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十七話「これは絵本の読み聞かせ……ですよね?お兄様??」①
しおりを挟む八時五十五分。
私は部屋の中を右に行ったり、左に行ったりを繰り返していた。
義理の兄とはいえ、男の人を部屋に招いてしまった。
男の人を部屋に招くなんて、前世と現世を合わせて初……。いや幼稚園のとき、お隣のよっちゃんを誕生日会に招くというリア充イベントがあった!! 前世を入れて二回目。
記憶を取り戻した日、フリード様が私の部屋にいたのは、招いたわけではないのでノーカウントだ。
お風呂に入ったし、トリートメントもしたし、ネグリジェもガウンもちゃんと洗ってあるから石鹸の匂いがするし、歯も磨いた。うん大丈夫! 臭くない!
推しに臭いと思われ顔をしかめられたら泣いてしまう……。
喉が渇いたたときのためにティーポットに熱々の紅茶も入れてもらった。絵本の内容が素晴らしく泣いてしまったときのためにハンカチも用意した。準備万端!
そわそわしていると、部屋の扉がコンコンコンコンと四回叩かれた。ビクン! と体が跳ねる。
時計の針はピッタリ九時を指している。フリード様がいらしたのね!
落ち着け私、フリード様は可愛い妹に絵本を読みに来てくれただけだ。
密室で二人きりになるぐらいで緊張するな!
大きく深呼吸をしてから扉を開けた。
「はーい」
扉を開けるとパジャマにガウンを羽織ったフリード様の姿が!
美少年のパジャマ姿尊い! スチル絵にしてください! 特大ポスターにしてくだされば、部屋に飾ります!
「こんばんはディアーナ」
「こんばんはフリードお兄様」
はぁぁ……! 推しの笑顔が尊い!
「入ってもいい?」
「はい、もちろんですわ」
フリード様にソファーをすすめ、私は対面のソファーに腰掛ける。
「お兄様、お茶はいかがですか?」
「ありがとう」
慣れない手つきで紅茶をカップに注ぐ。
「美味しいよ」
カモミールティーはフリード様のお口にあったようだ。
「ディアーナ、絵本の読み聞かせを始めようか?」
フリード様が私を手招きする。
「えっと……」
「絵本の読み聞かせをするんだ、対面では遠いよ」
てっきり対面のソファーに座っていればいいと思っていた。
「それとも昔みたいに、ベッドで添い寝して読もうか?」
「ふえっ……?!」
ベッドで添い寝……! 三年前のディアーナはフリード様にそんな贅沢なことをしてもらっていたのか!!
「いえ、ソファーで十分です」
フリード様に添い寝なんてされたら、心臓が破裂してしまう!
人が一人座れる暗いの間隔を空けて、フリード様の隣に腰かける。
「ちょっと遠いかな」
フリード様が私との距離を詰める。
満員電車の細長いイスに座る人々のごとく、隙間なくピッタリと体をくっつけられてしまった。
距離を取ると、距離を詰められ、ソファーの端まで追い詰められてしまう。
もう逃げ場はない!
フリード様の腕が私の肩に回る。
「捕まえた」
推しに至近距離でほほ笑まれ、私の心臓がバクバクと音を立てる。
金色のサラサラの髪からシャンプーの香りがする。長いまつ毛、碧玉色の瞳、白磁のようにきめ細やかな肌、神様に愛されて造形された美しいお顔。
絵に描いたような美少年が、吐息のかかる距離に……!
フリード様の桃色の唇に目が言ってしまう。人工呼吸とはいえ、フリード様の唇と私の唇が……。
落ち着け私! こういうときは掛け算の暗証だ! 論理的な思考を取り戻すんだ!
1×1=3、いや4?……だめだ! 簡単な掛け算も出来なくなってる!
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