムは出てこなかったんだ。

ストレートに「フリード様、ぼくを抱いてください」と言った方がいいかな?

ダメだ! ぼくにはとても言えない! 

スライムオイルを渡せば、聡いフリード様なら察してくださるかな? 察してくれるといいな。きっと察してくださるだろう。

宿屋で一番高い部屋、天蓋付きのベッドとか、大きめのソファーとかがある広めの部屋だ。旅の当初はこのぐらいの広さの部屋を「狭い」と言って、フリード様を苦笑いさせていた。

王族の部屋が広すぎて感覚がおかしくなったらしい。

ランプの明かりを暗めに設定し、パジャマを着てフリード様がシャワールームから出て来るのを待つ。

毎晩素股やフェラはされてるけど、セックスは初めてだから心臓がドキドキしてしまう。

シャワールームから出てきたフリード様の髪は濡れていて、色っぽさがましていた。

白のバスローブからのぞく鎖骨や生足が艶美だ。

「ラインハルト、起きていたのですか?」

フリード様がベッドに腰掛けると、ベッドがぎしりと音を立てた。

「うん、あのね、ふっ、フリード様これ……!」

ぼくは意を決してフリード様にスライムオイルを差し出す。フリード様の顔は恥ずかしくて見れなかった。

心臓がとてもドキドキしている。拒絶されたらどうしよう?

「ラインハルトはこのオイルの意味をご存じなのですか?」

コクリとうなずく。フリード様の顔を見れないから、フリード様が今どんな表情をしているか分からない。

「ラインハルトはまだ精通してませんが、精通するまで手を出さないという約束を破ることになりそうですね」

フリード様がぼくを押し倒し、ベッドに組み敷いた。

フリード様の青い目はこんな時でもキラキラしていて綺麗で、だけどいつもよりちょっとだけ頬の色が赤かった。

ぼくは恥ずかしさに、フリード様から顔を背けた。

フリード様がぼくの顎を掴み、前を向かせる。

「ラインハルト、あなたに入れる側に回るか、受け入れる側に回るか選択させると言いましたが、この香油を私にくださったという事は、私があなたを好きにしていいという意味に解釈してよろしいでしょうか?」

ぼくの顔に熱が集まり、耳まで赤く染める。

「………………うん」

ぼくは小さくうなずいた。

本当は「ぼくを好きにして」と続けたかったんだけど、言葉が出て来なかった。

「愛しています、ラインハルト」

フリード様がぼくの唇にキスを落とし、ぼくもそれを受け入れた。

この日ぼくはフリード様と初めてつながった。

フリード様とのセックスはとても気持ちよくて、ぼくは何度も空イキさせられた。なんとセックスしてもまだ精通しなかった。

フリード様はとても上手だった。こんなに上手なんだから、やっぱり童貞じゃなかったんだろうな。

フリード様が他の人とセックスしていたのかと思うとぼくの胸はズキズキと痛んだ。


◇◇◇◇◇


「フリード様ぼくの初めてをもらってくれてありがとう。フリード様は初めてじゃなかったかもしれないけど、ぼくはフリード様に抱いてもらえて嬉しかったよ」

翌朝フリード様に告げたら、ベッドに組み敷かれてしまった。

「私も初めてでしたよ。私は一四歳の時からラインハルトひと筋だというのに、その言い草はあんまりですね」

フリード様は穏やかな表情をしていたけど、目が笑っていなかった。

「十四歳までにひととおり済ませていたのかと……」

「ラインハルトのためにずっと貞操を守って来たのに、まさかあなたに私の貞操を疑われていたとは」

フリード様の瞳がギラリと光る。あっこれはまずい。フリード様を本気で怒らせてしまったみたいだ。

フリード様にスライムオイルなしでお尻をバチュバチュ突かれ、魔王城に乗り込むのは一日延期された。

勇者様とリュミエールも昨晩は盛り上がたらしく、起きてから二回戦をしていたらしいので、延期されることに文句を言う人はいなかった。



◇◇◇◇◇
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