異世界に転移したら王弟殿下に溺愛されました 私が伝説の女神ってマジですか?・完結

まほりろ

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二話「レヴィン王子の憂うつ」

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―レヴィン王子視点―



「釣れませんね~~」

「……退屈だな」

釣竿を放置し、ボクは草の上に寝転がる。

従者のドミニクを連れ、領内にある湖で釣り……今日はしかし雑魚一匹かからない。

「はぁ~~女も酒もないところで、昼間から男同士で釣りなんて……」

従者ドミニクのいつものグチが始まった。

「言うな、ボクだって釣りの相手がお前で、飽きあきしているんだ」

むくっと起き上がり、従者の顔をジロリとにらむ。

数メートル先にいるドミニクは、ブサイクではない、どちらかといえば美男子の部類に入るだろう。

肩まで伸びた少しくせのある赤い髪、オレンジ色の瞳、ややたれ目だが、目鼻立ちの整った顔、年齢は二十代後半。

ボクの護衛というだけあり、筋肉質な体つきで、その上身長もあるので町を歩けば女の方から寄ってくる。

しかしやはり男だ、むさ苦しさがあるし、毎日見てると飽きる。

「それに文句を言いたいのはボクの方だ。お前はボクのような高貴な人間と毎日釣りができて名誉だろうが、ボクは毎日お前のしまりのないにやけづらを見ながら釣りをしなければならないのだぞ?」

「自分のことを高貴とか言いますか?」

ドミニクがあきれた顔で言う。

「違うのか?」

「たしかにレヴィン様は、前国王のご子息で、現国王の弟、これ以上ないくらい高貴なご身分の方です」

分かってるじゃないか。

「今は亡き母君ゆずりの美しい金色の髪に、エメラルドのように輝く緑の瞳、女の子のよいに可愛らしい顔の持ち主で、体格も男にしては華奢で、女装したら絶対に似合うでしょうし、同じ空間にいると目の保養にはなりますよ」

「ケンカを売っているのか?」

従者の歯に衣着きぬきせぬ物言いに、カチンときた。

誰が女顔だ、誰が女装が似合う華奢な体格だ!

「ですがレヴィン王子がいくら女の子のように綺麗な顔をしていても、本物の女にはかないません! 女の子を数人呼んで宴会をやりましょうよ! なんなら飲み屋街に繰り出してもいい!」

ニヤニヤしながらドミニクが言う。

まったくこの従者は、よくもそんな軽口をたたけたものだ。少しはボクの置かれた立場を考えろ。

「ドミニクお前……ボクを殺す気か?」

ボクの言葉にドミニクが真顔になる。

自分で思っていたより声のトーンが低くなってしまった。

「やっぱり、真面目に釣りをしましょう!」

「そうだな、それがいい」

餌をかえ、再び池に釣り糸をたらす。

それからしばらくボクもドミニクも無言だった。

湖を渡る風の音だけが耳に届く。

ボクの名前はレヴィン・ギュンター=イオニアス。

イオニアス王国の前国王の息子であり、現国王の唯一の弟で第一王位継承者、そしてシェーンフェルダー公爵家の当主でもある。

こう書くと聞こえはいいが、ようは国王である兄の血のスペアだ。

ボクはいま非常に微妙な立場に立たされている。

現国王である兄が、亡き父に代わり王に即位したのが十年前。

兄は即位すると同時に、数々の粛清しゅくせいを行った。

前国王の側近で悪政を強いていた官僚たちを次々に排除し、新たに才能の有るものを登用した。

この部分だけを伝えると兄が名君に思えるだろ、問題はその後だ。

兄は、父である前国王の側室とその子供たちを皆殺しにした。

親族間による王位をめぐる争いを無くすためという大義名分の元、なんの罪もない人たちが次々に虐殺された。

兄に殺されたのは、父の側室七人、腹違いの王子八人、腹違いの姫六人、合計二十一人。

ボクが助かった理由は三つ。

一つ目は、ボクが兄と同腹どうふくの弟だったこと。

二つ目は、ボクがまだ幼かったこと。

そして三つ目は……兄に子供がいなかったことだ。

ボクは兄に万が一のことがあったときの血のスペアとして生かされた。

ボクが選ばれたのは兄に愛されていたからではない。腹違いの弟より、同腹の弟の方が、血のスペアにするのに都合がよかったから……ただそれだけだ。

兄に子供がいたら、ボクもあのとき義理の母や腹違いの兄弟たちと一緒に殺されていただろう。

同じスペアなら同腹の弟よりも実の子の方がいい……兄はそういう人だ。

兄が即位して十年、兄には正室の他に側室が十二人もいる。

だが未だに子を成した者は一人もいない。

あるとき誰かが「王に子ができないのは、十年前に粛清しゅくせいされた側室と王子様方の祟りだ」と言いだした。

そのうわさは瞬く間に広がり、城や王都にとどまらず国境をこえ周辺の国々にまで流れた。

兄は祟りを恐れたりしない。

しかし側室は祟りを怖れていると聞く。

兄に子ができるまで、ボクが殺されることはないだろう。

イオニアス王国では、王が子宝に恵まれないのは不吉の兆しと言われている。

即位した当時、兄はまだ二十三歳だった。

「陛下はまだお若い、時間がたてばお子を授かるだろう」

兄の側近はそう言って官僚や民衆を納得させた。

しかし数年経過しても兄に子ができないと今度は「王に子ができないのは正室との相性が悪いせいです。側室を迎えれば子を授かる確率が上がります」と言って民を説得した。

即位して十年兄は三十三歳になり、正妃の他に側室が十二人もいるが、子宝を授かったものはいない。懐妊する兆しもない。

騙し騙しここまで来たが、民衆を説得 するのもそろそろ限界だろう。


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